見出し画像

M-1グランプリ2020 マヂカルラブリーの優勝はなぜ賛否が分かれるのか? 〜一お笑いファンの勝手な考察〜

M-1グランプリ2020は、マヂカルラブリーが優勝した。
一個人としては、手を叩いて笑うほどめちゃくちゃ面白くて、優勝おめでとうございます!と思っている。

しかし、世間の声を見ると、あれは漫才なのか?2019とレベルが違う、という声がちらほら挙がる。
いろんな意見があるが、今日の朝にアップされたかまいたちのお二人のYoutubeを見て結構しっくりきたので、それに追随する形で私見を述べたい。

動画の中で、山内さんは「(世間一般の知名度のない中、)いきなりマヂカルラブリーがこのネタをしたらこんなにウケてたかは分かんない」と話している。

というのも、2017年、マヂカルラブリーは「野田ミュージカル」のネタで最下位に終わり、審査員からは「これは漫才なのか?」と評価された。まさに、今の状況とちょっと似ている。審査員の上沼恵美子さんの評価に対し、野田さんは興奮のあまり(?)脱いで、それを怒られる、という一件で、いろんな意味で衝撃的なインパクトを残した。
その時は今ほどの知名度もなく、「えみちゃん怒られ枠芸人だ」みたいな印象だったと思う。

それから2018、2019共にマヂカルラブリーは準決勝まで駒を進める。

2019の敗者復活戦会場と決勝会場の中継。
話を振られた野田さんは「えみちゃん待っててねー!」と2017の一件を思い出させるようなセリフを発する。冬の風物詩にもなったこの一言で会場は大いに沸いた。
しかし、上沼さんから発せられたのは「誰?」というリアクション。
このリアクションに対し、あんなに衝撃的だった2017を覚えてないんかーい!と誰もがツッコミたくなり、また大きな笑いに包まれた。
ちなみに、その年の敗者復活は和牛が勝ち上がった。

そして2020年、野田さんはR-1ぐらんぷり優勝。
様々な番組に出演し、野田さんの独特な世界観キャラは徐々に定着していった。

...と、いうのをお笑い賞レースが好きで、毎年結構覚えてるくらいまで見るようなM-1ファンにとっては割と基礎知識みたいなストーリーがマヂラブにはある。

それを踏まえて見ると、マヂラブの優勝の一番の要因は、野田さんのキャラやストーリーの定着にあったと思う。
準決勝会見では「またあの舞台に立つかと思うと怖い」とコメントし、せりあがりの時点で土下座のような格好で出てくるんだから面白くないわけがない。つかみも「どうしても笑わせたい人がいます」。これで2017年の伏線を全て回収している。
もちろん、ボケや観客の笑い声に被らない、村上さんのツッコミの絶妙な間で「漫才」を成立させている。

単体でしか見たことない人からすると「漫才じゃない」と取れるかもしれないが、野田さんのキャラクターを知ってる人からすれば、あれはコントキャラではなく、あれが野田クリスタルという人なんだと分かって笑えるんだと思う。

「じゃあネタが正当に評価されていないじゃないか」、「人ありきじゃないか」という批判があるだろう。
奇しくも、漫才とはそういうもので、漫才師自身自体のキャラクターだからウケが成立する。
一方、コントはその逆で、演じたキャラクターの面白さがウケに繋がる。賞レースならKOC、普段なら有吉の壁を見てるとよく分かる。コント師である人そのもののキャラクターがウケるかどうかはその後のバラエティ出演によるものだと思う。

これに昨年・今年の大会を当てはまると、2019年王者のミルクボーイは当時無名で、漫才師自体のキャラクターがまっさらだったからこそウケ、
2020年王者のマヂラブは野田さんのキャラクターが知られていたからウケた、という全く真逆の構図が出来上がる。

もちろん、どっちもネタが面白いけれど、
キャラを踏まえずして面白いか、キャラが知られていて面白いかということが今回のM-1の評価が別れる大きな一因になったと思う。実際に審査員の票が割れたのも、そこをどう評価するか悩んだことにあるだろう。

「漫才の定義」は?とネット上では言われるが、それは正直人それぞれ異なるものになる。
ただ、M-1の審査基準は「とにかくおもしろい漫才」。
「漫才の定義」は何か?なんてことは問うてない。

「とにかくおもしろい」
それを今年掴みとったのは間違いなくマヂカルラブリーであった。