見出し画像

UIUXデザイナーが『人を欺くデザイン』の本を読んでみた(備忘録と感想)

こんにちは👋 UI/UXデザイナーのゴロ丸です。最近、Xで「ダークパターン 人を欺くデザインの手口と対策」という本を見かけて気になり、読んでみました。ユーザーを操るデザイン手法について考えさせられる内容だったので、その感想と学んだことを共有したいと思います。

この記事では、本の要約に加えて、私なりの考えや経験した事例も交えながら、ダークパターン(本書では「ディセプティブパターン」と呼ばれています)について紹介していきます。デザイナーの方はもちろん、日々ウェブサービスなどを利用する方にも騙されないように参考になれば幸いです✨

どんな内容の本なの?

この本は、アプリやWEBサイトに潜む、人を操るデザイン(本書ではディセプティブパターンと呼ばれます)がなぜ存在し続けるのかを実際の事例をもとに説明しています。また、それらを防ぐ現在の各国の法律やディセプティブパターンの種類なども解説されています!

この本は、デジタル世界に潜む「人を操るデザイン」、つまりディセプティブパターン(一般的にはダークパターンとも呼ばれます)について深く掘り下げています。主な内容は以下の通りです:

  1. ディセプティブパターンの実態:アプリやWebサイトで使われている具体的な事例を多数紹介。

  2. 存続の理由:なぜこういったデザインが今でも使われ続けているのか、その背景を探ります。

  3. 種類と分類:様々なディセプティブパターンの種類を詳しく解説。

  4. 法規制の現状:各国でどのような取り組みがなされているのかを紹介。

  5. 今後の付き合い方:ディセプティブパターンとどのように向き合っていくべきかを考察。

著者はたくさんの実例を用いて、この問題の複雑さと重要性を解説していたので、とても分かりやすく思いました。また、ユーザーが心理学的にどうゆう行動をとるかなども記載されていて、面白かったです。

ディセプティブパターンってそもそも何?

ディセプティブパターンとは、人を欺くデザイン、人を操るデザインのことです。これらは主に、ユーザーの行動を意図的に操作し、企業の利益を優先させるために使用されるそうです。

具体的な例を挙げると以下になります。

  1. ECサイトでカートに商品を入れた後、決済画面への遷移の前に「こちらの商品が良いかも?」というページを挟み、意図的により高価な商品を勧める。

  2. スキップボタンに小細工を施し、ユーザーが気づかないうちに不要な商品をカートに追加させる。

これらの例からわかるように、ディセプティブパターンを用いると短期的には企業の利益が上がる可能性が高いそうです。この利益向上の可能性から、自社サービスを持つ企業のデザイナーの中には、「どうすればユーザーを自分たちのサービスにハマらせられるか」「どうすればより多くのお金を使ってもらえるか」といった観点でディセプティブパターンのデザインを考えている人もいるかもしれません。👀

ただし、ここで紹介したのはほんの一例です。実際には、ディセプティブパターンには様々な種類があり、今でも根強く使われているものや、新しく登場してくるものもあります。これらのパターンは常に進化していて、ユーザーも企業も注意が必要です。

なぜディセプティブパターンが広まった?

本書によると、ディセプティブパターンが広まった主な理由は以下の4つです。

  1. 定量的データ重視: コンバージョン率などの数値目標達成が重視されるようになったため、社員はなんとしてでも数値目標を達成しようとするため、簡単に効果の出るディセプティブパターンを採用しがちになるようです。

  2. データ収集の容易化: Googleアナリティクスなどのツールにより、ユーザーの行動を詳細に分析できるようになりました。これにより、ユーザーに対して効果的な「罠」(ディセプティブパターン)を仕掛けやすくなりました。

  3. A/Bテストの普及: 異なるデザインの効果を比較するA/Bテストが一般的になり、より高い成果を出すデザインが採用されるようになりました。結果として、効果の高いディセプティブパターンが選ばれやすくなっています。

  4. 競合他社の模倣: ある企業で効果を上げたディセプティブパターンは、他社にも模倣されやすいです。これにより、効果のあるパターンが業界内で急速に広まっていきます。

