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ネット時代の取捨選択:いいニュースと悪いニュースと、それから都合のいい情報がありまして・・・

 メディアの主戦場がインターネットになって久しい。紙媒体は一部を残してもはや風前の灯と化しており、ネットニュースはその情報伝達の驚くべき速達性と、グローバル化時代の申し子たる世界同時配信をもって、今この瞬間もインターネットの隅々まで行き渡っている。さて、このネット時代ならではのメディアのあり方や、情報を受け取るわたしたち情報消費者の側には様々な問題があることは以前から指摘されてきた。

 ここで情報に対する歴史を簡単に踏まえると、近代以降の日本では新聞や書籍を読む習慣があり、特に大衆がそれを通じて様々な文化を創ってきたのはよく知られるところだ。時代が下り、ネット全盛のこんにち、なおも新聞や雑誌などが引き続き購読されているが、流石にインターネットの世界的潮流にあわせて世界各国の、特に米国などのIT多国籍企業に押されてSNSやポータルサイトなどからネットニュースというかたちで多くの人に情報が行き渡ってきた。そんなネット時代をここ十年二十年やってきた中で、いま改めて問題になっているのがフェイクニュースやエコーチェンバーなどの現象である。

 そもそもデマや誤情報は今に始まった事ではなく、そういったものを乗り越えてここまでやってきたわけだが、特に最近はまた顕著である。いわゆる陰謀論などと呼ばれる類のものも、より巧妙化して私たちのすぐそばに忍び寄っている。SNSで同じ意見の集団と一定の情報が飛び交うことにより偏狭なカルト化を齎すおそれのあるエコーチェンバーも、より深刻になってインターネット上での政治や経済にかんする事柄まで広く影響を及ぼしている。

 ここで改めて確認しておきたいのが、主にインターネット経由で入ってくる情報を、無批判に私たちの頭のなかにインストールしてはいないか、という指摘である。これは旧来のテレビや新聞などのメディアよりも、より簡単に双方向で情報発信できるネット時代ならではの心構えでもある。いいニュースと悪いニュースという区切りがあるが、それだけでなく、自分にとって都合のいい情報ばかり集めてしまうことが出来るのがインターネットの特徴ということができるだろう。

 現代において、情報は時に私たちを導く希望の光となり、また深淵へと誘う深い闇そのものにもなる。簡単に人心を惑わすことのできる兵器になり得る事から、昨今のハイブリッド戦争では情報戦は主力戦術として用いられるほどだ。

 最後に言わば、ネットの情報との関わり方を誤れば、それは社会からの遊離や分断を招く。断絶の時代に、もう一度考え直してみるべき重い提言である。


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