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畑の規格外野菜の活かし方 前編<東京の有機農園(0.3ha)の場合>

clubhouseは農業者と相性が良いので、盛り上がってますね。私も自分が関心あるテーマのルームに入って聞き入っています。
2月27日、Atsueさん(瑞穂町の新規就農仲間!農業に対してアクティブで、自分が尊敬する人の一人)が開いたルームのテーマが「畑での食品ロス・規格外野菜」で、自分にとってためになる良い時間でした。

食品ロス問題は多種多様→問題の質も解決方法もそれぞれ異なる

「食品ロス問題」と一言いってもその中身は多様で複雑です。食品店、飲食店、家庭そして畑。それぞれ抱える問題の内容は大きく異なります。大規模or小規模でも大きく異なります。それぞれの場所で異なる問題があるので、解決方法も異なります。
食品ロス問題に向き合うにあたって、規模・立場・地域・条件などでカテゴライズして考えなきゃなぁと、しみじみ。

畑からは形が悪いなど野菜=B品野菜もでてきてしまい、それらの処分に困っています。【大事】→農業者として、このB品率を減らす技術の向上が第一の解決策だと思います。しかし、ベテラン農家さんでもでてきてしまう規格外野菜。価格下落で廃棄せざる得ない時もありますし。

よくある解決方法は加工品ですね。例)規格外にんじんのジュースなど
値引きして売る、という方法もあります。
しかし、形が悪いと加工も調理もしにくく、値段を下げても買ってもらえないこともあります。
「形が悪くても安いものが欲しい」「安いよりもよい質のものが欲しい」生活者のニーズも様々です。
でも、どちらが正解というわけでもなく、農業者にとってはどちらも重要なニーズでもあります。

私も畑の食品ロス問題の解決方法をずっと考えていたのですが、昨年少し道筋が見えてきた気がしています。小さな農園だからこそできる活かし方って、意外と沢山ありました。まだまだあると思います。
そして、実はドイツで農業研修していた時があります、10年以上前ですが。研修先の農場の循環っぷりにびっくりしたので、せっかくなので14haの有機農場の規格外野菜の活かし方も合わせてちょっとつづってみようと思います。

0.3ha 東京の片隅の小さな有機農園「きりり農園」の取り組み

私が経営しているきりり農園は東京の片隅にあり、とっても小さな農園です。
小さな農園なりにロスをなくして少しでも売上につなげたいです。
そんな中、取り組んでいることが主に4つあります。
あくまでも「小さな農園」だからこそ取り組んでみたことなので、これが全ての正解ではないことを忘れずに読んでくださると嬉しいです。
東京だから十分な農地も無い、
お金も無い、機械も無い、設備の無い……そんな条件下のささやかな取り組みです。

①CSA実践×B品特典

きりり農園では「ぷちCSA」を実践しています。※CSAのエッセンスを取り入れていることを「ぷち」と勝手に称しています。
サポーター会員さんに前払い制で定期便を発送しています。
その中で「B品いれてもOKなら増量します!」という特典をつくったところ半分くらいの方が希望してくださいました。
大事なことは、B品だけのBOXの販売ということではなくて「B品がでてきたら増量していれます」というスタンスです。
選別して出てきた「食べられるけど、微妙」なB品達を残らず振り分けられるので、収穫したものをほぼすべて発送することができます。
ロスゼロ!万歳!

②オリジナル堆肥化(農園内の循環)

冒頭で「食品ロス問題の解決方法を考えている」と書いたのですが、実は深刻な悩みではありません。
なぜなら、堆肥化して畑に還る=畑の糧となるからです。
きりり農園は有機JAS認証を受けることができたのですが、認証の規定では肥料などは農場内の作物を堆肥化させるなど圃場内で物質循環させることが基本となっています。それが難しい場合は購入可能、ただし肥料の生産工程を確認し認証機関からも確認を得ることになっています。
循環=持続可能なシステム
きりり農園では、規格外野菜はもちろん、圃場内の落葉、売れ残ってしまったハーブ達もいい感じに堆肥に混ぜています。堆肥作りは奥深くて楽しいです。
※なお、病気の野菜達は堆肥化せずに墓場ゾーンに埋めています。

②-2 とはいえ堆肥化ばかりもしていられない

栽培のことだけ考えたら全部堆肥化でも嬉しいのですが、経営面を考えると肥料の自給化は経費削減にはなるものの……売上いまいちで堆肥ばかり積みあがるのは嬉しくないので、少しでも売上につなげるために堆肥化以外の解決法も必要です。

③【予約】畑で捕獲した宇宙人たちBOX

大根収穫時、変な形のものがでてきたら「宇宙人👽捕獲!!」と子供と遊んでいた時に思いつきました。

「この宇宙人を箱にたくさん詰め合わせて販売したら面白いかな…」
宇宙人身売買で売上アップを目論見ました。

そこで、食べチョク事務局さんに問い合わせ。
規格外野菜×ふざけたネーミング 炎上する可能性もあります。
食べチョクさんの品位にも関わる問題なので事前確認です。
私「こんな感じで規格外野菜の詰め合わせセットを販売してもよろしいでしょうか」

畑に時々宇宙人が現れます。
同じ姿の宇宙人は一人もいません。
変な形をしています。
よくみるとかわいいです。

いつも食べているのですが、それなりに美味しいです。虫たちも味見していることがあります。
そんな宇宙人達が気になるあなたに、畑直送の宇宙人詰め合わせBOXをお送りすることにしました。

