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#眠れない夜に

詩17「ケチャップ」

詩17「ケチャップ」

引き金を間違って引いたそれはケチャップ
尊厳とかは瞬時に失せる
残響もいずれ消える
映画的スローモーションにもならないで
容赦なく瞬間的に彼女は失われた

父の骨眠るみずうみまで4時間の旅行
列車からは鹿の群れが見える
彼女の服を散らかしてきてしまったな
用途のわからない服がたくさんあった
カルデラのみずうみ死ぬならそこと決めてあった
地球が丸かろうと平らだろうと山は山
肺が木槌で何度も殴られる感

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詩16「螺旋」

詩16「螺旋」

螺旋
松の種落ちる
マツポックリの隙間から
くるくる着地
誰もいない森

螺旋
あなたを追う階段
逃亡したのは王子様
逃げるならいらないけど
カエルの王子は欲しい

螺旋
うまく巻けなかった髪
雨水伝って落ちる
南国の鳥の鮮やかな尾
夜の動物園揺れるストレス

螺旋
子供の握るタニシ
雨を喜ぶカタツムリ
サザエよりかは
醤油垂らしたツブ貝

螺旋
体の中の二重螺旋
犯行現場に残した血が
気がかり

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詩15「崑崙」

詩15「崑崙」

意地悪な猿が桃を投げる
食べられない硬い桃だ
あたしは炎の矢で木ごと焼く
散り際の猿の吐息が甘くって
顔を逸らす
紫陽花は返り血を
優しく拭ってくれるから好き
砂糖の入ったコーラは
糖尿患者には垂涎の的
ぬるいノンシュガーほど惨めなことはない
今日は双極性の躁の患者が歌い踊る日
鬱のカーテンはあまりに厚い
血を細く垂らした川には精霊流し
多重人格の人たちが上流から流す
喧嘩もなく花が撒かれる
脈絡

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詩10「アリス」

詩10「アリス」

知らずのうちに落っこちた
アリスはもういないらしい
言葉たらずなあなただから
イートミー食べすぎている
赤の女王の振動が伝わって
物語は終わろうとしている
次の女王はアリスになった
穴はがちゃがちゃ変容して
僕のための穴となるだろう
僕はといえば身支度をして
タイを身につけお呼ばれに
うまくやるさ帽子売りとも
うさぎはケージに押し込み
兵士の剣を拝借しておいた
きらり光が王宮から見えて
女王アリス

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詩9「日曜の朝」

詩9「日曜の朝」

安全剃刀の音
朝から響いて
洗面台の角に
当てる音する
私は二度寝の
クマに襲われ
抱き合い布団
絡れこんでる
掛けっぱなし
レコードの針
見放して浮き
スイッチの緑
付きっぱなし
バッテリーの
ない掃除機が
すうすう言う
炭酸水を飲む
牛乳を温める
コーヒー淹れ
怖いものない
最強目玉焼き
日曜の朝方は
わたしたちの
勝ちで終わる

詩8「診察室」

詩8「診察室」

よあけまで起きていようか
このまま
眠れないときは
わるい事した数かぞえると言ったら先生は
僕の方がはるかに多いと仰った
診察室のドアを閉めて
先生のしたわるい事を思った
窓から見た花壇には
赤と黄色の鶏頭が咲いている

何度も読みかえさずに
わざと乱雑に封筒に入れた便箋
一枚一枚廊下に落ちて
白く光っている
踏み分けて
いえ踏まないように歩く
そんなふうにして眠りが降りるのを待つ
神様がいくつか

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詩5「引っ越し」

詩5「引っ越し」

2月生まれ占いは絶好調
予定が全てうまくいく
君に会うことをかっことじで
全部保留にしている
顔を上げると赤信号で
占いは到底当たると思えない
目の奥がたまに痛んで
僕を小さくする

住んでいた
古いアパートが解体されるので
毎週写真を撮りに通った
5週間で更地になったそこには
居場所を無くした幽霊が2、3人
物憂げに佇んでいる
新しい建物が建つのは早かった
僕はよそへと越した

越した家は角部屋

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詩4「カラスウリ」

詩4「カラスウリ」

何度か浮かぶ、何度か浮かんで怒られる。沈みかける。
背泳ぎは得意なほうだった。コーチは男子の背中に、もみじと言って、ビンタを張って跡をつける。笑う。その手がわたしの首を掴んで浮かせる。男の人の手、いや。水着になるの、いや。更衣室の床が濡れているの、いや。みんなでサウナ室に何分も入れられるの本当にいや。
綺麗な水のことを考える。
少し甘い白樺の樹液。
山奥の水源。
つららからしたたる。
前世は烏瓜を

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