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#22 ママ、パパの他に好きな人ができたの?

こんにちわ。id_butterです。

人生で最高に不幸な時に恋に落ちた話 の22話目です。
今回は上の娘について、書いてみようと思います。


離婚を粛々と進める最中、突然とんでもないところから槍が飛んできた。

上の娘は鋭い。
普段はどちらかというとのんびりとしたおちゃらけたキャラクターなのだが、時々本質を突いてくる時がある。
そして、「あのとき、母はこんな気分だったのかなぁ」と思う。
わたしに似ているのかもしれない。(わたしは、彼女を宇宙人だなと思っているので、とても不本意である。)
彼女はけっこう人を見ている。もちろんわたしも見られている。

そして、その娘にしてこのセリフなのだった。

ママ、パパの他に好きな人ができたの?

うーん、なんと答えたものだろう。
嘘をつくのもいやだし、ごまかすのもいやだが、大人びた発言をするとはいえ繊細な子どもの一面を持つ彼女を傷つけたくはない。

とりあえず、聞いてみる。
彼女の気持ちを知らなくてはいけない。
少しでも答えやすいようにと、わたしはお風呂の中から、今出ようと体を拭いている彼女にドア越しに聞いてみた。

わたし:「この前言ってたこと、なんでそう思ったの?何かあった?」
娘「うーん、パパとママ一緒にいなくなるのかな?と思って。ママいなくなるの?」
わたし:「まだよくわからないけど、別々に住むことになるかもしれない。パパ、仕事のこととかあってね。」
娘:「で、もし別々に住むならね、パパと一緒に住んであげようかと思って。かわいそうだし。」
わたし:「そっかぁ、そんなこと考えてたんだね。」

わたしは、2〜3日前からの娘の態度を完全に理解した。
そういえば、おとといの夜「△△ちゃん(妹のこと)はかわいいよね。〇〇はあんまりかわいくないね。」とか言っていた。そんなことないよともちろん返したけど。
「×××ちゃんちはね、お父さんいないよ。ケンカして帰ってこないんだって」とかも言っていたかもしれない。

そうか、やはり君は感づいていたのだね。
母もなんとなく君が気づいているのではと思っていたけれど、どう話したら
と考えて答えが出ないままで、申し訳ないことをしてしまった。

わたしは娘に言った。

ママは、ずっと〇〇と△△と一緒に暮らしたい。
いつも怒るけど、それは〇〇が一人で大人として暮らしていけるようになるまでだよ。嫌いで怒っているわけじゃない。
〇〇がママのこといらなくなるまで、ママはいなくならないよ。
それと、パパは別々に暮らすことになるかもしれない。
でもパパは〇〇と一緒に暮らせないと思う。今、とっても忙しくて〇〇の面倒をみることはできないし、学校も変わることになってしまうから。
ただ、今までと変わらない。〇〇が会いたい時とか必要な時はちゃんとパパは来てくれる。
パパも〇〇と△△が大好きだから、ずっと家族だよ。

娘は安心したようだ。
「なんだ、会えるんだ、よかった。一緒に寝られないのはさみしいけど。」

一部嘘を含むが、夫と話した上、このように話すように同意していた。
わたしは、子どものサインを見逃してはいけない、とだけ思った。
今回は、今のところだいじょうぶ。
定点観測のため、毎晩とりあえず抱きしめて話を聞くことにすれば見落とさないだろうか。


その後、どうしても聴きたかった質問を彼女にしてみた。
「ところでさ、なんでママがパパじゃない人を好きになったって思ったの?」
これについては、絶対に答えてくれなかった。
理由も教えてくれない。
彼女のこういうところは、大人のようだなといつも思う。


このとき、わたしは彼女が3歳のときに高熱で救急車に乗った時のことを思い出していた。

下の娘を出産して1週間くらいだったと思う。
娘二人を連れて実家に里帰りしているわたしは、緊張していた。
そんな中、彼女(上の娘)が熱を出した。
薬を飲んでもさっぱり下がらず、夜10時を過ぎる頃、ほんの15分で彼女の熱は急に38度台から40度を超えた。
一度けいれんを起こしたことがあったので、わたしはかなり動揺していた。
実家なのでかかりつけ医も遠く、けいれん用の熱冷ましまでは持ってきていなかった。40度を超える熱で、ガクガク震える彼女の手を泣きそうにながら握りしめ、母に救急車を呼んでもらう。
騒ぎで下の娘までもが聞いたこともないような声で泣き出した。
しょうがないので、生後約1週間の下の娘を胸にだき、3歳の彼女に付き添って救急車に乗り込んだ。
病院はなかなか見つからなかった。
隣の市にある病院まで行くことになり、病院が見つかるのまでに10分、着くまでおよそ30分くらいはゆうにかかった。
そして、病院に着く10分前くらいだっただろうか。
彼女の一言に不意をつかれた。

「ママ、だいじょうぶ。もうすぐ着くからね、わたしだいじょうぶだよ。」

溢れそうになる涙をこらえて、「そうだね。がんばろう。」と声をかけた。
救急隊員の人も少し驚いていた。


そうだった、この子こういう子だった。
時々、天使なのか神様なのかがどこからかこの子を介してわたしに話しかけてきてるのか?と思うことが、よくあった。

一番大事なことを教えてくれたり、気づかなかったことに気づかせてくれたり、忘れていた感情を思い起こさせたり、子どもって不思議なものだ。
大人の部分と子どもの部分がとても凸凹で、矛盾なく存在していて、それが、すごく真実に近い時がある。

いつも思う。
育てているんじゃなくて、育てられているのはわたしの方だ。
この子をわたしのところに来させてくれたどなたか、本当にありがとう。
わたしの子だけど、わたしには過ぎた子だなぁとあらためて思う。
どうしても、この子を手放すことなんてできない。

ママ、パパの他に好きな人ができたの?
という質問に結局答えていない母に娘が気づいていないことを祈っている。
もうちょっと大人になってからね、というのはずるいだろうか。

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