旅の知られざる効用~ドイツからトルコへ~

オランダから始まり、ノルウェー、ドイツを旅してトルコ(留学先)へ帰国する日を迎えた今日。

心境としては……ちょっと憂鬱。だった。

この旅行記を始める前のnoteには、トルコで地震が起こって、留学生として通っていた大学のオンライン授業化が決定して、毎日何もせずに過ごしていて、罪悪感とやるせなさを感じている様子を書いていた。

元々ノルウェーにいる友達を訪ねる計画は立てていたから、これ幸いとばかりに旅の計画に全力を注いだ。

いつも旅行の前日はあまり眠れない。特に海外旅行の前は怖くなって、「なんでこんな計画立てたんだろうなあ」と思うところまでがセットだった。ましてや今回は一人旅が軸だから、本来なら「死ぬほど怖い」はずだった。

だけど今回は不思議と心が麻痺したように、何も感じずに出発した。楽しみも感じなかったけど、怖さやためらいも感じなかった。

なんでだろうと思ったとき、私はとにかくこの日常から逃げ出したかったのだと思った。とにかく逃げたい。自分の留学について全く考えずに過ごす時間が欲しい。だから心配や恐れは二の次で、自分がこの旅を楽しめるかどうかすら気にかけていなかった。


結果、様々なトラブルはあったけど、面白い経験を沢山したし、楽しかったし、感動したし、学びもあった。充実してたなあと思った。

だからこそ、あの日々に戻るのが結構怖い。またやるせなさと罪悪感を感じる日々に戻ることになると思うと。


飛行機に乗りながらいろいろと考えていると、機内食が運ばれてきた。"Tavuk yada makarna?"(チキンorパスタ?)と隣の席の人が聞かれている。

私の番が来て、”Tavuk"と答える。それで、隣の人は私がトルコ語を(少しだけ)理解しているとわかったのだろう。ニコッと微笑んで、食べる前に "Afiyet olsun" と言ってくれた。(日本語でいう「召し上がれ」の意。ただし、食後にも使うことが出来る)


この瞬間に、「トルコ」を一気に思い出した。そうそう、トルコってこんな感じ。

今回はそれだけじゃなかった。

イスタンブルから留学先まで帰るバスがどれなのか分からない。添乗員らしきおじさんに紙を見せると、ジェスチャーで「着いてきな」と。行った先には別の人がいて、その人が私の代わりに確認してくれている。そして再びジェスチャーで、「このバスじゃないみたい」と教えてくれる。言葉が分からない私に、である。

おじさんのおかげで正しいバスに乗れたが、私が買ったチケットが最後の一席だったらしく、知らない人と隣合わせに座ることになった。

乗車してしばらくすると、隣のおばさまがなにやらビニール袋をガサゴソしている…。すると、おばさまが急にお菓子を取り出し、私に渡してくれた。「これなんですか?」と聞くと「クッキーだよ」と。

その気持ちが嬉しかったので、つたないトルコ語で「おいしい!」と言う。するとおばさま、もう1つクッキーを取り出し渡してくれる。さらに、水(バス内で配られる)をもらうときは必ず私の分も取って渡してくれる。


なんか、忘れてたな。と思った。これがトルコの優しさだった。
もちろん、トルコだからと言って良い人ばかりいるわけではなく、理不尽なことも多いけど。でも、トルコの好きなところはどこ?と聞かれたら、圧倒的に「やさしい人が多い」なのだ。


友達から後日、「ヨーロッパを沢山旅行してたけど、どうだった?トルコと何か違いがあった?」と言われたときも、この体験を思い出していた。


「ヨーロッパの人たちもすごく優しかったけど、トルコの優しさとは少し違うような気がした。ヨーロッパは、こう…相手に失礼がないように接する優しさとか、個人を尊重する優しさで…。トルコは相手に見返りを求めないで、悪い言い方しちゃうとお節介な優しさ?  そんな感じかな」


「あと、私が行ったところが観光地だからということもあるけど、みんな英語が話せて当たり前の世界だった。だから、(これ私が英語話せなかったらどうなるんだろう)って不安があった。ちゃんとした(観光)客として扱ってもらえるのかな?みたいな。でもトルコでは、話せない人にも(もちろん不利益はあるけど)平等に優しくて、現に私は帰ってこれたし…」


旅行前はほぼ逃げ出すような形でトルコから出発した私が、旅行から帰ってくると180度違う視点を手に入れていた。

そんな自分にびっくりするとともに、「もしかしたらこれが、旅のもう一つの顔かも」と思うようになった。非日常を与えてくれるのが旅、そして日常を捉え直すきっかけにもなるのが旅。


今回の旅では、もしかしたらこの感情の変化が一番印象深かったかもしれない。全く予測していなかったからだ。

でもそのおかげで、それ以降は気分の浮き沈みはあっても、以前ほど自分がトルコに滞在する意味や罪悪感に悩むことは無くなった。旅って面白いなあと実感した瞬間である。生き方や考え方を変える可能性を持っているのだ。



今回の旅行記に付き合ってくださった皆様、ありがとうございました。

次からは再びトルコについて書いていきたいと思います!






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