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奴隷商人(Ⅰ)

下記の私のnote記事で、この小説の補足事項みたいなものが書いてありますので、よろしければお読みください。

奴隷商人(Ⅰ)
紀元前の地中海・黒海のアーリア人奴隷貿易(Ⅰ)ー 奴隷貿易は欧州承認の黒人奴隷貿易の専売特許じゃないんだ。イスラム商人のやった白人奴隷貿易だって相当なものだよ。
紀元前の地中海・黒海のアーリア人奴隷貿易(Ⅱ)
紀元前の地中海・黒海のアーリア人奴隷貿易(Ⅲ)ー ローマ人の食事
奴隷商人(Ⅰ)下書き

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★ 第三期ポエニ戦争とそれに続く東地中海のヘレニズム国家との戦争

 紀元前三世紀半ばから始まった三期に渡るカルタゴとの決戦、いわゆるポエニ戦争とそれに続く東地中海のヘレニズム国家との戦争に勝ち抜いたローマは、地中海全域をほぼ手中に収めた。
 
 ローマ人は地中海のことを『我らが海(マーレ・ノストルム)』と呼ぶようになり、彼らの商業活動にとってなくてはならない海となる。しかしヘレニズム国家を倒し、あるいは力を削ぐことで東地中海の沿岸地域の治安が弱まり、海賊たちに活動の余地を与えてしまう皮肉な結果を生んだ
 
 紀元前100年頃から、小アジアで積極的に領土拡張を狙ったポントス王国の国王、ミトリダテス六世(紀元前132年~63年)が、ローマに対抗するため、地中海を跋扈していた海賊たちを積極的にバックアップした
 
 黒海の南部沿岸(アナトリア半島の付け根)を領有していたポントス王国は、キリキア(現トルコの地中海に面した南部)の西方を拠点とした海賊を後援し、交易船を狙う海賊行為が横行したのである。キリキア西方は、地中海と黒海を結ぶボスポラス海峡が位置し、地中海貿易の要衝である。ローマ人の商業活動にとって非常に重要な地域であった。共和国ローマは、海賊の跋扈と彼らを支援するポントス王国を見逃すわけにはいかない

★ ポンペイウス軍の海賊討伐

ポンペイウス軍の海賊討伐のエリア

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【第Ⅰエリア】ジブラルタル海峡からピレネー山脈までのスペインの海岸、担当副官:2名
【第Ⅱエリア】ガリアの海岸、担当副官:1名
【第Ⅲエリア】サルディニア、コルシカへの航路を含めたアフリカ海岸、担当副官:2名
【第Ⅳエリア】ティレニア海とアドリア海(イタリア半島からバルカン半島東部)、担当副官:2名
【第Ⅴエリア】シキリア、イオニア海とデロス島までのペロポネソス半島、担当副官:2名
【第Ⅵエリア】エウボイア島~マケドニアまでの海岸、担当副官:1名
【第Ⅶエリア】エーゲ海の島々と、ヘレスポントス(現ダーダネルス海峡)、担当副官:1人
【第Ⅷエリア】マルマラ海(ダーダネルス海峡からボスポラス海峡までの海域)、担当副官:1名
【第Ⅸエリア】小アジアの南岸とキュプロス、フォイニキア(東地中海岸)、担当副官:1名

 紀元前88年から三次にわたるミトリダテス戦争でポントス王国は敗北を喫した。紀元前63年にミトリダテスの息子ファルナケスがミトリダテスを自殺に追い込み、ローマに降伏したことでミトリダテス戦争は終結した。ローマ軍の司令官ポンペイウスはファルナケスを後継のポントス王(ファルナケス二世)に任命した。

 その後、ポンペイウスがカエサルとの内戦状態に突入した。ファルナケス二世は周辺地区への侵略を開始したが、ポンペイウスを破り、エジプトを押えたカエサル率いるローマ軍にファルナケスはゼラの戦い(紀元前47年)で敗北した。再度の敗北により、ポントス王国は共和制ローマの軍門に屈したキリキア西方に蟠踞していた海賊共もポントス王国崩壊で地中海に散り散りになった