これらの要因が重なり合うことで、ディセプティブパターンの使用が正当化され、広く普及してしまったそうです。

ディセプティブパターンの種類

ディセプティブパターンは以下の8種類に分類されます。それぞれ自分なりに体験したことがあるものなどを例に出してみています。

知覚的脆弱性を利用するパターン

人間はWEBサイトを見るときに左上からZの形を書くようにWEBサイトを見たり、コントラスの高いところから情報を見たりします。これを利用したディセプティブパターンの例が以下になります。

例: 日雇いアルバイトの求人

  • アルバイト給与情報に「交通費込み」の表示を他のテキスト情報よりも小さく薄い色で表示する

  • ユーザーは気づかずに申し込み、後で「近場のバイトを選べばよかった」と後悔

このように見かけ上の給与を高く見せるケースや税込かと思ったら税抜って小さく書いてあった!とか結構経験したことある方もいるのではないでしょうか?👀

理解力の脆弱性を利用するパターン

本書によると、ユーザーはWebサイトを一言一句読むのではなく、スキャニング(ざっと重要な部分だけ見ること)するようです。
これは、そういった人間のスキャニングする能力を利用するパターンでして、どんな例があるかを考えていたときに経験したことをふと思い出したので、それを例に説明しようと思います。

例: メルカリでの本の購入時の体験

  • 購入プロセス:「一覧で値段を見る → 商品詳細ページへ遷移 → ページ上部の商品名を見る → 商品の説明を見る → 商品状態や送料について確認する → 購入する」

  • しかし、「商品の説明」内に「さらに表示」というリンクがあり、そこに重要情報(本が裁断済み、キャンセル不可)が隠されていた

  • スキャニング習慣のため、この重要情報を見落としていた

幸いにも相手側が優しかったのでキャンセルすることができました😮‍💨
本を読んでる時は企業がユーザーを騙すケースばかりかと思ったのですが、今の時代だとユーザーもユーザーを騙せるのでより恐ろしいですね😨

意思決定の脆弱性を利用するパターン

人間は物事を判断するとき多くの場合は直感に頼ったり、今までの習慣から物事を選択するケースが多いかと思います。

例: 昔?の楽天

  • Amazonや色んなECで購入ボタンを押すときと同様に楽天でも同様に購入ボタンを押す

  • そういった習慣を利用して、購入ボタン付近に「ショップからのメルマガを受け取る」というデフォルト状態でチェックマークの入ったチェックボックスが用意されている

  • ユーザーはいつも通りに購入ボタンを押すと、そのチェックボックスに気づかずに購入ボタンを押すこととなり、同時に不必要なメルマガが頻繁に届くように設定されてしまう。

今見たらもう、この仕様ではなかったので法律などが整備されてきたか、苦情が来たりしたのかなと👀

また、このパターンをユーザーが回避するのは難しいそうで、まず、ユーザーが不都合を得ないためには、デフォルト値をが変更できるものか認識する必要がある、そしてそのアクションを起こす必要があるからです。

もう一つ、ユーザーがこのパターンのディセプティブパターンを回避するのが難しい理由として、社会的に証明されている企業や人から与えられたデフォルト値(意見)が正しいものだと信じやすいからだそうです。

どうゆうことかと言うと、例えば同じイタリアンのお店でも食べログで評価が高いところ、Googleの口コミが良いところ、TVで紹介されたところは、自然と美味しいのだろうと思いませんか?
このように、ユーザーは「たくさんの人がいいレストランというならきっとそうだ。」「有名な人が言うなら間違いない」と良いデフォルト値を勝手にセットしてしまうそうです。

思い込みを利用するパターン

これは本来ならこの辺りに戻るボタンあるよね?みたいなユーザーの思い込みを利用したパターンです。そういった思い込みによって、ユーザーは直感的に行動する可能性が高いので、「戻るボタン」があるべき位置に故意的に都合の良いアクションをさせるためのボタンを置くことでユーザーをコントロールすることができます。(ちょっといい例が思いつかないのでパス😇)

