ヤマダ

2023年5月、両側乳がん(同時性両側乳管癌)が判明。ルミナルA、ステージ1。 同年9…

ヤマダ

2023年5月、両側乳がん(同時性両側乳管癌)が判明。ルミナルA、ステージ1。 同年9月両胸全摘、インプラントで一次一期再建、術後の病理検査で断端陽性となり放射線治療(合計30回)。現在はタモキシフェンのみ服用。乳がんとの日々を振り返ります。旅と本と犬と服とラーメンが好き。

最近の記事

両側乳がんラプソディ #19 術前検査

 乳がんが判明してからすでに2ヶ月以上が経過している。  治療や大きな検査をすることなくここまできてしまった。  告知以前と告知以降の私の体には特に何の変化もない。  気持ちは全然違うけどさ。  ということで、術前検査の日である。  検査項目を終えるために、診察前にまずは、施設内のいろいろな窓口を回る。  最後に両胸のエコー検査を受ける。  今年の春から、私は何度、エコー検査を受けてきただろう。  検査技師の丁寧な機械使いを胸に感じながら、真っ暗な検査室でしんみ

    • 両側乳がんラプソディ ♯18 遺伝子検査の結果

      7月中旬、私は再び、G施設の門をくぐった。 3週間前に受けた遺伝子検査の結果を聞きに来たのである。  まずは両胸とも乳がんであることが改めて告げられ、I先生から遺伝子検査の結果を教えられた。  「陰性でしたね。」  つまり、遺伝子性の乳がんではないということである。  「はい。」  終わり。  (保険適用で)6万6000円をかけたにしては、あっけない。  でもよくよく考えたら、陰性ならばそれ以上、何も説明することはないのだろう。  良かったです、という

      • 両側乳がんラプソディ #17 乳房再建術の決定

         二度目の形成外科の受診である。  指定された診察室に、次から次へと患者が吸い込まれ出てきては吸い込まれていく。  医師一人で何人の外来患者を診察し、週にいくつの手術をこなしているのだろう。多忙な職業はいろいろあると思うが、総合病院の勤務医がその筆頭に来るのも頷ける。  案内パネルに自分の番号が表示され、私も診察室のドアを開けた。  O先生がまとう空気はできる人のそれである。  声は冷たくもなく必要以上に親密さも感じさせない(話しやすすぎても診察が長くなりそうだ)。  ま

        • 両側乳がんラプソディ #16 形成外科

           翌週、私はG施設を再訪した。  形成外科の予約を入れてもらっていたためである。  9時半からの予約であったが、診察室の前の待合スペースには、すでに数名の患者が待っている。  形成外科だから乳がん患者とは限らないと思うが、待っているのは全員、女性であった。  30分程度待ち、私の名前が呼ばれた。  担当のO先生は、乳房再建について一通りの説明をしてくれた。  すでに、病院内で視聴したビデオや配布された冊子で予習済みであったが、それでも再建の種類や方法、メリットやデメリッ

        両側乳がんラプソディ #19 術前検査

          両側乳がんラプソディ #15 G施設での一日

           G施設での長かった1日についても書かずにいられない。  明るくて活気があることに驚いた、というのは前回お伝えしたとおりである。  さらには、システマティックだったということも。  スタッフの対応も統一されている。  忙しそうではあるが、どのスタッフもセカセカ慌てておらず、口調は優しく穏やかである(マニュアルでもあってそのように指導されているのだろうか)。  ここを訪れると、大きな施設でたくさんの患者を効率的にトラブル少なく治療、対応することを突き詰めるとこうなるのだ

          両側乳がんラプソディ #15 G施設での一日

          両側乳がんラプソディ #14 G施設での診察

           G施設は、がん専門の病院である。  エントランスを入ると、まず人で溢れていることに驚く。  言い方は悪いが、明るくて活気がある。  世の中には、こんなにたくさんのがん患者(あるいは疑い)の方がいるのだ、とむしろ励まされる。  入り口で検温を済ませ、新型コロナウイルス感染対策用の回答用紙に記入し、初診の受付へと進む。  診察前に記入する書類が多いということで、予約した診察時間の1時間ほど前の10時には到着していた。  受付では今日の流れをまとめたようなスケジュール表

