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仕事を勝ち取るための履歴書と職務経歴書とは!相手を前のめりにする極意を解説(後編)

前稿では、グッとくる履歴書と職務経歴書を書くヒントになればとの思いから、採用側の本音に触れ、さらに重要視される「スキル」と「姿勢」の概念について書かせていただきました。本稿はその続編として、今度は採用される側にとって重要となる「自分」の表現について触れていきたいと思います。


4. 自分は何者なのか

採用側の本音が垣間見えてきたでしょうか。スキルはあるに越したことは無いが、姿勢がより重要視されるというのは、デザイナー等の特殊な専門能力が求められる企業組織を除いて、多くの仕事に共通で当てはまると言っても過言ではないと私は思います。
大切なことは、業界知識や、過去の会社で得た知見や栄光を伝えることではなく、「この人は何をしてくれそうか」がシンプルに相手に伝わることです。

話を履歴書等に戻して、今度は、仕事を希望する側の立場で見てみましょう。
前稿で記載した中途採用のケースにおけるプロジェクト責任者(Pさん)の立場を逆手に取る発想、といえばわかりやすいかと思いますが、私が仕事を勝ち取るために超重要と考える点は、4つのキーワードに凝縮されます。

仕事を勝ち取るための超重要キーワード(ALT+編集部)

4つのキーワードのポイントを中途採用、新卒採用の立場に分けて整理してみましょう。
「姿勢」から派生するこれらの概念は、人の中身を見ています。よって、中途採用であっても新卒採用であっても、経験の幅と深さが異なるだけで、本質的な意味はほとんど変わらないと私は考えています。

4つの超重要キーワードと中途採用/新卒採用の関係

「再現性」「速さ」そして「構想力」は、自分と向き合い、姿勢を高めることを通じて、その本質が得られる。最後の「説得力」は、これまでの経験・スキルを振り返り、自分の言葉でロジカルに履歴書等に落とし込めれば、自然と増してきます。そう考えると、仕事を得るには、得たい仕事の特徴と相手の立場を理解し、今までの皆さんのご経験をどのように生かせば、再現性高く、いわゆる即戦力として仕事を全うできるのかを、まさに「己」の言葉で説明しきれれば良い。そのためには、これから仕事を得に行くあなた自身は何者なのか、これをまずご自身が理解し、言語化し、相手に「証明*」することが不可欠なのです。

あくまでも、得たい仕事の特徴と相手の立場を理解することが大前提です。これを外すと単なる「自己中」になります。紙一重ですが、この差は大きい。一流にはすぐに見抜かれます。人間社会での営みがゆえに、断言はできませんが、希望の仕事を獲得できる可能性は確実に上がるはずです。

*ご興味があれば、別記事『社会を生き抜く「証明力」の極意!』もご覧ください。仕事を勝ち取るための命題=“自分の歩みや経験が、相手の仕事に役立つこと”を証明するためのヒントがあるかもしれません。

5. 信念とエピソードに集中、経験は少なくても分解せよ、最後まで己を貫け

ここまで、人材評価は「スキル」と「姿勢」の2面があること、そして、仕事を勝ち取るキーワードとして姿勢から発生する「再現性」「速さ」「構想力」「説得力」の4つの重要性について説明してきました。

この先は、皆様ご自身が、履歴書や職務経歴書の中に、今までの人生や経験からどのような信念やエピソードが語れるか、そして相手に伝えるロジックをどう考えるかが重要になります。エピソード、いくつ頭の中に思い出せるでしょうか?

社会人経験のある方は、過去に在籍した会社や取り組んだ仕事を思い出して、まずは1行ずつ列挙しましょう。履歴書で箇条書きする部分です。詳細な経歴は職務経歴書に書くので、後に取っておきましょう。

そして、履歴書の中に、特に濃いエピソードが潜む経験の上位2つを選び、その行の直下にもう一段階、詳細な見出しを入れてみましょう。「株式会社〇〇 入社」の行の1行下に、「〇〇プロジェクト着任」「社内業務の〇〇を担当」といった、面接で興味持ってもらいたいのはココ!と意思表示する行の準備ができました。
あとは、職務経歴書の中で、先ほどの4つのキーワードを意識しながら、自分をPRするシナリオをロジカルに作っていきましょう。

学生の皆様は、どのようなエピソードが思いつくでしょうか。アルバイトの経験でも、部活でも、私は筋が通ればなんでも良いと思います。より、得たい仕事と直結した経験であればあるほど、採用側の相手へのわかりやすさは増しますが、仕事内容からは遠くとも、仕事に対する姿勢が伝わるものであればよいと私は考えます。

「そもそも、取り立てて何かに打ち込んだ経験は無いから書くことが無い」「周りと比べてこんなことしか書けない自分が恥ずかしい」などと思う人もいるかもしれません。でも考えてみて下さい。採用する側にとって、皆様の過去の「立派な」経験をどれだけ欲しがるでしょうか。人間は皆違うのですから、本当にどれだけ立派なのかは、当事者では無いので文字だけではわかりません。それを語る本人の姿に、どれだけ真摯さを感じ、説得力があるのかが重要なのです。エピソード、本当にありませんか?

