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動乱と平穏:暴力の時代に穏健をゆかば

 しだいに、汗ばむ時節となってきた。ところどころには未だ桜の残滓が残るも、東京やその周辺では、もはや初夏の前触れのようだ。

 それにしても、忙しい浮き世はかつてなく殺気立っているようにも思える。気付けば自国の元首相が凶弾に倒れてから一年の夏をまえに、またもヒヤリとする衝撃が走った。

 あわや、また暴力の犠牲をみるところだった、と動転するも、民主主義社会はそのようなものでは決してひるまない。それでも──確実にこの世の一種の退潮を実感せざるを得ないだろう。

 「暴力による現状変更」それは、ロシアによるウクライナ侵略にみるように、明らかな犯罪行為であり、また社会や人の世をひどく荒廃させるものでもある。

 前近代まで、あるいは僅か近年まで、普遍的なものとして残存してきたあらゆる暴力は、完全には消え去っていないどころか、ふたたびその姿を変えこの世に登場しつつある。

 動乱の点は線となり民主主義社会を脅威に追い込むのだろうか。しかし、ここで平穏を失っては絶対にならない。今だからこそ、穏健を踏みしめていくほかないのだ。

 普遍的なことだが、街を散策すると、場合によってはその土地の文化や歴史の重層性に気が付くかもしれない。何百何千年の土壌の上を踏みしめるわたしたちは、また新しい春をこえて、遠くまであてもなく彷徨う。それは、きっと真に意味のないことでは、ない。

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