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ちいさな商店街の「   」

ちいさな商店街で今期も理事しますが実店舗は無く、
本職は「デジタルファーストなワンピース専門店」
くまさんです。

本日は、2020年5月2日。
未だ日々状況変化、各報道からフェイクニュースまでコロナ一色となり早2ヶ月以上。ちいさな商店街・ちいさなお店さん達に取ってまるでそして今、非常に経営判断の難しい局面に来ています。

現場(店主や理事)の反応、経営者の声や金融関係者との折衝、国内外の情報等より、「ちいさな商店街の今から」に想像力を働かせ、浅識ながらも出来る限りの具体案を示し、誰かへの示唆や発奮材料の欠片にでも成れればこれ幸いに、小規模商店街の持続可能性について親指を走らせます。(主に通勤途中のスマホ執筆なのです。)

1|ちいさな商店街の空白

三宮本通商店街では、時間帯別に加えいくつかのセグメントで来街者数を計測可能ですが、臨時休業店も増え、勿論の事ながら来街者数は減少しています。売上高は各店情報を得られないので不明ですが、その来街者数に推し量り、実売でそれを上回る事は有り得ない状況です。

現時点で三宮本通商店街では、哀しい事に54物件中の5店舗さんが退店となり、空白「   」を生んでしまいました。しかしこのタイミングですから、元々継続に悩み撤退を検討されていた方々です。コロナ禍の長期化を思えば、他に卸業や工場をされている方々は直ちに退店をご決断されるでしょう。当然、商店街の価値は低下しますが、当然、我が身の方が大切です。

しかし、収入源が「商店街で出店しているイチ店舗のみ」で尚且、他にインカムゲイン(家賃収入・配当等)もキャピタルゲイン(不動産・証券等)も無く、さらに毎月の返済負担がある方に取って今は、渡る先が見えない一本の綱を渡っている様な状態ですから、唯一の収入源を喪失させない為に躊躇無く頼みの綱を探さなければ成りません。そんな状態では微々たる助けかもしれませんが、組合としてせめてもの負担軽減にと、ここ2ヶ月分の「組合費免除」を施しました。

2|戻る・戻らない論

3月初旬ではまだ、商店さんらから「早く収束してほしいよね。」と言う言葉を一番多く耳にしていました。そしてその月末辺りからの、耳早い方々から発せられる「Beforeコロナ/Afterコロナ/Withコロナ/Postコロナ」と言う、もはや行動変容のトレンドワード

自分も「戻るか・戻らないか」のどちらかと聞かれれば「数年戻らない」と答えていましたが、「戻る・戻らない」の二元論では無く、直接的・間接的・将来的に自己に関与する(社会や経済の)カテゴリーの中で、「何が戻って・何が戻らないか」を想像し、「何を変えて・何を変えないか」を冷静に判断・行動していくべきです。余りに情報が多すぎて、脳内での整理整頓と判断が付けられない方が多いと思いますから、まずはその「散らかりを片して目の前に並べる」と言う訳です。

とは言え、店主さん・従業員さんが得る情報からの行動変容は日々更新中で、例えばレジ前のビニール設置や陳列食品の保護は既に常識化。従業員を休ませる or 解雇せざるを得ない事を迫られる店長。給付金・助成金申請のため産業振興センターに行列をなす経営者たち。大幅減益により手遅れなタイミングでEC化へと舵を切る大手企業。「IT/WEB関連なら安心」とばかりに、WEB専門職の求人に流れる求職者たち

ですが、EC/D2Cである弊社(平たく言うとネット販売のみ企業)も決して順風満帆な訳では無く、部門別での休業やテレワークの実施は勿論、随分と計画の変更を余儀なくされています。先程申し上げた「何を変えて・何を変えないか」ですが、自分たちのリソース(物的資源・人的資源・独自性等)を再確認し、陳腐化しつつある物は迷わず処分し、新たなツールの選定や人材の再育成・再配置等が必要です。しかし、企業理念やミッションに反する事は一切しない事です。どれだけ被害を被っても、慌てて自分を見失う事が一番の悪手ですから。

3|交わす・頼る・受け入れる

三宮本通商店街では普段より、WEBサイト用の更新情報を店舗側から頂くためにメッセンジャーツールを使用していましたので、その活用とプリント配布で「給付金」「助成金」「融資制度」等の情報をお知らせしたり、組合費免除等の負担軽減策を施しました。案やご意見を下さった方々、理事長や理事方々の迅速判断・行動によるもので、危機的状況の中で大切な3つの事に気付かされました。

それはまず、「交わすこと」です。
経営者はとかく孤独になりがちですが、せっかくの商店街という緩い繋がりがあるのですから、まずは共有しあうべきです。低迷に嘆く気持ちや、こんな時だからこそ得られた温かい人の気持ち等の悲喜こもごも、過去の震災を切り抜けた経験値、先程のお金に関する情報など何でも良い。近所のお店に足を運ぶなり、既に休業されていれば電話なりメッセンジャーなりで交わし合いましょう。孤独は何より良くない。

