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柚子皮の半生砂糖漬け

 実家の親が冬至になるといつもユズをよこしてくれるんだけど、毎年使いきれずに傷ませてて。いちどは柚子茶的なものもつくってみたけど、結局、好みにあわなかったのか未だに残ってる……あのビン、台所の片隅で、もう何年ホコリをかぶってるんだろう。思い出したくないぜ(-_-;)

 が、しかし。

 温州ミカンの果皮でつくった陳皮については体質に合うとわかったので、今年はユズでもチャレンジしてみることにしました。
 つまり、

 柚子皮の陳皮化(๑•̀ㅂ•́)و✧

 まー、ようするに、皮を剥いて千切りして干す、ってことなんだな。


 手順は以下。

 ① ユズの果皮を手で剥く
 ② 白いほうを上にしてザルで干す
 ③ 何日かして引き締まってきたら、ハサミで千切りにする
 ④ カラカラになるまで気長に干す

 以上、終わり。
 あと、当たり前すぎてかきわすれてたけど、まずは事前に洗うこと。


 ユズは手で果皮を剥くことを前提とした果物ではないので、剥くのにはやや手間がかかります。だけど、文旦とかはっさくの皮と比べたら、柔らかいし、はがれやすいし、断然楽勝。包丁を使う必要はありません。

 とはいえ。
 注意しないといけないのは、

 ゆずの房の薄皮って、
 めっちゃ脆い( ;∀;)

 のです。
 温州ミカンとちがって、ひと房ひと房もぎわけて食べることを前提としてない果物だから、目測をあやまると房の薄皮がすぐ破けちゃう。そして、房同士もさほどつよくはくっついてないので、すぐにバラける。その末路として、果汁が酢になり溢れる。

 指のささくれにしみるっちゃー( ;∀;)

 まともに酢がしみるわけだから、マジで泣きそう。そしてとにかく、この「薄皮を破らないように」と配慮するのがいちばんめんどくさいのです。だけど、飛び散った果皮の油と果汁のおかげで、作業後は手の肌は生まれたてのすべすべに……ちょっとした美容液顔負けの効果はあるので。その苦労は必ず報われるから、がんばれ!

 このしょっぱなの皮剥き作業、とうぜんながら温州ミカンの皮を剥くみたいにやすやすとはいきません。だから逆に、こたつでのんびり食べれるように改良された温州ミカンのありがたさが身にしみます。このユズの薄皮の脆さだって、半分に切ってブッシャーと潰して酢を絞りやすい方向に選別されてきた結果であろうことがしのばれて、なかなかゆかしくもあります。
 ところで、 一升瓶いっぱいの柚子酢を絞るために、いくつ柚子玉をブッシャーしなきゃいけないことか……手絞りは全身の体重をかけてやるから、けっこーな重労働なんだぜ( •̀ㅁ•́;)。軽く絞ると「ちゃんと絞りきらんともったいない!」とおばあちゃんに叱られ、ぎっちり力を入れて絞ると「皮の油が出て苦くなる!」とお母ちゃまに叱られる。柚子絞りは楽しいんだけど、何をやって叱られる、子どもとしてはなんだか割に合わないお手伝いだったのでした(ー_ー;)


 さて。

 勇気があるひとは、このときユズをひと房、口にいれてみましょう。わたしゃ、やりましたね。とにかくなんでもかんでも興味津々だから。

 で。

 意外と甘いじゃん!(≧∀≦)

 ていうか、柚子酢を直線舐めるほどは酸っぱくは感じられませんでした。あと、薄皮の苦味とかかすかな甘さとかが混入するので、いく分かは酸っぱさが緩和されるみたいです。

 しかーし。さらなる驚きはこのあと来ます。

 なんとなーく、
 体があったかくなってきたかも
 (о´∀`о)

 そうなのです。体のまんなかあたりがぽかぽかしてきたのです……お風呂みたいに。このあとも何度か食べてみたけど、速攻で効き目が出ます。ほかの柑橘では感じられない、ユズ独特の効果です。で、このぽかぽか自体はさほどながくはもちませんが、半日くらいは冷えを緩和してくれてるみたいです。
 ちなみに、直接酢を口にしてもこうはならないので、房の薄皮にだけ備わってる効果なのかもしれません。

 とゆーことで、ユズの果実については、ひと房ずつバラしてジッパー付きの保存袋で冷凍保存しました。多少潰しながら平らにならして冷凍し、固まったところを一口大に砕いて保管してます。
 いまのところ、食べたいぶんだけ小皿にとって室温で半解凍したり、熱い紅茶にさっとくぐらせて溶かしたり、いろいろ試してみてるところです(あまり加熱しないほうが温熱効果が出るような気がしている)。もし夏まで残ってたら、サイダーに浮かべるのはもちろん、刻んでキュウリの塩揉みに混ぜたりして調味料としても使ってみたいんだけど……どうなることやら。