★ 紀元前63年、海賊頭目、ピティオスとムラー

 第三次ミトリダテス戦争(紀元前75年~63年)の頃、ハリカルナッソス(現トルコのボドルム)近辺を拠点にしていたギリシャ系海賊頭目のピティオスもポンペイウスの軍団に蹴散らされた海賊の一人だ。ローマ軍に海賊村を焼かれ、家族・親族・手下共もほとんどローマ兵に殺された。
 
 命からがら、ピティオスは生き残った手下八名と小舟に乗って南へ逃走した。しかし、アナトリア半島の南岸もキプロス島も現在のシリア地中海沿岸もどこまで行ってもローマ支配下に変わりはない。何度もローマ軍に追いかけられて、最後に、命からがらベイルートの北の小さな漁港にたどり着いた。
 
 その小さな漁港は、フェニキア商人のムラーが支配していた地域であった。ムラーは漁港からその一帯の丘陵地帯までを領地としていた。領地の漁民から一報を受けたムラーは、手下にピティオス一味を捕らえさせた。
 
 ムラーは、漁港の倉庫で後ろ手に縛り上げられたピティオス一味と対面した。ピティオスはムラーに「もうこうなったら旦那、ローマに突き出して儂の首にかかった賞金をもらってくだされ。もう儂も逃げ回るのに疲れ切った。ただ儂の手下にはできるなら情けをかけてやってほしい」という。ムラーは「私はフェニキア人だ。ローマに義理立てする必要はない。おまえの首にかかったはした金の賞金をもらっても私に得はないさね。ピティオスよ、私の下で働くというなら、手下ともども、私の配下に加えてやってもいいのだぞ」とピティオスに言った。
 
「旦那、あんたの下で働くと言っても、儂らは所詮海賊だ。商人の真似はできない。しかも、儂の配下はいまや八人しかいない。船だってありゃしない。何をどう働けば良いんだね?」
「考えたんだがね、ピティオス、ここから北に五キロほど行ったところに小さな半島が有る。そこそこの入り江もある。半島の根本は断崖で囲まれていて、海からしか半島に近づけないのさ。入り江の奥には2アクタス(現在のエーカー、約4,000平米✕2)ほどの平地がある。そこにおまえらの拠点を築け。レバノン杉は私の領地に山程あるから造船をするに不足はない。最初に小さな船を作って、どこかからか女どもをかっさらってこい。それで子供を作れ。最初のうちは、私が資金援助をしてやろう」

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「それで旦那にはどんな得があるんですかい?」とピティオスが私に聞く。
「そうだな、ポントス王国はこうもポンペイウスに負けたら、領地支配もゆるむだろう。黒海東岸との交易と奴隷収集をお前に頼もうかと思っている」
「ああ、旦那、黒海東岸はコーカサスだ。特に、アディゲ人(チェルケス人)は金髪碧眼、ベッピン揃いだ。ベッピンを集めて旦那に献上しまさあ。高く売れますぜ。上物だとアウレウス金貨五十枚(現代の四百万円)ほどの価値はありまさあ」

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「私は奴隷売買にはあまり興味はないさね。たまに私のハレムに補充するベッピンを献上してくれればいい。残りはお前が売ればよろしいよ」
「それじゃあ、儂らに賭けて、旦那はどう儲けるんですかい?」

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★ ムラーのピティオスへの依頼

「コーカサスのカフカス地方でな、カラハナソウ(唐花草、ホップ)というつる科の草がある。その雌花を農民に作らせてここに運んでほしいのだ。それから大麦も。おまえら海賊は、交易船を襲って手っ取り早く儲けようとするからローマに目をつけられるんだ。交易と奴隷収集をしていればローマに目をつけられることはない。私がベイルートのローマの護民官に言って、交易のライセンスを取得してやろう。そうすれば、ローマの正規の交易船だと旗も立てられる。まあ、まずは、船を作って、アディゲ人(チェルケス人)の女でもさらってこい。それで、おまえらの一族を増やすんだよ。そうすれば、半島で隠れ住むこともなくなるさ」

