鼈甲

子ども二人とねこ一人。病院勤務のソーシャルワーカー。 世間のはざまで美しいものを啜って…

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子ども二人とねこ一人。病院勤務のソーシャルワーカー。 世間のはざまで美しいものを啜って生きてる。 Chappy!ワン!

最近の記事

予言

前の職場には季節がなかったし、今の職場では夏に仕事が少ない。そして数年一緒にいた人は夏に私と会える時間などなく、夏休みの人混みを一人で出かけるほど私も元気ではなかった。ゆえに、夏の洋服が少ない。 都市部に出かける用事があったので、そのまま夏のセールに飛び込み、ワンピースを2着、スカートを1着買った。 これで私はこの夏の間、3回は出かける気になる。 お披露目する機会がなかった浴衣を入れたら4回分、私は夏を楽しむことになる。

    • 通勤経路にあるのに辿り着けない海の街

      数年ほど、夏の間が繁忙期となる人と一緒にいたせいか、元来の人混み嫌いも手伝って、夏らしい光景というのを観ることもなかった。 一人で出かけるには、あまりに暑さが暴力的なので。 ここ数ヶ月は一緒に過ごす相手がわりと土日をきちんと休む人なので「夏休みが来る前に海に行こう」と意見が一致し、かといって暑さが苦手な四十代2人なので、海辺のカフェなどをハシゴしたり、海辺の温泉で足湯を楽しむことにした。 エアコンという名の文明が効いた室内から眺める砂浜というのは、実に大人に適している。

      • このままでは暗殺されるかもしれないが、そも私は皇帝ではない

        学生時代、アルバイト先のとんかつ屋さんの社員から「オーダーを忘れられたり、間違えられたりするお客様は何故か複数回同じ経験がある人が多い」という話を聞いた時、あぁ私だけじゃないのだなぁと思った。 オーダーを忘れられる。間違えられる。盛大に焦がされたものが提供される。うつかり異物混入。 そういった星のものに生まれてしまったのが私。 そして最近、これはもう、確定だなぁと思うのが、担当者に恵まれない星のもと。 特にこの3ヶ月ほど、父の相続などに関してだけでもひどい。 カーディーラー

        • 知識でなく体験からは細やかな配慮と気付きが生まれる

          昨年、自分の離婚裁判が終わって半年後、「夫と離婚したい。絶対揉めると思うので裁判までの流れを教えてほしい」というクライアントに出会った場所で、父を亡くして絶賛後処理奮闘中の今年は「親を亡くして何からしたらいいか…」というクライアントに出会う。全ての私の人生を糧にして、私の仕事は厚みを増してゆく。 今日も元気に死にたいけれど、無の境地にある時は◯◯したいとも思わないので、まぁそれもまた通常営業。

          夏至の前に

          来月、息子が二十歳になることで、主治医と障害年金の相談をしたのだが、それはそれで彼の今後の人生を考えることになり、頭が重い。 しかして息子の再来月の海外旅行についての手続きも勧めており、これについては主治医も賛同してくれ、嬉しくもある。 そして今日も納税通知書が届き、自分の分と父の分(代表相続人である私)の合計額に驚愕している。

          夏至の前に

          私は私と友人になれない

          最近、頻繁に2人で会っている異性がいる。 頻繁にといっても当者比なので、パートナーと年に10回会うくらいとか、同じ市内に住んでる30年来の友人と会うのが半年に一度で多い方、みたいな私にとってではあるが、偶発的な事も含めてほぼ毎週末会うような状態なので、頻繁にと言っても良いと思う。 異性でお互いに独身でもあるし決まったパートナーも持たないが、そこに恋愛感情は介在せず、まぁ彼の方にあったとしても表に出さず、私のこれまでの体験の中にあった、一対一で同じ時間を過ごす男性が徐々に距離

          私は私と友人になれない

          噛みしめる初夏

          ようやく、父の不在を哀しめる余裕がでてきたのか、道端に停まった花屋の配達バンから白い花が民家に運ばれるのをみて泣いていた。 誰かに縋りたい想いもあるが、そうしたかった相手とはすでに疎遠なので、自分で自分を愛でることにし、建築や日本画や丁寧な懐石などで澱をとかしている。 都市部への会議出張の後、先輩たちにお茶に誘ってもらったことに気を良くし、そのあとこっそり一人で行くためにJazz Barの予約までとった。

          噛みしめる初夏

          今まで黙っていてごめんね…

          息子は発達障害が原因となる二次障害で生活がままならなくなり、高校を自主退学し、わりと長く精神科を受診し、服薬もしてきた手帳持ちなのだけれど、普段はあまりそれがわかりにくい。初対面の人には礼儀正しく映るだろうし、頼もしくも感じるだろう。知的能力が高いようで、ふらーっと県内最高峰くらいの高校に合格してしまったし、まったく勉強しなくても共通テストで国立大のボーダーを超えていたから、理解力も高く、知的な会話もできるものだから驚かれるくらいだ。 ただ、土台がない。問題集にある「発展問

