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(短編)神さま、子猫の悩みに答えてよ ~Innocent Love~

お外には何があるんだろう

家にいればご飯がもらえる

ご主人様に撫でてもらえる

でも、扉の外の世界には

なんだか色んなものがありそうにゃ

私、それを知らなくていいのかにゃ

お外には何があるんだろう

家にいればご飯がもらえる

ご主人様に撫でてもらえる

私、それはすごく幸せ

だけど、扉の外の世界には

なんだか色んなものがありそうにゃ

もしかしたら今の幸せは本当の幸せじゃないのかも知れない

もっと大きな幸せが待っているのかも知れない

私、それを知らなくていいのかにゃ

お外には何があるんだろう

何があるんだろう…

最大の幸せを得られない最大の不幸

子猫はそう考えると、居ても立ってもおられなくなりました。

一度その事を考えてしまってから、今までの幸せがなにかみじめなものに感じられて、仕方がなかったのです。

一度その事を考えてしまったが最後、今までの幸せよりももっと大きな幸せが存在する可能性に気がついてしまうと、もう現状の幸せを信じることが出来なくなってしまうのです。

子猫は一時はその事を考えまいとし、自分はみじめじゃない、幸せなんだと思い込もうと努力しました。

しかし、ご主人様に美味しいご飯を頂いて、可愛い可愛いと撫でられながら、ご主人様のベッドで一緒に横になる時、何故だか涙が溢れ出してしまって、

それをご主人様に悟られないようにするのは大変でした。

子猫は悩みました。

なぜこんな辛い思いをしなければならないのか。

私が何か悪い事したとでも言うのか。

まさか私が小さい時に拾ってくれたご主人様に罪があるとは思えない。そんなはずは無い。

それだけは絶対に違う。

ではやはり、私が何か悪い事したとでも言うのか。

ねえ誰か教えてよ。

神さま、答えてよ。

しかし誰もその疑問に答えてくれるものはおりませんでした。

同居の猫はそんなこと考えなくていいと。

ご主人様には話しが通じませんでした。

同居の猫は、小さな幸せで十分じゃ無いかと。

子猫は悩みました。

今までの出来事を一生懸命、振り返ってみますと、幸せなことばかりで、大した不自由は無かったと分かりました。

少しの不満はありましたが、そんな事は大した事では無い。

たまにご主人様にわけも分からず、いえ、自分が何か悪いのだろうけど、乱暴にされることもあるという事を思い出しました。

同居の猫からも長い間無視されていた時期もあったし今も基本意地悪されている事を考えました。

でも、そんなのは少しの不満であって、大した事では無い。

私は今、幸せで、対して外の世界は何があるか分からない。大いに不自由で大変に過酷な環境なのかも知れない。

外の世界はどんな不幸が待ち受けているか分からない。

けど、それを乗り越えたら、もしかしたら今よりももっと大きな幸せがあるのかも知れない。

その大きさはとてもとても大きなものだとしたら…。

子猫は悩みました。

ある晴れた日、扉が少し開いている事に気づきました。

ご主人様がしっかり閉める事を忘れたのか

神さまが開けておいて下さったのか

分からない。

子猫は決断を迫られていました。

汗が滝のように流れるのを感じて、とても緊張し、恐怖が心を支配しました。

しかし外の様子はいつもガラス越しで見る外と変わらないようでした。

子猫は一歩だけ、踏み出してみました。

そして思い出しました。ある日思ったことを。

お外には何があるんだろう

家にいればご飯がもらえる

ご主人様に撫でてもらえる

でも、扉の外の世界には

なんだか色んなものがありそうにゃ

私、それを知らなくていいのかにゃ

お外には何があるんだろう

家にいればご飯がもらえる

ご主人様に撫でてもらえる

私、それはすごく幸せ

だけど、って…。

扉の外の世界は明るくてキラキラ輝いていて、いろいろなものが通り過ぎて、でもその家の中の様子を気にするものは、誰もおりませんでした。


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