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「そのホップっていう草の雌花と大麦で何をなさるんで?」
「ビールを作るんだよ。エジプト産のビールはゲロみたいな味だからな。カフカス産の上物の大麦でビールを作る。ホップは、ビールを濾した後に加えて苦味と香りを加えるんだ。その製法をカフカスの商人から聞いて試してみたいと思っていたのだ。カフカス由来のビールができたらお前らにもふるまうぞ。もう、上物のワインは試作してある。ワインを蒸留した火酒(ブランディー)も研究中だ。大麦麦芽のビールのもろみからも火酒(ウイスキー)ができる。これを売れば、一瓶、デナリウス銀貨二枚(二千八百円)で売れるだろう。百本で銀貨二百枚、アウレウス金貨八枚(二十八万円)の売上げだ。交易船を襲ったり、奴隷商売をするよりも、ローマ法に則って、正規の商売で大儲けできるんだよ」

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「旦那、旦那は儂らと違って、気長な商売をなさるんだね?」
「お前らみたいに宵越しの銭は持たない、って生活じゃあ、一族は幸福になるまいよ。後は、私の執事どもと相談して、杉を手に入れて、工具を調達しろ。船を作り、女をさらってきて、一族を増やせ」

 これがムラーとピティオスの出会いであった。第三次ミトリダテス戦争末期(紀元前63年頃)のことだ。今を去ること十八年前である。

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★ 紀元前45年、ベリタス市街

 ベリタス(現在のベイルート)市街で商談を済ました私は、魚臭い港を通り、海岸線伝いに北へ伸びるローマ街道をゆるゆると歩いていく。お供には海賊のピティオスを連れて行った。

 古代からのフェニキアの都市国家のティルスとシドン、グブラ、ベリタスは今やローマ帝国の統治下にある。今から十九年前の紀元前64年、ローマによる侵攻から、フェニキア地方の統治はセレウコス朝シリアからローマに移った。
 
 ローマ帝国(正確には共和制ローマなのだが面倒なので呼び名はローマ帝国で統一しよう)の治世になって良いところは、ローマ軍団が街道整備をしてくれて、平坦でほぼ直線の道が整備されたことだ。軍団兵は、わざわざ内陸まで敷石に使う花崗岩を採取にいって、こぶしよりもかなりおおきな塊に砕いて敷き詰めていく。彼らはご丁寧にも表土から1.0~1.5メートルほど掘削し、粒径の異なる砂利、砂を敷設した後、接合面がぴったり合うように切った一辺70cm程度の大石を隙間なく敷き詰める。幅四メートルほどの車道の中央は高く弓形の排水勾配を設けて、車道内に雨水が浸透しないよう配慮した。だから、水はけがよく、車道に水たまりができることはない。

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 車道はローマ軍団の移動に使われる。軍団が移動しない時は馬車などの交通も許される。車道の左右は幅三メートルの歩道になっている。車道を歩道の間は雨水溝が切ってあり、車道の表面の水は雨水溝に流れる。自国の当地のためとは言え、半島だけではなく、この東のパレスチナまで街道網を整備してくれるなどありがたいことだ。
 
 街道だけではない。ベリタス(現在のベイルート)にはないが、円形劇場などの娯楽施設も整備してくれた。闘技場、大浴場、図書館、青果食肉市場が整備された。また、ローマの商人の扱う杉材(レバノン杉)、香水、宝石、ワイン、果物がローマに輸出されて景気も上々だった。我々商人を生業としているフェニキア人にとって、ローマ帝国の治世に文句はない。セレウコス朝シリアが出ていってありがたいくらいだ。
 
