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【論文読了】企業はどうすれば成長を続けられるのか

DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューの2024年6月号の特集は「企業はどうすれば成長を続けられるのか」でした。

企業は1回だけいい業績を上げればいいというわけには行きません。従業員や顧客、協力会社のためにも業績を上げ続ける必要があります。

残念ながら株主受けだけは違います。株主の多くは目先の損得が大事なので、長期的に業績を上げるよりも、今利益を上げるか今配当を増やした方がいいんですよね。

それはさておき、業績を上げ続けている企業は何をしているのかを知ることも有効でしょう。早速振り返ってみましょう。


自社の身の丈に合った成長を実現する法

無理な拡大は自社の成功要因を破壊する

企業は需要が増加すると、雇用や設備などリソースを増やします。

しかし急にリソースを増やした際に、業務システムや業務プロセス、企業文化への影響、必要な人材の確保、需要が鈍化した場合の対応などを考慮していないそうです。

そうして自社に成功をもたらしたイノベーション能力、敏捷性、優れた顧客サービス、固有の企業文化など自社に成功をもたらした要因を破壊してしまうそうです。

無理な拡大はこういう形で響いてくるのですね。

本稿には地元の新鮮食材を売りにした飲食店がフランチャイズで急拡大して失敗した例が掲載されています。

儲かれば急拡大したくなりますが、この手の質重視の企業はフランチャイズで急拡大すると強みが損なわれますね。

無理なく成長するためのコツ

つまり急速な拡大は考え物なのですが、もうちょっと詳細に考えてみましょう。すると自社が強みに悪影響を与えずに拡大できるスピードが見えてきます。

まず仕事を回す人の質が追い付かないといけないので、人の育成が必要です。

また市場横断的に活用できる汎用的な技術は多角化に役立つそうです。特化した技術よりも汎用的な技術の方が色々な事業に使えるため、多角化に使え、多角化ができると企業の成長スピードを上げられます。

速く成長したければ外部のパートナー企業・個人事業主などを使えばいいという意見もあるでしょう。

しかし内部リソースを構築しながら成長することで、独自の強みにつながったり、自社のバリュープロポジションと統合しやすかったりします。急がば回れのこともあるのです。

しかし外注か内製かの片方ではなく、バランスを取れたらいいですよね。ただし外注を止めるということは、外注先にとっては仕事を失うことになるので、調整が大変になりますね。

堅実に自社を強化していく

まとめると自社が歩めるペースで自社の強みを構築/強化していくことが堅実です。そしてそのペースを上げるには人の育成や汎用的な技術の開発、多角化などに力を入れることですね。

そして本稿では最後に、何にもまして人的資本を重視すると書かれています。やはり仕事を回すのは人なので、人を育てることで仕事内容も仕事の規模も拡大できるわけです。

持続的成長を遂げる企業には優れた「仕組み」がある

本稿は持続的な成長を遂げる企業が構築している仕組みを成長システムとし、その5つの要素を紹介しています。

企業が長期的に成長するためにはトレッドミルから降りることが不可欠であり、大幅な発想の転換が求められると説いています。

ちなみにトレッドミルとはフィットネスクラブにあるこういうものです。

要するにこういうことだと思います。

  • ミッションのように自社はどんな顧客にどんな価値を提供するのかを定義する。

  • ミッションを実現する業務プロセスを構築する。

  • 縦割りではなく機能横断的なチームを作る。

  • トレンドを早期に捉える。

  • 成長システムに投資することが最重要。

今流行っていることに手を出すとか、今売れているものに割くリソースを増やす方が短期的には稼げるでしょう。

しかし長期目線で考えると、ミッションみたいな根本的な土台部分を整え、業務プロセスを整え、組織文化を作ることが必要となるのでしょう。

CEOが支援しているとか、3~5年の時間軸で取り組むことが本稿では挙げられています。

こうして企業を強くすることで、長期的に稼げる企業になるというのは納得感がありますね。

成長を止めないために投資すべき3つの組織能力

予測、適応、レジリエンスの3つの組織能力を組み合わせた戦略が不確実性の高い現代において肝要となるという論文です。

3つの組織能力

予測は勿論世の中の流れを予測することです。2010年頃ならスマホの普及ですね。それによりスマホアプリやスマホを使った決済や予約などのサービスが増えることです。

適応は戦略転換の分岐点となるシグナルと書かれています。戦略転換ということは世の中の変化が肝となるでしょうから、世の中の流れが変化しているというシグナルに気付くことなのでしょう。

