会う、ということ。
私はめったに泣かない。でも、その日は涙が止まらなかった。
知り合いが急逝したことを知った。
その人は、とある酒場の店主で、おもしろいことが大好きな人だった。自分の店でユニークなイベントを開いては、人と人をつなぐのが好きだった。
私は年に数回しかお邪魔したことがなく、店主のことはそれほど深く知ってはいなかった。
けれども、涙が止まらなかった。
人って、こんなにもあっけなく、死んじゃうものなんだなぁ、と思った。
そう思ってからは、いても立ってもいられなかった。
会いたい、と思った人には、片っ端から会いに行った。
ちょうど年末だったので、会いに行った人たちは、年末のあいさつに来た、という程度に思ったらしい。
でも、そうじゃないんだ。
あの店主が亡くなったことを知らなかったら、私はアナタに会いに来てはいないんだ。
そうとは言わなかったけれど、なぜ、アナタに会いに来たのかを説明した。
急に、亡くなっちゃったんですよ、知り合いが。
そう言うと、誰もが、その人を知らないはずなのに、しんみりした。言葉を失って、沈黙が流れた。
私はまた、泣きたくなった。
でも、泣かなかった。泣かずに、こう言った。
「だから、会いたい人には、会えるときに会っておかなくちゃ、と思って」
コロナ禍のときも、会いたい人には会っておけ、と思ったけれど、あのときは、そう簡単に会うことができなかった。
コロナ禍じゃなくなった今、人と会うことが当たり前になった今だからこそ、やっぱり思う。
会いたい人には、会えるときに会っておきなよ。
会えなくなるときは、突然やってくるから。
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