 大浴場横を通りかかる。乞食のフラミニウスがふらふらとこちらに寄ってきた。「ムラーの旦那、この哀れなフラミニウスにお恵みを」と俺に手を合わせる。「フラ、ワインの飲み過ぎで午前中から目が真っ赤のお前に憐憫の情は感じないよ。まあ、よかろう。ピティオス、青銅貨の五、六枚もあげてくれ」と私はピティオスを振り返ってフラミニウスの方に手を振った。
 
 ローマの通貨は、アウレウス(金貨)、デナリウス(銀貨)、セステルティウス(青銅貨)、デュポンディウス(青銅貨)、アス(銅貨)だ。二十一世紀と今のパンやワインや肉の価格で比較すると、デナリウス(銀貨)は、二十一世紀の15ドル、千六百円くらいなんだろうか?アウレウス(金貨)はデナリウス(銀貨)の二十五倍の価値だから、375ドル、四万円くらいの価値だろうか?

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「旦那様、フラに金をやっても、数分後にはワインに変わってるんですよ。ムダだと思うなあ」「ピティオス、まあ、そういうな。青銅貨がワインに変わって、それが他の何かに変わるんだ。物と金が回るってことは我々商人にとっていいことだよ」

 ピティオスは舌打ちしながら、胸元から金入れの革袋の巾着を取り出し、青銅貨を六枚、フラの差し出している両手に落とした。「ピティオス様、ありがとうございます。神様のご加護がありますように」「フラ、ワインばかり飲んでいないで、まともな食事も取るんだぞ。痩せてきているじゃないか?」「気をつけますよ、ピティオス様」と言いながら、フラの脚はもう酒屋の方に向いていた。

 大浴場を過ぎて、娼婦街に差し掛かった。店の前のベランダに娼婦共が腰巻きひとつで胸をさらけ出しながら涼んでいる。オカッパ頭のギリシャ系エジプト人娼婦、セム族の娼婦、エチオピアの漆黒の肌の娼婦、金髪碧眼のコーカサスの娼婦、色とりどりだ。

「ムラーの旦那、私達を無視して通り過ぎないでよ。旦那のハレムの女もいいだろうけどさ、たまには、味の変わったあたい達でも抱いちゃあどうかね?」と娼婦頭のエジプト女が色目を使う。「まあ、それもいいだろうが、ウチの女どもで俺は精一杯さね。おまえらにわけてやるほどの精力が余っちゃいない。小遣いをやるから勘弁してくれ」とピティオスに目配せする。ピティオスはエジプト女にデナリウス銀貨を数枚握らせた。「旦那、ありがたいことです。だけどね、銭よりも旦那の竿が私は欲しいんだよ」「今日のところは銭で勘弁だ」

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 娼館を通り過ぎると、アラビア風の作りのアーチ型の柱を連ねた大理石の建物が数棟続いて建っている。奴隷市場だ。「ピティオス、のぞいてみるかね?」「ええ、旦那、ベッピンの出物があるかもしれませんぜ。そうそう、農園に力の強い壮年の男の奴隷も必要ですぜ」

奴隷市場

★ 奴隷市場

 私たちは、アーチ型の門を通り、くねくね曲がる廊下を歩いた。奴隷商人のしもべたちが私たちにお辞儀をしては忙しげに通り過ぎていく。中庭の大広間に入った。

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 大広間は、中心に大理石のベンチの演台が設けられている。演台の上には、地中海世界の津々浦々から集められた男女の半裸の奴隷がポーズを付けて立っていた。その周りを、男女のバイヤーが集っている。体を触って筋肉を調べるもの、陰部に手を這わせるもの。商人はビジネスライクに奴隷を試しているが、一般のバイヤーは目的が夜伽にある。男も女もフェロモンを撒き散らして、奴隷に触れている。

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 アラサーの美しいエチオピア人のマダムが、金髪碧眼のアディゲ人(チェルケス人)の半袖で丈が膝上までしかないリネンのチュニックをまとったティーンであろう男子の奴隷の股間をまさぐっていた。根本から局部の硬度を試すためにすりあげているようで、その奴隷は羞恥と心地よさに複雑な表情を浮かべていた。入荷して間もないのだろう。こういう場面には慣れていなさそうだ。

