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べてるの家のオンラインマガジン「ホップステップだうん!」 Vol.287



・若者当事者研究 江連麻紀

福岡市にある「こころふくよか」という不登校やひきこもりがちになってる若者や、さまざまな苦労を抱える若者の居場所で若者当事者研究会が開催されました。

最寄り駅から徒歩10分程度と伺っていましたが、地図を見ながら近隣をぐるっと一周してようやく辿り着く隠れ家のような場所にこころふくよかはありました。懐かしい雰囲気のある室内に5人の若者と、その若者からOKをもらった10人の大人も一緒に広いリビングでテーブルを囲みました。

福岡で何度か一緒に当事者研究をしたことのある高1の女の子(Hさん)が最近の研究テーマをいくつか持ち寄ってくれて家族のこと、友だちのこと、人生のことを語っていると、いろんな場面で「完ぺきさん」「調整さん」「天使」「悪魔」が現れていることがわかってきました。キャラクターのイラストに悩んだHさんに代わって小学1年生の男の子がホワイトボードに描いてくれました。そして、そのキャラクターたちのよかったいいところと苦労するところを書き出しました。

Hさんが家族について語っていると、大人の参加者にも親とのつきあい方に苦労してきた専門家が大勢いました。専門家の実践によると、どうやら独り立ちの時期というのがあって、そこに至るまでのプロセスが共有されました。親とのつきあい方に苦労がある人が自分以外にもいるということを知ったHさんは安心したようでした。

研究の最後の方で苦労の相談相手は気をつけた方がいいという話しが出ました。中学生の女の子はたくさんの人に相談してきてわかったこととして注意する相談相手を教えてくれました。1過度な共感をする大人、2しっかりした大人、3正論を持ってる大人、特に公立の学校の先生は要注意!と話してくれて、私もうっかりするとしっかりしたくなるので気をつけようと思います。

最後は今回の研究にHさんが「「私」の研究」とタイトルをつけて終わりました。

Hさんの研究、子どもたちの発言に参加した大人から「Hさんも子どもたちもすごい!今回の研究がこれからの自分に活かされそう」「私がHさんの年齢のときはとても言葉にできなかったけどHさんすごい!」など感心しきりで、何度も応援の拍手が送られました。Hさんは研究発表にも前向きで、いつかどこかでHさんの研究発表があるかもしれません。

・文/写真:江連麻紀


●新刊「弱さの情報公開」

2023年10月発売の最新書籍です。
2020年に発売しご好評をいただきました「弱さの研究」の続編。
不寛容な社会での孤立と孤独「つながり」を考える。

一部では、カーリング日本代表の吉田知那美選手とべてるの家の人や
向谷地生良氏との「強さと弱さ」についての対談。

二部では人と人の「つながり」を各章で考察、依存症、認知症の孤独について、本当の「つながる」ことの意味を考える。

<目次>
まえがき―「弱さの情報公開」の源流 
一部 弱さの情報公開
一章 弱さの情報公開 
二章 弱さを認める 
三章 行き当たりバッチリ 
二部 つながる
四章 わたしが「ダメ。ゼッタイ。」ではダメだと思う理由 
質疑応答 
五章 「認知症と繋がる」ということ 
六章 あいだは「愛だ」 
七章 地域と人と苦労で繋がって(向谷地生良氏最終講義) 

●大反響増刷中!
『子ども当事者研究 わたしの心の街にはおこるちゃんがいる』

本体価格:990円+税、出版社:コトノネ生活



・「北のバラバラな日々」 (40) 笹渕乃梨


みなさまこんにちは。三寒四温の札幌。

今の気温は−5℃。昨日は家の庭に初めてウソ(野鳥)のペアが来ました。首とほっぺのピンク色がなんともかわいく、プリっとツルっとしたフォルムも素敵なめんこい鳥でした。

今回は我が家の母娘の会話をイラストにしてみました。

おつきあいいただけたら嬉しいです。

この翌日、「(我が家のリクガメ)たまごちゃんは、お母さん(わたし)とみどり(娘)のどちらの方が好きか」という話題に。

わたし)

「ごはんをあげたり、たまちゃんの部屋の掃除をしたりしてるのはわたしだから、きっとわたしのこと好きだと思う」

娘)

「お母さんはたまちゃんのお世話はたしかにたくさんしてるけど、愛情をかけてるのはみどりの方がたくさんしてると思う。だからたまちゃんはみどりのことの方が好きだと思う」

びっくりしました。お世話と愛情をかけることに違いがあると言うわけ。たしかに違うと思うけど、やり方がわからないわたしは、

わたし)

「愛情をかけるってのは、どうやってやればいいの?」

と、質問。すると、

娘)

「こうやって、たまちゃんを胸にあてて抱きしめたりするの」

(カメを胸にあててハグして愛おしそうに甲羅をさすっている)

あああああ、簡単そうで難しいやつ。

体温が乗ったコミュニケーションと呼べばいいんでしょうか。

わたしの生育歴にはイマイチ登場してこなかったような、受け取れてなかったようかアレだな…と思いました。そこで、

わたし)

「ほお。わたし、あんたに愛情をうまくかけられてない気がして自信ないんだけど、私はあんたにちゃんと愛を伝えられてる?」

娘)

「うん」

わたし)

「なにかフィードバックほしいから、足りないとか違うとかあったらおしえておくれ」

娘)

「…わかった…」

とのこと。

フィードバックは期待できないような返事でした。

愛するということがいまいちよくわからない42歳。子どもに愛をおしえてもらった春のはじまり。これもまた人生なのかもしれません。

とほほ。


笹渕乃梨(ささき・のり) 自己病名は『境界線ぐちゃぐちゃ症候群サトラレ型変化球言葉タイプ(現在は枯れている)』
北海道で小学生の娘と二人暮らしをしている。趣味はゆるめの野遊び、スキー、工作、手芸など。精神科のお医者につけてもらった病名はうつ病とADHD。現在は無脳薬で約3年。
「子ども当事者研究」、「子育て当事者研究」、「なさ親」などで活動中。22年4月より「nasaLAB(なさラボ)」のWebラジオ「つまり、きりがないラジオ」パーソナリティ。

「nasaLAB(なさラボ)」の登録はこちら↓



・続「技法以前」228  「自分自身で、共に」-当事者研究のインパクト-向谷地生良

当事者研究は、「自分自身で、ともに」を基本理念とした対話実践です。この活動は、自らの人生経験や抱える困りごと、生きにくさなに関心を寄せ、その中から「研究課題」を取り上げ、常識や前例にとらわれずに前向きな試行錯誤を重ね、時には図(絵)や、アクションを用いて出来事や苦労のおきるパターンやしくみ、かかえる苦労や困難の背後にある意味や可能性を一緒に考え、意味を見出し、知の共有をめざす対話のプロセスとして2001年に北海道浦河町ではじまりました。

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