次に、「頼ること」を厭わない。
行政による給付金・助成金への申請は勿論、自分の生業に関連するSNSのグループ参加、飲食店ならデリバリーやお持ち帰り情報の集約サイト・アプリへの掲載等、頼みの綱は必ず有りますので、片っ端から手を付けるべきです。この際、恥を忍んで家主さんや他の経営者、家族・親戚に頼るのも致し方ないと思います。その場合は勿論、深い感謝・裏切らない・約束を破らない・必ず報いる…等の鉄則を忘れない事ですが、困った事に案外忘れる経営者は多いです。 頼られる側になる場合も気をつけましょう。

そして、「受け入れること」を意識して欲しい。
これは日々意識しておかないと難しいのですが、「変化」と「新しい物事」を受容する精神性です。それはデジタルへの耐性と言ってもいいかも知れません。「日々意識」と言いましたが、これは普段から習慣付けて置かないと、すっかり「現状維持バイアス」が強固になり、変化を受け入れる事が出来ず、自己の商売に関するサイトやアプリの習得どころかアカウント登録さえ、ZOOM飲み会のひとつさえも脳が拒絶してしまいます。いや、飲み会は別に良いんですが、せめてビデオ会議アプリぐらいは無理矢理にでも受け入れましょう。今後スタンダードの一つですから。

4|行政支援を使い尽くす

行政からの支援として、先程から何度か出ている「給付金・助成金」ですが、これらは職業によって使える制度が変わる場合もありますが、多くは広範囲で活用出来ます。ここで全てを羅列すると読みづらくなるので文末に「まとめリンク」を掲載しますが、非常時に置ける主な相談先は以下です。

■雇用調整助成金や推進支援等で「従業員を守る」なら厚労省。その相談窓口はハロワ。
■法人税・消費税等の「納税に猶予を求めるなら財務省。その相談窓口は税務署。
■売上減少理由での優遇措置がある「融資を受ける」なら経産省。その相談窓口は各金融機関・信用保証協会等。
■それらの「情報をまとめてくれている」のが中小企業庁
「地域独自の助成制度」は各都道府県/各市。各サイトご参照のこと。

…と言った様に、状況は変われどそれぞれ専門が変わることは無いので、普段からこの程度は覚えておくと救われる事があります。提出書類の理解や用意は確かに面倒ですが、同等額の純利益を残す事に較べれば容易い物です。

5|「本格的格差」への正攻法

次に、商店街内で多くを占める3種の職種別に、現状・今後起こりうる可能性を考え、必ず訪れる今以上の「本格的格差」への対抗手段・正攻法を考えてみます。

▼飲食店/ カフェ
多くの飲食店さんが「お持ち帰り」「デリバリー」「通信販売」を始め、登録無料を謳う「Uber Eats」や先発の「出前館」等の加盟店が急激に増加しました。「キッチンカー」も乱立しています。当然、急落した売上の補填が目的ではありますが、それらは儲けを度外視した価格帯の物も多く、他の目的として「お客さんに存在を覚えておいて貰う」と言う意味合いも含みます。

それは商売人として正しい原理原則ではあるのですが、少し前では「居酒屋ランチが当たり前」に、「ファミレスが簡易居酒屋」になった様に、多くの消費者は際限なく「安くて・美味くて・便利」を求めるので、「お持ち帰り」「デリバリー」「キッチンカー」等の流れは事後もスタンダードになる事を予測し、客単価を下げない戦略が必要になります。

三宮本通商店街のカフェ「UNICORN」さんは、店舗やサイト・SNS等も一貫してファッショナブルで、近くUberEatsも始められる積極的なお店です。

▼アパレル/雑貨店
すべからく、EC出店・SNS発信・クラウドワーカー活用を検討すべきです。まだまだEC化率の低い日本(全体で6.22%)ですが、アパレルは(ジャンルで11.54%)と倍近くを締め、増加率も比較的高い。

(難易度は高いですが)WEB上で価値を伝えやすく、サービスの差別化やブランディングもしやすい部類ですので、今回の件を切っ掛けに中国(全体で15%以上)・米国(全体で10%以上)のEC化率に近付き、消費者に取ってもリアルとWEBの境目が薄まる事でしょう。画像加工やコーディングなど、分からない部分は業者かクラウドワーカーに頼めば良いんです。

三宮本通商店街の雑貨とツーリズムのお店「Yui Livings」さんは、全てに置いて一貫性のあるライフスタイルを提案し、WEBへの積極性もクリエイティビティも非常に高いお店です。

▼美容院/コスメ
この業界に限った事では有りませんが、より顕著に売上・客単価の上下格差が拡がり、中間が限りなく薄い層になります。薄利多売店/高級路線店どちらに属するとしても、インフラでありつつ店舗の利益をも薄めているポータルサイトに頼らない施策が必要になります。