 あ、そうそう。
 硬めのシャリシャリの状態で食べると、うっかり間違えて種を噛み割ってしまうという事故が起こりやすいです(^_^;)。気をつけてくださいね。


 では、話を果皮にもどして。

 ザルや新聞紙など、適当なものの上に並べて乾燥させます。今回は白い面の水分をとばしたかったので、そちらを上にしました。

 プラスチックの種類によっては柑橘類の皮の油で溶けることがあるようです。
 プラスチック製のザルを用いる場合は、皮と直接接しないよう気をつけてくださいね( ´ ▽ ` )ノ

 陳皮化するためには、これをさらに細長く千切りにしないといけないのですが……私の場合は、果皮の油が飛び散って無駄になるのがイヤなので、いったん干して、表面をかるく固めてから千切りにすることにしました。温州ミカンの場合でもそうなのですが、皮が柔すぎるともろもろとくずれてしまい、ゴミになったり作業が手間取ったりする、というのもあります。
 当然ながら、カピカピにまでしてしまうと刃が通らなくなるので、そのへんは様子を見ながら加減します。


・◇・◇・◇・


 ということで。
 数日後……干しはじめて2日くらいしてからだったかな?

 いい感じに表面が固まったみたいなので、キッチンばさみで千切りしました。
 で、切りながら。

 これ、じかに食ったら美味そう……ワクワク((o(´∀`)o))ワクワク

 と感じたので試食。

 意外と苦くないッス!(≧∀≦)b

 じゃあこれ、グラニュー糖をばらばらふりかけて食ったら、ますます美味いんじゃないか、と考察したので、即やっちゃった(*ノω・*)

 ① ドンブリをかまえて、そのなかで果皮の千切りとグラニュー糖を混ぜる
 ② なじんできたら、おもむろに砂糖を追加
 ③ 雪をかぶった枯れ草の原みたいなイメージで、上から砂糖をかける、を何回かくりかえす

 かけて直ぐも美味しかったけど、しばらく置いて、雪が溶けかけてザラメ状になってるみたいなのはさらに美味しかった(*´∀`*)
 最近は甘いものを敬遠しているうちの子が何回もおかわりしてたくらいだから、よっぽど美味しかったみたいです。

 ユズの果皮は厚みがある分、水分も多いです。グラニュー糖の浸透圧で水分を滲み出させ、滲んだ水分で砂糖をまぶしつけ、オレンジピールみたいな状態に近づけていく……みたいなイメージです。
 グラニュー糖は一気に大量にかけるとくっつかずにドンブリの底に落ちてしまうので、あせらずいそがず様子を見ながらすこしずつ。

 かける → かるく混ぜる → 滲む → くっつく → かける → かるく混ぜる → 滲む → くっつく……

 と作業のローテーションを3回ほど繰り返します。
 こんなふうにかくと面倒臭そうですが、実際は味見と称してつまみ食いし放題なので、めっちゃ楽しい(^o^)v

 あるていど水分が出てきたら、砂糖は混ぜ込まずに上からかぶせるだけにします。「③ 雪をかぶった枯れ草の原みたいなイメージ」というのはそのことを指しています。かぶせたものが果皮にくっついてきたら、箸等をつかってそっとつっつき、まださらさらとしてる砂糖を隙間から落とし、底のほうの果皮にくっつけます。
 こうすることで、果皮にくっつかずに残ってしまうグラニュー糖の量を最小限にすることができます。

 その日のうちに食べ切れない分は、瓶等に密閉して。底に余ったグラニュー糖は上からかけてもいいし、別に取り分けて柚子風味の砂糖として楽しんでもよし。保存性を高めるなら、さらに新たにグラニュー糖をどばっと追加するのもありです。
 そのへんは好みの甘さ、好みのシャリシャリ具合で決めちゃいましょう。


 これが、

 柚子皮の半生砂糖漬け

 です。
 その日のうち、数時間後には美味しく食べられます
 生そのものではなく、若干乾かしたものを、加熱せずに、その日のうちに食べる、ということで、半生、と名付けてます。
 ユズの果皮の酸味で、絶妙な味わいになってます。それはもう、市販の柚子ジャムや柚子ジュースはなくても大丈夫じゃないかと思うくらい。

 漬けたてのフレッシュなものは柔らかく、果皮により味にばらつきがあります。薄いものはそこそこ甘さがしみてますが、厚いものはまだで、酸味が強く出ます。柑橘類独特のスースーする感じも強いです。このスースーは好みが分かれそう。もしかしたら、ひとによってはヒリヒリに感じられるかもしれないので、ご注意を。
 とにかく、新雪をかぶったようなグラニュー糖のころものシャリシャリと酸味のバランスがたまりません。

