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「バーテンダーの会話には秘密のしかけがある」

まったくの他人と会話を始めて、その人をあらかた理解し仲良しになるまで、一体どれだけの時間と労力がかかるだろうか?

もちろん答えは、ケースバイケースだ。
朝や昼や夜や深夜のしらふ状態でのさまざまなシチュエーションもあれば、朝や昼や夜や深夜のお酒が入っているさまざまなシチュエーションの場合もある。男性同士、女性同士、男女のケース、そこに年齢的な問題が発生する。
さらに職業が加わり、経済状況が混ざり合ったら、もう頭がおかしくなる。
これらに、どれだけのパターンがあるのか?
と想像するに、まるでカクテルの種類と同じ解答になってしまう。

星のかずほど。

だが、仲間を増やすための手段は、今やネット上にあふれている。例えば、マッチングサイトに登録をする際、何問かの設問に答えなければ登録が完了しない。

性別、年齢、職業、年収、趣味、好きなタイプや、サイトの登録理由などがそうだ。

これらの設問は、じつに巧妙で許しがたいものである。
なぜなら、リアルな人間同士では、あるいはバーテンダーが面と向かって聞けないからだ。
この質問をバーテンダーが、みなさんの初めて出会った人が聞いてきたら?と、想像してみてほしい。

笑えてこないだろうか?

「お客様、失礼ですがあなたは何歳ですか?」
「あの?差し支えなければご職業は?」
「あなた、いくらもらってるんですか?もちろん給料です!年収はなんぼよ?」

性別を訊ねるなんてことはタブー中のタブーである。まさに不愉快極まりない話だ。
インターネット上では、当たり前の初歩的質問が、人と向かい合うと失礼千万に値するのである。
さて、バーにはさまざまなお客がいらっしゃるが、大体の平均滞在時間は1.5時間〜2.5時間が一般的だ。その90分から150分の間に、また来てみたいと思っていただくわけだから大変だ。
ウカウカしているとあっという間に見放されてしまう。
しかも、性別、年齢、職業、年収、は聞けないのだ、と思うだろう。だが、聞く必要はない。
大体、想像できてしまうからだ。
性別と年齢は見たらわかるし、職業は服装でなんとなく目星がつくし、年収は付けているものや、靴や鞄や注文する酒でだいたいわかる。
つまり、ネットにある質問はしなくても情報を教えてくれている。実際には、仲良くなってしまえば、その疑問はいつでも聞けるのだ。
つまり、大切なことは他にある。
つまり、趣味や来店動機だ。
来店動機は、お客さんの素性や行動履歴に近い。常連の紹介、たまたま通りかかって、雑誌やネットを見て、など理由があるはずだ。
さらに趣味。これが1番の情報源になる。

好きな〇〇には、情報がぎっしり詰まっている。わたしの質問は、好きな飯、作家、映画、スポーツ、国、タイプ、この辺りを聞くと輪郭が見えてくるが、問題はここからだ。

今度は逆に嫌いな〇〇も聞いてみる。
嫌いな飯、作家、映画、スポーツ、国、タイプ。これが重要だ。まさにバーテンダーはこれを聞きたいのだ。
そして、「あなたにとって、これだけは許せないて思うことはなんですか?」
と聞いてみよう。

なぜか。

嫌いなモノさえ理解してしまえばい、好かれることはなくとも、嫌われる可能性がグッと下がるからだ。
そして、相手がされたら許せないことを知っていれば、そうしなければいいのだ。

だが、最初から嫌いな〇〇は聞いてはいけない。無理があり、不自然になるからだ。

だから好きなモノからアプローチする。

人間は、生理的に受け付けないことやトラウマやコンプレックスがある。
俗にいう「地雷」というやつだ。

これを踏んでは仕事にならない。

地雷を踏まないように、その人を好きなモノで埋め尽くす。可能な限り。

これを短い滞在時間の中で表現できたら、その新規客の再来店の可能性が上がるのだ。

みなさんも、相手を理解するために、まず好きな〇〇を聞き、その後にさりげなく嫌いな〇〇を聞いてみてはいかがだろうか?





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