消耗させプレッシャーを与えるパターン

これはユーザーに対して、無駄に長く労力を使わせたり精神的なプレッシャーを与えることでユーザー自身が望んでいた行動や正確な判断ができなくなるといったパターンです。

例えば、無駄に長いクレジットカードの退会手続きでは、本来解約したいが時間がかかるので後回しにした結果不利益を被ることがそれに当てはまります。また、航空サイトの「この席は4人が検討中でもう直ぐなくなる!」みたいな文言によって「今、予約しないと!!」とユーザーは精神的にプレッシャーを与えられ、他サイトと料金を見比べずに予約を決めてしまう(正確な判断ができなくなる)のもこのパターンに当てはまります。(これは経験したことがある方も多いのでは?👀)

強制・ブロッキングするパターン

強制は、ユーザーの達成したいことの間に必須のステップを挟むことです。

例: Adobeのサブスクリプション退会

  • Adobeのサブスクリプションを退会するとき、必ず退会理由のアンケートを取らせる。(強制)

ライトな例だと↑になりますが、ハードな例だと銀行や保険を解約するときに企業側へ電話をする工程をわざと挟むとかがあるかなと思います。

一方、ブロッキングは、ユーザーの達成したいことを阻むことで、自社サービスで囲い込むためにデータをエクスポートできないようにするパターンです。

例: アップルミュージック、Spotyfyのプレイリスト

  • それぞれで作成したプレイリストはお互いに持っていくことはできない。両者間を行き来することを難しくすることで、ユーザーを自社のサービスに囲い込むことができる。

感情的脆弱性を利用するパターン

人間は罪悪感や恐怖などそういった不快な感情を持つのを嫌がり、避ける傾向にあるそうです。

例: 脱毛の広告

  • 「こんなすね毛の生えた男性は無理!」という広告がYoutubeに流れてくる

  • ユーザーの恐怖に訴えかけ、ユーザーは行動を起こそうとする

これは「すね毛をなくしてモテ男になろう!」みたいな願望に寄り添う文言よりも効果があることが証明されているようです。
企業の持つ理念と比較して、倫理的にどうなん?🧐と言う話が上がる場合もあるようです。

依存症を利用するパターン

生産性のない動画を永遠と見続けてしまったりしたことはありませんか?👀

例: TiktokやFacebook、Youtube Shortなどの無限スクロールとレコメンド機能

  • ユーザーの興味あるコンテンツが学習される

  • 無限スクロールによってユーザーが他のことに気を取られないようにする

  • 結果、ユーザーが永遠と動画を見続けるように依存させることができる

依存を作り出すのに効果的なのがユーザーの望みを叶えたり叶えなかったりすることだそうです。
ゲームが一番それに当たるかなと思いツムツムを例に出すと、ツムツムをやり続けてると、時々高得点が取れたり、続けていればもしかしたらいいキャラクターが手に入ったりとユーザーが時々いい思いができるようになっています。次の報酬がいつ来るかわからない状態が一番良いと研究結果からも証明されてるそうです。

Tiktokなどもたまに興味がないものが流れてきてたまに興味あるものが流れてくるみたいな仕組みになっているので依存性が高いのでしょう。


ディセプティブパターンの分類法

ディセプティブパターンには、以下のように分類法が存在しているようです。

  • こっそり型

    • 隠れコスト: 購入するまで本当の料金を隠す

      • 例:Uber Eatsのサービス料

    • 買い物かごにこっそり商品を入れる

    • サブスクの隠蔽

      • 例:Figmaのリンクをシェアすると勝手に一人分のサブスクが課金される(本書によると、一向にこの仕組みを直そうとしないのはこれによってよっぽど利益が出ているからだとかそうじゃないとか。。。🙂‍↕️)

