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手繰り寄せられていたと思ったできごと

2023年2月。
私は繋がる縁に手繰り寄せられ、博多から釜山へ赴いた。
その時釜山で起こった旅の記録を記したところで、
旅に出る少し前にあったできごとを思い返す。記録に残しておきたい。
きっとこの出来事も、何かを思い出すように、呼びかけられていたのだと思う。
起こっていることは、決して偶然ではない。
全てが何かのメッセージだ。

1月の土曜の夜。
冬の冷たい澄んだ空気のむこうに、星が鮮明に見える夜だった。

当時高校3年生の息子が泣きはらした目で帰宅した。
映画を観て、泣いたというのだ。
博多中洲のショッピングモールを彼女と散策中、たまたまモール内のシアターの前を通りかかり、予定していなかったけれど、映画を観ようということになったらしい。
そうやって偶然観た映画が彼の心に響き、涙が止まらないという。

彼は動かされた心のうちを私と夫に語り、私たちにもぜひ見て欲しいと言った。
私たちは、翌日の朝一番の上映の座席を、オンラインで予約した。

その映画は、「ラーゲリより愛をこめて」。

第2次世界大戦後、大陸から引き揚げる日本人たちの姿を描いたノンフィクションストーリーだった。

ストーリーの中には様々な要素がある。

そして、鑑賞する側、受け手の状況や感覚によって、無限の捉え方がある。


映画を観終わった私の中には、映画の主人公の山本さんの奥さんと、彼女が日本に連れ帰った4人の子どもたちの姿が焼き付いていた。
劇中には描かれなかったが、きっと彼女がたどった日本までの道程も、過酷なものだったに違いない。

そして最後に描かれた、2022年。
結婚式のシーンで、人々はマスクをしている。
ゲストの前でスピーチをする70代くらいの男性と、そのスピーチに耳を傾ける新郎新婦。

スピーチをするのは山本さんの奥さんが大陸から連れ帰った息子さんのひとり、そして新郎新婦のどちらかはそのお孫さんだ、そう思った。

私の義祖父にも戦時中には召集令状が届き、戦地へ赴いたと聞いている。
義祖母は、義祖父がそこに留まる中、生まれたての義父を抱いて日本へ帰国し、その命を守った。

映画を観て泣きはらした顔で帰ってきた息子は、その義父の孫だ。

最後のシーンに、義父と息子の姿が重なる。

映画を観終えて帰宅後、
「あなたが今ここに生きているのは、ひいおばあちゃんが必至でおじいちゃんを抱いてここに戻ってきたから。」

息子の前で、この言葉が私の口を衝いて出た。





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