これについては企業よりも投資家の方が熱心に取り組んでいるそうです。投資家は株価が上がるテーマ探しに余念がないでしょうからね。

レジリエンスは再起力、つまり失敗しても立ち上がって再チャレンジする力です。

これについては不測の事態に対する耐性を上げればいいようです。リスクを検討し、対策を考えるのは勿論ですが、戦略やビジネスモデルの耐性をテストすることも有効なようです。

為替や原油、原材料の価格に影響を受けるビジネスなら、先物やオプションを使う、調達に関して不足の事態に備えて複数ルートを確保しておくなどです。

これらが実際に起きてからでは遅いでしょうから、事前にシミュレーションしておく必要がありますね。

ヘッジファンドに倣う

これらをやるために、ヘッジファンドに倣うという方法が解説されています。ロングポジション(長期かつ多額の投資)とショートポジション(少額の投資)のやり方をヘッジファンドに学べという話ですね。

投資家から投資のポートフォリオの作り方を学べば、どんな事業にどれだけの資金を投下するか判断する参考になりそうですね。

それから最近の論文でよく見かけますが、継続的にモニタリングしろということも書かれています。1回やったら終わりじゃないということは気を付けたいですね。

YKKは経営哲学の力で持続的成長を実現する

YKKは顧客の利益や善の循環を大事にしているそうです。私は綺麗事が大好きなので、こういう考えが好きですね。

One to One戦略を取る

気になった箇所を洗い出してみます。

  • 市場の要望に応えていけば、顧客は増えていく。

  • One to One戦略には材料から機械まで内製化する一貫生産が有効。

  • 国や地域によって主な顧客の業種が違う。

モノづくりに関しては、個々の顧客の要望に応えつつもしっかりとQCDを追求していくという姿勢です。

ファスナーの場合は顧客1社でも大量に必要とするため、One to Oneが可能ですね。

小売りのように1人の顧客に数点しか商品を売らない場合は、個々の顧客に合わせた仕様にするとオーダーメイドのように高価にならざるを得ません。

社会問題を意識する

また衣料品の大量廃棄が石油産業に次ぐ世界第2位の汚染産業という話が出てきます。

ここでいい商品を適切な量だけ作って廃棄を減らそうという会社と適時・適材・適量という取引ができれば、顧客企業への貢献にもエコにもつながるわけですね。

さすがにエコ意識がある会社としか取引しませんというわけにはいかないでしょうけど。

善の循環

ところで善の循環ですが、これは顧客、取引先、自社の3社に利益を3等分して配分するという成果三分配によって実践するそうです。

三方良しと似ていますが、あちらは買い手、売り手、世間です。エコ意識は世間につながりますね。成果三分配は買い手、売り手、取引先(おそらく仕入先など協力会社)です。

理想と現実は違いますが、それでも自社は、あるいは個人なら自分はここにこだわるというものは持ちたいものですね。

終わりに

目先の利益や過剰な流行の追いかけは注意が必要ですね。もちろん流行を見て手を打つことは必要ですが、一時の流行にリソースをつぎ込み過ぎては問題です。

自社のビジョン、ミッション、バリューみたいな土台部分と、人材育成や技術開発をして、着実に進むことが長期的な成長には有効なんだなと感じました。

また投資家に倣って短期少額投資と長期多額投資を分けるという発想もいいですね。これは投資をやることで身に付きそうですが、トレードでは身に付かないでしょう。トレードは需給やトレンドを見るものですので。

一発屋で終わらず長く続けられるよう、着実に成長する方法を身に付けていきましょう。

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