注意;
畑で捕獲したら、80サイズの箱に詰めて発送いたします。彼らは神出鬼没なので、発送日のご指定は難しいことをどうかご了承ください。また、虫に味見されている場合があることもどうかご了承ください。
よろしくお願いいたします。

<変な形になる理由>
土が硬かったり、成長した先に石などの障害物があるなど
様々な理由で不格好になります。いわゆる「規格外」です。
中略
<きりり農園の取り組み>
きりり農園では、規格外野菜はおまけでつけたり自家消費しています。
食べきれない分は畑で堆肥化して畑で循環する取り組みを行っております。
しかし、変な形の野菜たちはかわいいですし、こどもたちは喜んでくれるので、食べチョクでもお届けすることにしました。

畑のフードロス削減にご協力いただけたら幸いです。ご注文お待ちしております。

値段を含めてなかなかふざけています……
しかし、食べチョクさんからの回答は
「ユーモアある商品のご出品、ありがとうございます」
なんて器の広い✨
そんなわけで無事に出品させていただきましたm(_ _)m
出品にあたってのポイントは、【予約】。その為にわざわざB品を収穫するのは非効率すぎて💦「宇宙人は神出鬼没なので、発送日のご指定は難しいです……」
なんとも不安定な商品なので、公開ボタンを押す不安もありましたが、それを理解した上で購入してくださいました!
購入後のレビューもとてつもなく嬉しかったです。

実は、十分量のB品=宇宙人が捕獲できず、宇宙人のように珍しい野菜(A品)をいれましたが、それも喜んでいただけて良かったです。

ネーミングひとつで価値がでると実感した良い経験でした。


面白半分の一時的な企画ものだだと笑われるかもしれません。
わずかではあるものの、小さな農園にとっては大事な収入です。
小さな積み重ねです。
こんな商品ページで一人でも畑の食品ロスのことを気にかけてくれたら……小さな一歩になれば嬉しいなぁと思っています。
ちょっぴりでもプラスになれたら、そんな想いでやっています。
小さな解決法なので「求めている解決法は、そういうんじゃないだよ」「小さいからそんなふざけたことができるんだ」と大規模の方からは鼻で笑われちゃいそうですが💦
でも、1月に話題になった「EじゃなくてAじゃないか」の記事を読んで
大企業でもユーモアをもって食品ロスを回避したことに感銘しました。
勇気をもらえました。励まされました。
鼻で笑われるときがあっても、まぁいっか、と強くなれた気がします。

宇宙人を捕獲しやすくなったら(根菜シーズンになったら)、毎年出品したいです。

④規格外野菜専門の産直ECサイト

2020年、ポケマルさん、食べチョクさんをはじめ産直ECが一気に盛り上がりました。
その中で「unica(ウニカ)」の担当者さんからDMが届きました。
「規格外野菜をユニーク野菜として販売してみませんか」

ユニーク野菜という表現が素敵だなと思い、登録&出品

規格外専門マーケットなら、それを求めているお客様しかいらっしゃらないのでこちらも安心して出せます。
虫食い紫芋を「虫が味見済み」として販売

おかげさまで完売しました。良かった!
顔を知らないお客様にB品を送る不安もありましたが、結果喜んでもらえて嬉しいです!
ウニカさんの存在に感謝です。

根本的な解決は楽にできないけれど……

これを読んで下さった農家さんや現場の方から「こういうチマチマした方法じゃ、根本的な解決にはならない」とお言葉をいただきそうです。私自身もこれは小さな農園だからできていることと思います……期待されてた方、うすっぺらい事例で申し訳ないです🙇
労力かけずにぱぱっと解決したいですよね💦
冒頭に書いた通り、立場や規模によって問題の質も解決法も異なります。
〇〇で解決したと思っても、別の部分で歪みが生まれて新たな問題になったりすることも。
考えれば考えるほど、複雑なので、シンプルな解決とはいかないです。
これが食品ロス問題のやっかいなところ。

私は、完全に解決することは不可能だと思っています。
せめて、食品ロスを少しでも減らす×一人でも多く人が取り組む=少しずつ解決して明るくしていきたいです☀️

キーは、すべての事例にあてはまるような解決法を求めないことなのかな、と。
自分にあった解決法をカスタムメイド。特に私は事業者なので、自分自身で作るしかないと思います。

根本的な解決って、楽じゃないですよね。
根本的じゃなくても、少しずつでも、できそうなことを、やるだけでも、よいのかな、と動いています。
頭が痛い問題だからこそ、ユニークに立ち向かう。それも一歩かも、しれないと信じて🙇

次回、14haのドイツの有機農場の事例

小さな農園でやっていることは、実は14haの有機農場からヒントを得ていたりします。特に②でご紹介した堆肥化については、ドイツでの農業研修で学んだことがとても生きています。
次回、ドイツでみたことを書きます。このnoteを開いてくださったかたのほとんどがドイツの事例が知りたいと思うのですが…すみません、結構ボリュームがでてしまったので、前後編に分けます。見出し画像は後でつくりかえよう。
もしよろしければ、次もご一読いただけると嬉しいです。
最後まで読んでくださってありがとうございました!

Bis bald!

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