見出し画像

『オーデュボンの祈り』伊坂幸太郎著

ぽかぽかすぎて眠くなる、幸せ…!!

天気の良さは私の幸福感と直結していると最近知った。

毎日こんなにいい天気なのに、テレワークで家に閉じ込められ、すぐに暗くなって1日が終わる。無駄に時間を過ごしているような気がして悲しくなる今日この頃です…。(仕事)

そんな中で読みました、伊坂幸太郎デビュー作、「オーデュボンの祈り」🕺


①あらすじ

主人公、伊藤のコンビニ強盗から物語は始まる。伊藤は気付くと、見知らぬ島にたどり着いていた。その島は荻島といって、江戸時代以来外界から鎖国をしているという。島には、嘘しか言わない画家や、島の法律として殺人を許された男、未来の見える、人語を操る案山子などがいた。

しかし伊藤が来た翌日、案山子はバラバラにされ、頭を持ち去られて死んでいた。伊藤は「未来がわかる案山子はなぜ自分の死を阻止できなかったか」という疑問を持つ。 住民から聞いた「この島には、大切なものが最初から欠けている」という謎の言い伝え。 案山子の死と言い伝えの真相を追う伊藤の数日間を描く。
(Wikipediaより引用)

伊坂幸太郎さんの本は何冊か読んだことがあるが、デビュー作ということで、気になって手に取ってみた。
舞台は、荻島という日本領海内にありながら鎖国状態にあり、日本国からも忘れ去られた、なんとも不穏な雰囲気漂う島。

私はこういう不思議な世界観の小説が好きで、王道ミステリーとは違うけど、続きが気になって止まらなくなる。
キャラクターがまたまた魅力的で、主人公の伊藤と島の案内人日比野のやりとりが所々シュールで、おお…この絶妙な会話、テンポ…これぞ井坂さん!とピンとくる。
デビュー作から変わらない世界観。素敵。

②感想

荻島の人々は日本語を話し、生活水準も高く、一見して日本でないようには見えない。
主人公伊藤も目覚めて島を案内されるが、信じるまでは時間がかかっていた。

でもこの島の住人は何か変。根本的に何かが違う。
この違和感が終始つきまとっている感覚があった。

なのに伊藤とともに住人と関わっていくうちに、未来を予知するカカシがいることや、人殺しを許された男がいることをすんなり受け入れている自分がいて、あれ、まてまて、おかしいぞって現実に戻る。

そして、カカシの優午が殺されて、その真相が明らかになる。
ネタバレになっちゃうからラストの展開はここでは書かないけど、長く生きるということや、未来がわかるということはそれもそれで辛いのかと思った。

優午は、未来の見え方について、いろんな道があるから先すぎることについてはぼんやりしているけど、近づくにつれて糸を手繰り寄せるように鮮明になってくると言っていた。
予知能力なんて欲しい才能なのに、それ故に頼られすぎることが負担になるなんて。
たしかにうちのおばあちゃんも、悔いがあって死んだ人は可哀想だけど、残されたほうはもっと可哀想だよね、と言っていた。長生きをするということは、それだけ何人もの人生を見送ってきたということだ。

優午は絶対に未来を教えなかった。わかりすぎる未来なんてつまらないから。
だけど、伝えなかったことで生まれる後悔や、伝えるだけで会いには行けない自分に対するやりきれない気持ちがあった。そんな悩みを誰に話したところで理解されないし、これは避けられない死だったかも、と考えてしまう。

島のルールとして、人殺しを許された桜という男の言葉も印象的だった。
「この世に本当に生きる価値のある人間なんていない」
何千という生物を犠牲にして、ひとりの人間が生きている世界の縮図。
桜は独自の判断で罪ある人を殺す。時には、殺すほどの罪とは思えないほど軽いものもあったが、考えてみると、人間の命も、植物の命も、等価だと考えていれば腑に落ちるものばかりだった。そもそも生きているのではなく、生かされていると思った。

伊藤が来た現代日本との対比をしながら物語は進むので、この島の異様さは所々気付かされるのだが、最終的に伊藤が来たことによってもたらされた「この島にとって欠けているもの」は、かなり意外。
物語の中で、ちょこちょこ伏線はあるが、え、今までのストーリーの核とは全然関係なくない?笑 みたいな。ここまでの事件にも何も関係なさすぎて笑った。個人的には壮大なオチだった。

③まとめ

伊坂幸太郎さんらしいシュールさ満載の作品でした。
文庫本の解説を読んで、本人が「寓話っぽいけど寓意はない」と言っていたと知った。
色々書いたけど、そもそも何かを学び取ろうと思って読まなくても、なんか面白かったなって思えればいいみたい。
何にも考えなくても、考えながら読んでも、どっちでも楽しい作品でした😳

ちなみに、オーデュボンの鳥類図鑑はキーワードになってます🦜

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?