マガジンのカバー画像

29
書いた詩をまとめてます。
運営しているクリエイター

2022年6月の記事一覧

詩21「愛に至る」

詩21「愛に至る」

もっとも華麗に螺子を外して
思考の飛躍をせねばならない
ワルツもタンゴも一緒くたに
地下の劇場借り切って踊るの
もっと髪を振り乱して言葉を
空から受けなければならない
私もう壊れているのであれば
思考の飛躍をせねばならない
もしも書きたい詩あるのなら
車のボンネットで踊れ夜中に
星座をかき回して未来を食え
棒付きの飴光らせて雨の中を
破れた傘で今日も歩いて行く
水の漏れる頭でゆらゆら震え
紙と万年

もっとみる
詩20「暑くて」

詩20「暑くて」

昨日は雷だったから
ビニルハウスが幾つか燃えた
焼けたみかん
誰も知らない女の遺体
そこで産まれたかのように
本当に誰も知らない
虹が消える頃
みんなは忘れた
暑くて

はつなつ晴れか雨かのどっちか
繰り返し繰り返しの
ベルトコンベアーの日々よ
輪廻転生飛び降りて
タクシーで家に帰りたい
おいしいパンケーキを作って暮らしたい
願い事を叶えて
生きられる気がしないの
暑くて

君の悲しみが
ぼく由来

もっとみる
詩19「ある患者」

詩19「ある患者」

沼の中に唐突に落ちる
もしくは目が覚めたらもう沼の中
が双極性障害の鬱だと思う
新しく買った赤いナイフを
どこかの庭のクレマチスの蔓を
羨ましく眺めたら希死念慮である
死にたいと口に出したら心配されるので
ちにたい、の「ち」を、ち、ち、ちと呟いている
(それも心配)
主治医に報告する自分も主治医のセリフも見えている
「先生また調子が良くなくてえ、ちょっと死にたくてえ」
「そうかい今年はずっと良かっ

もっとみる
詩18「こもりうた」

詩18「こもりうた」

汗をかいたオレンジ絞って昔の話をした
ワインとクラッカー割れた鏡
朧げな記憶が心地よくて
そのまま眠りそうになる
全て肯定するよ君の話を
砂の中の都の大冒険も
君の天使が磔刑にあった話も
全てが心地よい子守唄
痩せたロバがいななくまで
続けてくれ酒はあるから
おじいさんが乗ってたプロペラ機は
藤の色だったと聞く
真偽はいいんだ残ってないし
君を乗せる夢を見ていいだろう
なんて幸せな夜
私は幸せな亡

もっとみる
詩17「ケチャップ」

詩17「ケチャップ」

引き金を間違って引いたそれはケチャップ
尊厳とかは瞬時に失せる
残響もいずれ消える
映画的スローモーションにもならないで
容赦なく瞬間的に彼女は失われた

父の骨眠るみずうみまで4時間の旅行
列車からは鹿の群れが見える
彼女の服を散らかしてきてしまったな
用途のわからない服がたくさんあった
カルデラのみずうみ死ぬならそこと決めてあった
地球が丸かろうと平らだろうと山は山
肺が木槌で何度も殴られる感

もっとみる
詩16「螺旋」

詩16「螺旋」

螺旋
松の種落ちる
マツポックリの隙間から
くるくる着地
誰もいない森

螺旋
あなたを追う階段
逃亡したのは王子様
逃げるならいらないけど
カエルの王子は欲しい

螺旋
うまく巻けなかった髪
雨水伝って落ちる
南国の鳥の鮮やかな尾
夜の動物園揺れるストレス

螺旋
子供の握るタニシ
雨を喜ぶカタツムリ
サザエよりかは
醤油垂らしたツブ貝

螺旋
体の中の二重螺旋
犯行現場に残した血が
気がかり

もっとみる
詩15「崑崙」

詩15「崑崙」

意地悪な猿が桃を投げる
食べられない硬い桃だ
あたしは炎の矢で木ごと焼く
散り際の猿の吐息が甘くって
顔を逸らす
紫陽花は返り血を
優しく拭ってくれるから好き
砂糖の入ったコーラは
糖尿患者には垂涎の的
ぬるいノンシュガーほど惨めなことはない
今日は双極性の躁の患者が歌い踊る日
鬱のカーテンはあまりに厚い
血を細く垂らした川には精霊流し
多重人格の人たちが上流から流す
喧嘩もなく花が撒かれる
脈絡

もっとみる
詩14「たやすい」

詩14「たやすい」

苺を摘む
甘い木苺
団地の隅
秘密基地
戦争来て
困ったら
逃げるの
ここまで
妹と二人
すぐ泣く
暴れても
妹は守る
柔い肌を
私は守る

苺を摘む
母に土産
たくさん
赤い色が
綺麗だよ
煮詰めて
ジャムに
しましょ
瓶を煮沸
火傷して
跡になり
慣れてる
あなたに
もらう跡

たやすく
傷だらけ
死なない
生きたい
あなたと
会うまで

詩13「カサブランカ」

詩13「カサブランカ」

雑然とした庭だった
百合が雑草のように咲いていた
ある日通ると百合の首は全部持ち去られてた
首を無くした百合の茎は真っ直ぐ伸びていた
その家にはおばあさんが一人住んでいた
夜中おばあさんがぱちんぱちんと切り落としたのか
花泥棒が楽しむには花だけすぎる
それからすぐ家は更地になった
布団の周りに百合を撒いて
その中で眠るおばあさんを思った
それは復讐のようだ
カサブランカを女王のように従えて

死に

もっとみる
詩12「ビー玉を投げる」

詩12「ビー玉を投げる」

黒い海にビー玉を落としてかさを増す
何にもならないのメタファー
でも一日はそうして積もってく
海の底では低音のギター聴こえて
もう動けなくなりそうだけど
ギタリストの指が魅力的だから
魅入られる前に浮上する
工業地帯の真ん中に顔を出し
クルーズ船をやり過ごし
私だけの工場を見る
炎と煙の城は夜も生きている
退屈すぎる夜はアオサギについて歩く
わたしの焼けた城を見た鳥は一人
かつて女王だったわたし

もっとみる