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通勤経路にあるのに辿り着けない海の街
数年ほど、夏の間が繁忙期となる人と一緒にいたせいか、元来の人混み嫌いも手伝って、夏らしい光景というのを観ることもなかった。
一人で出かけるには、あまりに暑さが暴力的なので。
ここ数ヶ月は一緒に過ごす相手がわりと土日をきちんと休む人なので「夏休みが来る前に海に行こう」と意見が一致し、かといって暑さが苦手な四十代2人なので、海辺のカフェなどをハシゴしたり、海辺の温泉で足湯を楽しむことにした。
エアコンという名の文明が効いた室内から眺める砂浜というのは、実に大人に適している。
走り回るお子様たちや、水着姿の彼女に対してドギマギが隠せない男性や、どう見たって君たちは海に入るつもりでここに来てないでしょう?という普段着で海に飛び込んでいく若い男性グループなどを観察しながら、お互いの仕事の愚痴やこれからやりたいことなんかを話し合う。
向かい合って話しにくいことも、横並びだと話しやすいのが人間というものだから、過去のあれこれなんかも話し込み、私のこじらせ具合なんかも素直に伝えたり、相手の過去の恋愛話なんかも聞いたりしながら、クリームソーダの山を崩していた。
これから先の人生を、友人たちには助けてもらいながらもパートナー的な存在を得ないで行きていくと決めたわけではないけれど、そうなるのだろうなぁ、少なくとも二度とハンコは押したくねぇぞと思っている私には、こんな夏の土曜日の午後があってもよいのだということに、ただただ驚いたり新鮮なきもちになったりする。
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