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「なんだ、アフロダイテじゃないか?」とピティオスがマダムに声をかけた。
「あら、ピティオスの旦那。こんなところでお会いするとは恥ずかしい」と漆黒の肌のまだ色気が失せない美女のマダムが上目遣いにピティオスを見た。
「なんだ、おまえ、発情でもしているのか?この男の子が一物いちもつをおっ立てて身悶えしているじゃないか」
「いえね、夫がね、最近、若い女奴隷にばかり相手にして、私を相手にしてくれないんですよ。それで、文句を言ったら、『しょうがない、一人、買っておいで』って、アウレウス金貨を十枚くれたものですから、それでね、出物を選んでいるところなんですよ」
「アフロダイテ、目が潤んでるぞ。アラサーなのにもうエロババアの面をしている。よほど体が飢えているんだな」
「そうですよ、ピティオスの旦那、体が疼いて疼いて」
「しょうがねえなあ」
「あら?そちらの旦那様は、ムラー様じゃあありませんか?」
「なんだ、初見か?ムラーの旦那、こいつは、儂がアラビアから買ってきたアフロダイテでさあ。もう十年前になるかな?ここへ儂が連れてきた時は、清楚なエチオピアのお姫様だったのが、ワイン商人のムラビに売って、奴隷からなんと正妻にまでなっちまったんでさ。十年前は体を触られるのも恥ずかしがって嫌がったのに、今じゃあ、自分の息子の年みたいな奴隷の股間をまさぐって、目を血走らせてやがる」
「ムラーの旦那様、はじめまして。ムラビの妻のアフロダイテでございます。ピティオスの旦那にはお世話になりましてね。私に夜伽の術を教えてくれたのもピティオスの旦那なんですよ」
「あの頃はお前もピチピチだったからな」
「あらいやだ、旦那、女はおぼこのティーンよりも私みたいな年の方がいいんですよ。酸いも甘いも噛み分けてますからね」
「ふ~む、まあ、女も変わるものさね」

「あら!この子のぶつがちょうどいい具合になったわ。旦那様方、失礼して試してみますわね」とアフロダイテはチュニックから腕を抜くと、奴隷のチュニックをはいで、人目もはばからず、男の子の股間に顔をうずめた。

 そこここで、ひと目もはばからず、奴隷のお試しをしている光景が周囲に散見された。女のバイヤーは舐めたりさすったり。男のバイヤーは陰部に指を差し入れて締りを確かめていたり。
 
 古代ローマ時代のことだから、奴隷市場などこんなものだ。ちゃんと試さないと金を捨てることになる。女の子は、持ち主の子供を孕むのだから、良い持ち物をしていて、安産型が選ばれる。男の子は、たいがい、玉抜き竿ありで宦官にされて女主人の慰みになるのだ。
 
 奴隷の子だって、主人が認めれば解放奴隷になれた、ローマ市民となることもできた。アフロダイテもその口だ。奴隷身分のハーレムの女が、ムラビの配慮でローマ市民権を取得し、正妻にまで上り詰めたのだ。むろん、アフロダイテの夜伽だけではそうはならない。彼女にはムラビを助ける商才や金の出し入れを差配する算術の才能があったのだろう。
 
 私とピティオスは、大広間を一通り見た後、奴隷商人の番頭に目配せをした。大広間は一般人バイヤーの商売の場所だ。私たちは、その奥の個室を連ねたVIPルームに行くのだ。

 大広間では、アウレウス金貨を十枚程度の商いだが、VIPルームでは桁がひとつ以上跳ね上がる。下手をすると、ベイルート郊外のカントリーハウスが一軒買えてしまうほどの値段の奴隷だっているのだ。地中海世界の各地域から略奪されてきたお姫様や王子様も売買されている。

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