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仕事を勝ち取るための履歴書と職務経歴書とは!相手を前のめりにする極意を解説(前編)

希望する仕事につくために欠かせないのが履歴書と職務経歴書。面接よりも前に、相手がイメージする「自分」の姿を決めるといっても過言ではありません。履歴書や職務経歴書をよりよく魅せるためには、礼儀やマナーはもちろん大切ですが、言うまでもなく「中身」が重要です。

私自身、ITコンサルタントとして複数の会社の内定を勝ち取り、一方で会社組織のマネージャーとしても数百名以上の方の履歴書と職務経歴書を拝見して選考してきました。
本記事ではその経験を踏まえて、相手を前のめりにしてグッとくる履歴書と職務経歴書*について解説します。
*以降、『履歴書と職務経歴書』をまとめて“履歴書等”と記載します

近日中に履歴書等を書く必要のある方や、就職活動を今後始めるにあたり準備中の方など、さまざまなお立場の方がいらっしゃると思いますが、唐突に真っ白な状態から書き始める前のイメージ作りに役立てればと思っています。

ご自身の履歴書等を表現するための重要な観点や思考法について、実例を用いて詳しく紹介していきますので参考になさっていただければ幸いです。


1. 会社は人材を欲しがっている

近年、企業では人材不足が慢性化しつつあります。転職が今や珍しくなく、人材の流動化が激しくなっていることが理由の一つとして挙げられますが、企業が人材不足に陥ってきた背景にはいくつかのことが考えられます。

  • 終身雇用がもはや絶対的な価値を持たず、昭和の時代ほど安心した老後の保証がない。そのため、肉体と精神を削り、時間を費やして1社に留まる理由が薄くなっている

  • 転職サービスが質・量ともに充実しているスマホを通じた情報交換のスピードがどんどん加速している

  • テレワークが浸透し、プライベートな空間と時間を作りやすくなっている

  • 一方で、企業が求められる市場からの要求は複雑化しており、扱う情報も多くなっていることから、必然的に仕事の難易度が高くなっている

会社は優秀な人をいつでも欲しがっている、というわけです。

2. 優秀な人(≒欲しい人)とは? 採用側の本音は?

では、会社にとって「優秀な人」とはどのような人でしょうか。立派な大学の出身者でしょうか?なんでも言うことを聞いてくれる人でしょうか?
できるだけ具体的なイメージでお伝えしたいので、多少極端な例になってしまいますが、中途採用のケースを細かめに設定したいと思います。

ある大手の製造会社Xで実行中のDX化プロジェクトのプロジェクト責任者Pさんがこんな悩みを持っていたとしましょう。

プロジェクト責任者Pさんの悩み:
“中堅社員のSさんが退職予定だが、彼が長年担当していた調達領域の複雑怪奇な業務プロセスの改善要件を新システムに確実に加えなければならない。彼がほとんど一人で現在の本社の調達業務をこなしていて一番詳しいから、現場のマネージャーに無理言ってプロジェクトメンバーにアサインしたのだが、退職は痛いな。優秀な人、誰かいないかな。”

図:Pさんの頭の中

ここでPさんが頭に描いている「優秀な人」をイメージしてみます。

Pさんが描く「優秀な人」:
(1) Sさんのコピーロボット
(2) Sさんの代替社員
(3) 製造業界の経験者
(4) 調達業務領域の経験者
(5) DXプロジェクトの経験者

一つずつみていきましょう。

(1)Sさんのコピーロボット
過去に、藤子不二雄さんの「パーマン」という漫画で鼻のボタンを押すと、押した人のコピーができる(再び鼻ボタンが押されるまで本人として振る舞う。途中で転んで鼻を強打して全くコピーが機能しなかったオチも何度かあり)夢のマシンが話題になりました。が、残念ながらコピーロボットはまだ世の中には存在せず。有り得ないですね。

(2)Sさんの代替社員
長年、X社は調達領域の重要部分をSさん一人に頼り切っていたのですから、今さら急に代替社員を探したいと言っても、虫が良すぎますね。そもそもこうした社内業務が個人に依存するほど、X社が人材難であることは、Pさん自身もわかっていそうです。

(3)〜(5)製造業界・調達業務・DXプロジェクトの経験者
この3つの経験を全て積んでいる人は、数ある製造会社の中にはいらっしゃると思いますが、人数は多くはないでしょう。かつ、これだけの経験を積まれている方が、たまたま今、他の会社に転職したいと思っていて、X社と出会える確率は相当に低いと考えて良いと思います。
なかなか候補者に出会えない責任者のPさんは、3〜5のうち条件を一つ削ってみることにしました。その結果、新たに以下の候補者Tさんが現れました。