上の表に戻って、過去の小さな出来事でも良いので、分解してみましょう。
高校の文化祭が楽しかった記憶があるならば、なぜ楽しかったと思うのかを手掛かりに分解してみるのも手です。何らかの自分発の力学があるはず。以下は、とある新卒社会人の文化祭のエピソードです。

当初は冷めていて積極的ではなかった自分。リーダーは別の生徒が担当していて、最初は言われた通りに担当の役割をこなすだけだったが、次第に何人かのチームで意見を出しながら、たまに冗談を言い合いながらの作業が楽しくなってきた。一方で、このままのペースでは当日に理想の完成形まで至れない雰囲気があった。自ら進んで考え、同時並行でやる単純作業と、それぞれの得意領域で役割を分けてはどうかと仲間に打ち明け、意見をもらい、翌朝メンバーに向けて提案してみたら受け入れられた。自分は手先の器用さを生かして最後の仕上げを夢中でやった。最後に別のグループを手伝った。
成功に向けて自ら素早く動き、提案したことで状況が変化したこと。役割を理解して丁寧に作業をしたこと。そしてチームが一つの目的を達成できたこと。別のグループに役立てたことで、自信がついたこと。最後に、仲間に感謝を感じることができたこと。文化祭を通じて、このような経験ができた。

(とある新卒社会人の高校時代の文化祭のエピソード)

さすがに中途採用で高校の文化祭を取り上げるのは気が引けますが、新卒採用のエントリーシートならば、それを本気で伝える気概を感じるならば、全くの許容範囲内であり、私は好感が持てます。

この文化祭のエピソードにも、再現性、速さ、作戦が潜んでいます。ご自身の頭の中で、答えを探してみてください。説得力は、こうしたエピソードをきちんと筋道を立てて説明ができる力を指すと考えればわかりやすいかと思います。

ここでは余談になりますが、実は良いエピソードに行き着くきっかけとなる要素に、「勇気」と「情熱」という2つの概念が潜んでいます。これは私自身が座右の銘にしている言葉で、非常に重要な考え方です。「姿勢」のさらに奥底にある「こころ」の話になり深みのある内容であるため、これは今後、別の記事でご紹介することにします。

6. 履歴書と職務経歴書を書くときに、絶対に心に留めておきたいこと


最後に、履歴書等を書く際の留意点を2つ述べます。

留意点その1 ウソはつくな 背伸びをするな

ごまかしや、まやかしから得た報酬は、「足元の小銭」「あぶく銭」と揶揄されるようなもので、ほぼ何にも残りません。これは断言できます。そして、自分に嘘をついて背伸びをして得た仕事はプレッシャーに潰されます。
自分をごまかさずに、信念を持って積極果敢にチャレンジすることとは全く別次元です。やはりきちんと自分と向き合いたいものです。

留意点その2 ”自分不在”を避けよ

単純に立派な経験だけを並べて、そこに「自分」がないような記述になっていないかは要注意です。よく見かけるのは、学校や所属組織自体の価値を訴えているもの。あるいは、その組織の立派な成果をあたかも自分の成果のごとく訴えているもの。さらにはそれらを列挙するだけにとどまり、“あなたはそこで何をしていたのか”が読み取れず、“後は採用側の皆様で、自分がどれだけ優秀な人間なのか判断してください”とでも受け取られるようなもの。そうした“自分不在”の履歴書だけは避けたい。しっかりと、自分はこう思うというメッセージを入れていきましょう。

7. おわりに

経験とエピソードを通じてご自身と希望先の面接官のニーズがピッタリあった瞬間。ワクワクします。面接した時もされた時も、良い人に会えたその瞬間の充実感は大きい。そんな瞬間をたくさん味わいたいものです。

縁があって一瞬つながった仕事と自分の糸。その糸が強くなれば、将来、ご自身や仕事相手、ひいては社会まで変える大きなきっかけになるかもしれない。履歴書等が糸の役目を果たすのならば、その糸が、「表現力が足りない」というちっぽけな理由で切れてしまうのは本当にもったいないことだ。

(ALT+編集部)

そんな思いでこの記事を書きました。
一人でも多くの方が、正しく己を伝え、正しく相手に伝わることを願っています。

今後とも、ALT+編集部をよろしくお願いいたします。