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ウォール街の面接。「49%の賭けに投資する最適な方法は?」

こんばんは。

僕は最初のキャリアを外資系投資銀行のトレーディングフロアでスタートさせたんだけど、面接試験の質問がいまだにトレーディングをする上でベースになっている考えだなぁ、と感じることがあるので紹介したい。

当時の外銀の面接は若手の社員と面接していって、しばらくするとMD(マネージングディレクター)レベルの人と面接することになる。

4回目くらいの面接だったかな。トレーディングのMDとの面接でクイズを出された。

「今、ここに1000万円あって、これからラスベガスに行くことになっている。ラスベガスのギャンブルにはルーレットしか無いんだけど、さらに赤か黒かの2択のベッドしか出来ない。ルーレットには緑も一つあって、赤と黒かを当てられる確率は厳密には50%ではなく、49%になっている。君ならどうやってお金をベッドしていく?せっかくベガスに来たんだから賭けないという選択肢は無いよ。」

この質問に対して「テーブルの様子を見て、赤が連続してXX回出てたら黒に賭けてみる」といった類の回答をした人は即落とされたんだと思う。

トレーダー的には確率が50%以下の取引は「やらない」というのが正解だけども、もしやらなければいけないのであれば、「1000万円を全額、1回でベッドする」というのが正しい回答になる。

勝率が50%以下の賭けは、やればやるだけ大数の法則が効いてきて、「敗北」に収束して行く。

また、「テーブルの様子を見て、赤が連続してXX回出てたら黒に賭けてみる」という発想は完全な誤りで、過去に赤が何回出ようと、次に出るものが赤か黒かの確率には一切関係ない。

この質問をしたMDは、直感でもいいから数学的に正しい解答を選択できるかを見定めたかったのだと思う。

幸い、正しい解答をした僕にMDは続けて質問した。

「さっきはルーレットに賭けるプレーヤー側の立場だったけど、逆にルーレットを提供するカジノ側に立ったら何が変わると思う?」

「カジノ側からすると51%で勝てるゲームは、何回にも分けて、小分けにしてベッドさせる」
なぜか。大数の法則が効いて回数を重ねれば必ず勝てるから。

「Good」とMDは言って自分たちのビジネスモデルについて話し始めた。

そう。これは、まさに僕が受けようとしてた投資銀行のトレーディングビジネスそのものだった。

僕が最初に入ったところはヘッジファンドのフローが結構多かった。彼らはマーケットを賭博場にしたプレーヤーで、彼らに賭ける「テーブル」を提供するのは僕らのようなディーラーの役割だった。

「テーブル」には為替のオプションだったり、株だったり、債券だったりありとあらゆる金融商品を並べている。

金融商品はよくできていて、勝つか負けるかは50%になるように設計されている。だけど、そこには必ず、買値と売値の差があって、厳密にはカジノと同じようにディーラーの取り分がある。つまり単純な勝率はヘッジファンドからすると50%未満になっている。

だからトレーディングデスクにとっての”上玉の顧客”というのは、たまにふらっとやってきて、ドンッ!と大金を賭けるタイプのやつよりも、1回の金額は大したことなくても、何回も繰り返しやってくれるヘッジファンドということになる。
(ただし、とても上手いヘッジファンドは別。この話はまた別の機会に。)

もう一つ。「テーブルの様子を見て、赤が連続してXX回出てたら黒に賭けてみる」という発想をしてしまうのなら、トレーダーにとっては致命的だ。

トレーディングにおいて、「5日間連続で下がっているから、今日は上がるはず」といった発想は完全な誤りだ。5日間下がろうと、50日連続で下がっていようと、今日上がるかどうかは全く関係ない。

5日間連続で下がっている、という事実は「だからショートが溜まっている」とか「だからロングが切らせらた」といったポジショニングを予想した上で、「今日、こういうポジティブなニュースが出たらショートカバーで上昇する」といった仮説を持つ程度にしか有用でない。

ちなみに、結局僕はこの会社に入ることになった。

最初の会社ということもあって、トレーダーにとって必要な知識やメンタル的な部分などを一番吸収できた場所だったと思う。

noteでは少しずつ、そういった知識とかテクニックとかを話していけたらいいなと思ってる。

では。


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