 瓶詰めして翌日になると、底のほうはグラニュー糖が蜜になって、マーマレードのようになってます。が、上のほうは砂糖が残雪のように溶け残って、フレッシュなものとは一味違うしっとり感とシャリシャリを楽しむことができます。脱水がすすんでいるので、果皮は引き締まり、やや歯ごたえが出ています。味のばらつきもなくなり、甘味が芯まで浸透しています。また、スースーもやわらいできます。
 日をおけばおくほど砂糖が溶け、歯ざわりも固くなってきます。最後に残る蜜は、紅茶にいれたり、パンにつけたり。冷凍したユズの果肉と混ぜて、柚子ジュースにするのもアリです。


 個人的には、皮そのものの味が前面に出てるその日のうちに食べるのが好きかな。味わいにばらつきがあるのも、運試しみたいで楽しいし(^_^)
 だけどそこはひとそれぞれ。自分がいちばん好き、と感じられる頃合いが最高の食べごろ、ってことでいいと思います。

 ていうか。時の移ろいとともにあっという間に変化していく味わいを、時の流れにしたがいながら楽しめるお菓子です。食べるたびごとに味わいが変化してて、常に新鮮。最後まで未完でありながら、かつ、味わう瞬間ごとに完成されている、とみなすこともできる。淡い雪のように溶けていくグラニュー糖の儚さとも相まって、とても日本人好みに感じられます。
 それと。完成され、ばらつきもなく、時が止まった(つまり長期保存可能な)状態で店頭に並ぶお菓子や食品が溢れかえっている現代という時代にアンチを張ってるみたいで、そこもまたなんだか愉快になってくる。生活を取り戻す、とでもいうような感覚があります。
 だって、世界はそもそも、脆くもあっけなく変化するものばかりで出来ているのですから。とはいえ、だからこそ、それに抗い、長期的に風味が変容しない食べ物を生み出そうと努力するのは人間らしい、ともいえるのだけれど。

 柚子皮の半生砂糖漬けをパッケージングされた商品として売り出すのは、まず不可能でしょう。こだわりのある飲食店で、タイミングをみはからってお客様に提供するのは可能かもしれない。だけど、味わえるのは、店主がこれと定めた瞬間の味のみです(それはそれでめっちゃ贅沢だとおもうけど)。
 これだけ刻々と変容する菓子の移ろいの過程を丸ごと味わい尽くせるのは、家庭での手作りならでは。

 あらゆる家事が外注化され、

 なぜ、わざわざ自分で料理するのか

 を問い直さねばならぬような時代です。
 この手作り菓子にはその答えの一端が秘められているような気がしています。


・◇・◇・◇・


 ユズでの成功に味をしめて、温州ミカンの果皮も砂糖漬けにしてみたんだけど、やっぱ、皮の白い面のぱさつきが気になります(´ε`;)……お菓子とし食べるのに向いてる皮、向いてない皮、ってのはどうしてもありますね。
 それと、陳皮として漢方薬になってるだけあって、温州ミカンの果皮は薬効が高すぎて大量には食べられない。ちょっと食べたらおのずとストップになってしまいます。陳皮は乾燥させる力が強いので(だから痰切りの薬として有能なんだけど)、食べ過ぎるとのどが乾いて乾いてしょうがなくなってしまうのです。
 ついでながら、陳皮は気力を補う薬としても優秀(^_^)v、というのが自分の実感です。風邪にもメンタルにも効き、じわっと QOL を底上げしてくれる、というのは漢方ならではのよさですよね。

 さらについでに。
 自分の体感では、オレンジ色の柑橘のなかでは温州ミカン、黄色い柑橘ではレモンが薬としての効果が高くて、ユズとポンカンについてはあまり効き目は無い、という印象です。だけど、薬としての効果が低いからこそおやつとしてもりもり食べられる、っていうのは、逆説的にユズの強みなのかもしれません。

 とはいえ……お風呂に入れてあったかくなるのは、やっぱりユズです。
 果皮がガビガビであまり食欲がわかない玉は、今晩にでも柚子風呂にしちゃいまーす( ´ ▽ ` )ノ



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五百蔵ぷぷぷッこ / 140字のもの書き / Espansiva の中の人
いま、病気で家にいるので、長い記事がかけてます。 だけど、収入がありません。お金をもらえると、すこし元気になります。 健康になって仕事を始めたら、収入には困りませんが、ものを書く余裕がなくなるかと思うと、ふくざつな心境です。