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詩19「ある患者」

沼の中に唐突に落ちる
もしくは目が覚めたらもう沼の中
が双極性障害の鬱だと思う
新しく買った赤いナイフを
どこかの庭のクレマチスの蔓を
羨ましく眺めたら希死念慮である
死にたいと口に出したら心配されるので
ちにたい、の「ち」を、ち、ち、ちと呟いている
(それも心配)
主治医に報告する自分も主治医のセリフも見えている
「先生また調子が良くなくてえ、ちょっと死にたくてえ」
「そうかい今年はずっと良かったのにねえ、
まあ季節の変わり目だから、お薬いつも通りでいいね?」
変わり目なんかどうでもいいんだよ
今、死にたいんだよ
わあと待合室で暴れてもいいが
隔離病棟の部屋に空きがあることを知っているので耐える
診察直後に死にたくなるなんで惨めな気持ち
とぽとぽと河童の足ひれみたいに沼に帰る市電に乗る
詩歌のことを考えてまた死にたくなる
つまらないこと書き散らかしてすいません
よっぽど自己紹介はこれでいい

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