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2022年4月の記事一覧

詩7「ふるえる」

詩7「ふるえる」

そこで震えているものよ
邪悪な猛禽類の目を見たのか
家族が遠くに行ったのか
新聞を細かく読んでしまったのか
魂がぶるぶると線香花火の最後のよう

フクロウはウサギを見つけて去ったし
天国は今はいっぱいで
お前の探す家族はいないだろう
新聞は焚き付けにするものだし
お前の寿命を延ばすだろう

神の作りたもうた精巧な蜘蛛のデザイン
巣にかかった水滴の数珠
それら全てはお前のためのもの
旅に出るのに必要

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詩6「300円」

詩6「300円」

衝動的に出るママを
あなたの名前で誤魔化して
でも死にそうな時はママと言ってしまう

ママなんてどこにもいないのに

母だけがいる
ママと呼んだことはない
そんな甘い呼び方は

白いカーネーションが売っていたから欲しがったら
花屋のおばさんに言われた
あなたのお母さんは亡くなってるの?

驚いて何も言えなかった
お母さんを殺してしまった
300円握りしめたこぶしで

それ以来白いカーネーションは見

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詩5「引っ越し」

詩5「引っ越し」

2月生まれ占いは絶好調
予定が全てうまくいく
君に会うことをかっことじで
全部保留にしている
顔を上げると赤信号で
占いは到底当たると思えない
目の奥がたまに痛んで
僕を小さくする

住んでいた
古いアパートが解体されるので
毎週写真を撮りに通った
5週間で更地になったそこには
居場所を無くした幽霊が2、3人
物憂げに佇んでいる
新しい建物が建つのは早かった
僕はよそへと越した

越した家は角部屋

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詩4「カラスウリ」

詩4「カラスウリ」

何度か浮かぶ、何度か浮かんで怒られる。沈みかける。
背泳ぎは得意なほうだった。コーチは男子の背中に、もみじと言って、ビンタを張って跡をつける。笑う。その手がわたしの首を掴んで浮かせる。男の人の手、いや。水着になるの、いや。更衣室の床が濡れているの、いや。みんなでサウナ室に何分も入れられるの本当にいや。
綺麗な水のことを考える。
少し甘い白樺の樹液。
山奥の水源。
つららからしたたる。
前世は烏瓜を

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詩3「よあけまえ」

詩3「よあけまえ」

喉にナッツのカケラが詰まって咳き込んだ
君が寝ているのに構わずに
東京の月島のワンルーム
川の匂いとソースの匂いのする中間
流行りのモツ屋の行列で取っ組み合いの喧嘩を見た
ドラマのように川沿いを歩く二人を見た
小型犬を抱いたサングラスの芸能人を見た
ボラを釣る人達はたくさんいた
僕は小さい箱の中で寝転んで住人の騒音を聞いている

君が小さい箱の中に切り取った求人票を隠しているのを知っている
まるで

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