      • 注:本書によると、この仕組みが改善されない理由は利益が大きいためかもしれない

  • 緊急型

    • カウントダウンタイマー

    • 期間限定メッセージ

  • 誘導型

    • 羞恥心を煽る

    • UIや文言をわかりにくくする

    • より高価な商品の押し売り

  • 社会的証明

    • サクラ口コミ

    • 他のユーザーの活動状況を知らせる

      • 例:「他の人も検討しています!」というメッセージ

  • 希少性

    • 商品の残りが少ないアピール

      • 例:古着屋からのLINE「大人気でもう直ぐなくなります!」(古着屋さんからのLINEで毎回大人気でもう直ぐなくなります!って通知来てたけどこれだな。。。一回買いそうになった。)

  • 妨害型

    • サブスクを解約しにくくする

  • 強制型

    • サービス利用にあたって強制的にアカウントを作成させられる

ただ、この分類方法も万能なものではないようです。というのも、一個前のセクションで話したようにさまざまなディセプティブパターンが組み合わさったり、人間の想像力によって新たなパターンができたりしているからだそうです。

ディセプティブパターンの取り締まり

一部のディセプティブパターンは海外をはじめ日本でも取り締まられています。(特定商取引法、景品表示法、消費者安全法などなど)

ディセプティブパターンは、取締られている一方で各国によって取り締まり方が異なっているため、全世界に広めるサービスを検討する際はあからさまなディセプティブパターンを利用したユーザー体験やUIデザインは極力避けるのが良さそうです。

EUではディセプティブパターンの取り締まりを強化していく風潮があるようです。(無限スクロールは無くなるのかしら?🧐)

これからのディセプティブパターンとの付き合い方

ここまで一通り読むとこんなデザインやユーザー体験を作るわけがないと思っちゃいました。しかし、本書にもありましたが、個人がそれぞれ成果を出さないとサービスが無くなってしまったり、仕事を失う可能性もあります。となると結局ディセプティブパターンを利用し、利益の出るビジネス視点からの決断をしてしまう可能性が自分にもあるなと思いました。

また、ディセプティブパターンを避けた案を出した時に、CEOや上司の立場の人に対してその案を説得できない場合も十分にあります。
だったら、どうすればディセプティブパターンを避けた案を通せるのか?こうすれば絶対大丈夫というのは本書的にはなさそうでした😭
ただ、企業に寄り添いつつもユーザーの需要に応えるようなデザインを作成することを忘れずにデザインする必要があるというのが答えだそうです。(間違いない、、、が難しい)まとめると対策としては以下になりそうです。

  • 企業とユーザーのニーズのバランス

    • 企業の目標に寄り添いつつも、ユーザーの需要に応えるデザインを目指す。

    • 短期的な利益だけでなく、長期的なユーザーの信頼も考慮する。

  • 倫理的な判断力の育成

    • ディセプティブパターンの影響を常に意識し、倫理的な判断を心がける。

    • チーム内で倫理的なデザインについての対話を促進する。

話は少し変わりますが、今の世の中はディセプティブパターンを利用したサービスに溢れているようです。そのため、AIによって作成されたUIデザインもディセプティブパターンの可能性があるそうです。デザイナーは、AI技術を活用する際も、倫理的な観点からの検証を怠らないようにする必要がありそうですね!今後のAIとの付き合い方としてこの辺も考慮に入れたいです!👀(FigmaのAIツールもこの辺の学習はされてるのかしら?🧐)

まとめ

本書では、多くの事例が載っていました。しかも、新しめの事例です!
それが、自分の経験と重なり、とても興味深かったです。ここでは紹介していませんが、より詳しく法律やディセプティブパターンを用いた実例を知りたい人は読んでみる良いかもしれないです。

デザイナーとして、ユーザーの利益と企業の目標のバランスを取ることの重要性を再認識できたし、今後はAIの進化に伴って、倫理的なデザインを追求し続けることも、私たちデザイナーの責務かなと思いました。実際にすでにFreeeではデザインチームが倫理的観点から施策を見て、よくない場合はPdMに差し戻すというプロセスがあるようです。
今後のディセプティブパターンの取り締まり強化に合わせて、そういったプロセスを取り入れるのも良さそうですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?