SNSや他の成果報酬型ポータルサイトの活用、お店のスタイルに合った決済・予約等の一元管理アプリの活用は必須ですが、それらは単なるツールでの集客力最大化/費用最小化の為に不可欠な手段に過ぎず、生き残る・抜きん出る為の基礎はやはり「その店でしか得られない体験」と、そのブランド力を伝える発信力に尽きます。そしてそれらはセカンドリーダー/後継者の育成にも大きく影響します。

三宮本通商店街の美容院「shiomi H」さんは、トップスタイリストでもある潮海代表・奥様ERIさんの求心力に加え、スタッフたちのチームワークや抜群の発信力により、高いリピート率を誇るお店です。

3つの職種それぞれに置ける三宮本通の名店を挙げさせて貰いましたが、この3店舗はいずれも経営ビジョンや社会的ミッションが明確で、頑ななまでの一貫性を保つ事でブランディングに成功しています。

しかし、それらが不明確なお店で生じてくる共通問題として、利益減少・手数料増・人材確保がありますが、これらを回避/解決させる為には、コストマネジメント・客単価維持・高齢者/外国人雇用などが必要になります。それぞれの説明はまた別のnoteにて解説していきたいと思いますが、先に挙げたビジョン・ミッション・ブランディングは、今後大手企業やスタートアップに限らずイチ店舗に置いても基礎中の基礎になると断言出来ます。

6|意図のある「穴埋め」

既に抜けられた店舗さん方々は気の毒に思いますが、その商店街の空白「   」であるシャッターをポジティブに埋める必要性が有ります。いつも通りにただ出店者を待つのでは無く、戦略的にこちら側から望む出店者にアプローチ、つまりは戦略的リーシングをしていくのです。

今現在、人通りの多い繁華街だとしても、一つ空き二つ空き…気付いた頃にはシャッター数が二桁を超え、手遅れなほど場の価値は下がり、計画性を持たず無闇に家賃を下げ、同時に店舗の質も下がり続け、果てはシャッター商店街か風俗街か…と言う悪夢を見かねません。

そこで、家主さん方々・不動産屋さん方々にお集まり頂き、「こう成りたい」と願う商店街のビジョンに適した出店者さんを、戦略的に誘致する計画です。無論、家主さん・不動産屋さんそれぞれの思惑が御座いますので、一度の話し合いで一筋縄にも一枚岩にも成る訳が無いので根気を要しますが、「招かれざる客を排し、望む客を呼び込む事の妥当性」を理解して頂ければ、無理な話では無いと思っています。

7|「好機」と捉えるか否か

これからはイチ商店さんにしろ商店街にしろ、先述のビジョン・ミッション・ブランディングを基礎とし、マーケティングをも意識しないといけない。その理由は明確で、「販路」も「管理」も「広告」も「顧客ターゲティング」も「マネジメント」も全てがよりデジタライズされ、全ての更新が加速し、それを受け入れるか否かで格差が生じるからです。コロナ禍はすこぶるネガティブな切っ掛けではありましたが、皮肉にも内閣府がのたまうSociety5.0社会には向かいやすくなりました。

三宮本通商店街での来街者計測や、これから行う「データ集計 ⇒ セグメンテーション ⇒ 施策」など、WEBでの当たり前がリアルでも当たり前になります。ZOOMはほんの始まりの一つに過ぎず、5GやAIでより加速します。

自分たちが今、
・市場のどの範囲に居て
・何が手持ちの資源で
・どこが強みで弱みで
・どこが競合で
・どう工夫して
・どう実行すれば
どの程度の利益を生み、顧客を喜ばせ、生涯顧客化が叶うのかを意識する事が、個人商店でも商店街でも可能に成り、そして一般化するでしょう。

大きな空白「   」は生まれてしまいましたが、「その穴を埋め元通りを目指す」も、「大きな変革期と捉え攻めに転ずる」も、或いは「辞める」も…店主さん、商店街運営者さんら次第です。「商店街にいる者は誰も死なせない」とは言えませんが、私は私の責務を全うします。個人的には、己の生業として「大手への下剋上の好機」、社会として「パラダイムシフトへの引き金」、商店街としては「新たな価値創造の再醒期」と考えています。

大袈裟な物言いですが、この不測の事態に打ち勝つ為に「商店街の価値基準」を拡大させるバタフライエフェクトの最初の一匹になるつもりで今後を計画しています。何はともあれ、まずは皆で生き残る術を。

この度の新型コロナウイルス感染症でお亡くなりになられた方々にご冥福と、ご遺族方々へのお悔やみを胸に思い、影響を受けられた皆様にお見舞いを申し上げる次第で、親指を置きます。(主に通勤途中のスマホ執筆にて。)

絵 と 文 と 写真:くまさん


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