          今まで黙っていてごめんね…

          参考文献になりたい

          「何者にもなれなかった自分を認める」という段階について語られることがある。 それは、夢を見られる子ども時代を送ったという証拠でもあり、とても贅沢なことだと今は思う。 でもかつての私はもっと傲慢で、向こう見ずで、自分の努力でなんとかならないことなどないとすら思いかけていたので、なりたいものになれると思っていた。 その、なりたいものを諦めたきっかけが、妊娠だった。 『虎に翼』で妊娠した寅子が、仕事を辞めねばならないのかと逡巡し、恩師に母体としての務めを説かれ、「私の話をしている

          参考文献になりたい

          あなたを愛し、わたしを愛することが両立しなかった

          かつて元夫と暮らしていたとき、というか私が気付かなかっただけで付き合い始めたときから、元夫は「やめて」が通じない人だった。 「こっちのほうがいいと思うよ」とか「心配だから」とか「それでいいの?」といった真綿で首を絞めるような否定から始まって、「良かれと思って」とか「遠慮するな」とかに達し、気がつけば「反対ばかりして!」とかよくわからない主張をして私の意見をつっぱね、そのうえから踏みつけ、私が私の意思を持って意見する、それが元夫と一致しないということに激昂し、私が自由に意見する

          あなたを愛し、わたしを愛することが両立しなかった

          わてほんまによぅいわんわ

          しんどい。 多分、母がしんどいのだと思う。 私を知っている人たちは想像ができないかもしれないけれど、私の母(正確には養母)は、びっくりするほど世間知らずだ。 先日も父の確定申告をしてもらうべく税理士さんと打ち合わせをしていたが「扶養者控除」を知らなかった。 70年生きてきて、ずっと専業主婦でもなく、正社員だったり正規公務員だったりしたことがあるのだが、知らない。父が税務課職員歴の長かった人なのですべて担っていたということもあるけれど、それにしたって「夫の扶養に入っている」と

          わてほんまによぅいわんわ

          誰かに言葉を届けたい

          BS NHKのドラマ『舟を編む 〜私、辞書つくります〜』を観終えた。 そのタイトルの前半にあるとおり、三浦しをん著『舟を編む』の映像化作品だ。 何度目か、の。 私が観た限りで映画、ドラマ、アニメと手法を変えて映像化していて、それぞれに違った視点や表現があって、それぞれが良い。 もちろん原作の素晴らしさあってだし。 ただ、それぞれが良いがために今回のドラマ化を知ったとき、つい「またやるの?」とも思った。 良さを出し尽くしたのではないのか、そんな思いがあったのだと思う。 放送

          誰かに言葉を届けたい

          父の最強ジンクス

          「お父さんが好きだったものを置いてあげたりしてくださいね」 そう、葬儀会社の人(といっても近所の花屋の社長だが)に祭壇を設置してもらうときに言われたが、私達は「はて…?」と父の好きなものがとんと浮かばず、葬儀会社の人(父のことも知っていた近所の花屋の社長)が遺影に「なんかいわれとるよー!」と告げ口をしたくらい、父は娯楽のイメージのない人だった。 公務員を勤め上げ、地域の役員やらお寺の世話役やらを歴任したものの、長という立場には絶対にならず、家族にはいつも何をしているのかわか

          父の最強ジンクス

          翼はまた生える

          こんなにも、しんどい朝ドラがあるのか… 今季の朝ドラ『虎に翼』。 初回放送を大学4年生になり就職に悩む娘と観ていた時には「私が産まれる時代が同じだったら、同じような道を辿っていたかもしれないねぇ」と感じ、娘も同感だったようで「おかあちゃんみたいな人…」と言っていた。 なのに、話数が進めば進むほど、そのリアリティが息苦しくなってきた。 「なんでだ?なんでなんだ?」 「はて?」 主人公が疑問に感じることはすべて私がかつて感じたことだし、今もくすぶっているもの。 「女の子なんだ

          翼はまた生える

          お金で解決する父の愛は確かに愛だった

          長文の上、近親者の死を取り扱っています。 お辛い気持ちになる可能性もあります。 父が死んだ。 2~3日、咳をしていて、年度末の公務員である私や一応受験生の息子のためか、食事を一緒に摂らなくなっていた。ので、ほとんど父の状態を見ていなくて、唯一あれ?と思ったのが玄関の戸締りをして帰ってきたと思ったら突然床に座り込んだとき。 けれどその時は視線の先に猫がいたので(ああ、猫に嫌われてはいるけれど猫をかまいたいのだな)と思っていた。 その翌日の夜中、呼びかけに反応が薄くなってい

          お金で解決する父の愛は確かに愛だった

          桜はそれぞれに咲く

          息子の受験が終わった。 4年前、私の住んでいる地域の「中学校では常に学年トップでした」とか「週6で塾行ってます」とかの猛者が通う県下トップクラスの進学校に合格してしまった息子。 もちろん息子自身はそんなタイプでもなく、勉強している姿を見たこともなく、中学校での勉強を「何の意義があるのだ」と舐めてかかっていたため(そしてすべてを理解しているがために教師も注意できず)私の住んでいる地域の県立高校受験はほぼ内申点で決まるというのに内申点が著しく低かったので、ほぼ満点の当日点をとっ

          桜はそれぞれに咲く