候補者Tさん:
これまで小さな製造業に20年間勤めていて、原料の調達も少し携わったことがあるが、独自の商流の中で担当営業が拓いた調達先との複雑な契約をとりまとめる契約管理課のマネージャーまで務めた。IT系の知識は一般ユーザーレベルで専門外。

Tさん、活躍できそうでしょうか?
会社の採用基準・方針や、面接者の好みにもよりますので、絶対的な正解はありませんが、私は残念ながら、X社、Tさんの双方にとって良い結果につながる可能性は低いかと思います。
Pさんも同じように感じたようで、見送ることにしました。悩みはしばらく尽きないようです。

この判断は非常に難しい部分なのですが、場合によっては、Tさんが即戦力として採用されるケースもあるでしょう。人間社会での営みですから、相性、運、タイミング等が大きく作用して大活躍することも十分あり得ます。

後のリスクを重く見たPさんは、Tさんの採用を見送りました。とはいえ、できるだけ早く人材を見つけたい。ではどうすればよいのか。

私がプロジェクト責任者のPさんの立場であるとしたら、いま必要としている人材要件の考え方を2箇所修正することで、募集の幅を広げます。


修正箇所① 「優秀な人」(≒欲しい人)の定義を変える
コミュニケーション力、柔軟性、再現性に期待値を設定しなおす
・複雑怪奇な業務プロセスを可視化して合意をとるコミュニケーション力のある人
・これまでにいろいろな環境に身を置いて、いろいろな立場を経験している人
・新たな環境でのスタートダッシュのやり方に説得力がある人

修正箇所② プロジェクト側の体制
調達領域の属人化状態を解消することを新たな課題と設定しなおす
・マンパワー不足を補えるよう、強力なチームを共に作っていける人


経験上、コミュニケーションが得意で、チームビルディングに寄与できそうな柔らかさや朗らかさを備え、共感や協調のスキルを持たれていると感じる方は、学習意欲も旺盛で、立ち上がりに多少のタイムラグはあれど、良い結果を出してくれる方が多いです。

3. スキルと姿勢

ここで一つ、重要な概念をお話しします。
これまでの私の経験では、ビジネスパーソンの評価の多くは、「スキル」と「姿勢」の2面からの評価となっていました。明確に2つに分けている会社もあれば、そうでない会社もありましたが、これは会社員、役員、個人事業主のどのような立場でも、今後の自分磨きにとって永遠の課題に近い概念と思いますので、改めて記憶の片隅に置かれることをオススメします。

スキル :訓練や学習によって獲得した能力(資格、業界経験、業務知識など)
姿勢 :基本的コア能力(信念、胆力、貢献意識、コミュニケーション力など)

先のPさんの例における「優秀な人」の定義はまさに、「スキル」軸から「姿勢」軸への転換を促したものです。上の例では、これから新しい仕組みを作ろうとしている最中での欠員という緊急事態の中で、できるだけ戦力ダウンを避けたい目的が大きい。それに対して、あるに越したことは無いが、どんなに他で積んできた業務知識があろうと、次の会社で活躍できる保証はない。Tさんの20年間の経験は尊敬に値するが、他での経験が薄く、逆に長年の経験が仇となる可能性もある。

もちろん、一箇所で経験を積むことを否定する意図はありません。その期間でコツコツと姿勢面を磨かれた方もいるでしょう。そういった必要十分な方と縁があって出会えれば申し分ないのですが、人材難のご時世において、スキル面の条件を絞り込みすぎるとなかなか出会えないことが現実的な悩みの種であれば、姿勢面にシフトしてみるのはどうかという発想です。

私自身は、書面上のスキルばかりを見て、人を見ず、人の属性やレッテルだけを見ているなと自分が感じる会社とは、慎重に付き合うようにしています。だから、懸命に詰めた履歴書等が伝わらなかったら、あまり中まで踏み込んでくれなかったね、相性、相性、と思っておけばよい。

これまでの採用経験においては、書類の内容自体はもちろん参考情報として拝見はしますが、どれだけこちらを理解し、真剣に自分と向き合ってこの書類を書いているか。己の軸をきちんと持ち合わせた人物か。私個人的には、こうした点を重要視しています。

私自身も、自分自身を、スキルと姿勢のどちらをメインで推すのか、それともバランス重視で推すのか、逆に相手はどちらを欲しているのか、そうした感度を高めておくように日々心がけています。

(前半はここまでとさせていただき、後半に続きます)