          両側乳がんラプソディ #14 G施設での診察

          両側乳がんラプソディ #13 転院

           予約をした日に再び病院を訪れた。  乳がん告知から2週間が経っていた。  少しずつ乳がんに関する知識が増えることに正比例し、焦りが生まれてきた。  乳がんは必要以上に恐れることはなく、「穏やかさん」タイプの初期なら手術メインの治療で乗り切れることをなんとなく理解した私は、一刻も早くスッキリさせたいという気持ちで一杯であった。  検索してみたが、乳がんとはいえ流石に2ヶ月以上の手術待ちは長い。  待ち時間が長いことがわかっているなら、早く手術の列に並びたい。  次のス

          両側乳がんラプソディ #13 転院

          両側乳がんラプソディ #12 闘病記とアルコール

           乳がんの基本情報がなんとなく理解できた後、私がやったことは乳がんの先輩方のブログや手記、闘病記やインタビュー記事などを読みまくることであった。  思ってもいない乳がんを宣告され、先の見えない不安でいっぱいである。  乳がんサバイバーの経験を追体験することで、自分の今後に対してイメージすることができたのもありがたかったし、勇気づけられた。  でもそれ以上に、世の中にはこれほど多くの方が乳がんを経験しており、みなさんお一人おひとりが異なる人生を生きながらそれぞれがさまざまな思

          両側乳がんラプソディ #12 闘病記とアルコール

          両側乳がんラプソディ #11 情報の海に溺れる

           次の診察までの2週間、私のプライベートの大部分は乳がんのさまざまな情報をネット上で漁り、書籍を読むことに費やされた。  まずは乳がんの基本情報から学び始めた。  乳がんと一口に言っても、乳管や小葉など、がん細胞が発生する箇所はさまざまであること、非浸潤と浸潤があり、非浸潤は乳管や小葉に止まっているもので、浸潤はその周囲に広まっているということを知った。  乳がんでステージ0というのは非浸潤を指すということなので、私のがんも非浸潤であってほしいと願った(ちなみにこの時の

          両側乳がんラプソディ #11 情報の海に溺れる

          両側乳がんラプソディ # 10 誰に伝えるか

           誰にいつどこまで自分ががんであることを話すかというのは、がん患者共通の悩みなのではないか。  誤解を恐れず書けば、知られたくないという気持ちには、固定観念を持たれたくない、噂されたくない、同情されたくない、勝手に病人であるとカテゴライズされたくないという矜持が透ける。  もちろん、相手に心理的負担をかけたくない、悲しませたくないという他者への思いやりや配慮を優先させる方もおられるであろう。  でも、私は前者の理由から、告知されてすぐ伝えることができたのは、数名しかいない

          両側乳がんラプソディ # 10 誰に伝えるか

          両側乳がんラプソディ #9 仕事と人生

           私はがんに対して特定のイメージを持っていた。  命の危険があるとか、治療に専念する必要があるとか、日常生活が途絶えてしまうとか、その類の治療中心のイメージである。  だから、医師からがんであると言われた時、とっさに仕事ができなくなること、生活が変わることを恐れた。  働くことは生きる上で、食べていく上で必要なことであるから、できなくなるのは困る。  でも、それだけではない。  それだけではないことに一大事に直面し気づいた。  仕事は私の生活の基盤を支えてくれているだけで

          両側乳がんラプソディ #9 仕事と人生

          両側乳がんラプソディ #8 家族に伝える

           職場へ戻り一呼吸ついてから、配偶者のYへラインを送る。  “乳がんだった。全摘の可能性大”  3分後、返信を受け取る。  “分かりました。取りあえず気をつけて帰っておいで”  Yは、それまで心配や先のことを口に出すことは無かった。  それは私に対する気遣いだったのか、私と同じように予想もしていなかったのかはわからない。  もしかすると、がんかもしれないと想像したのかもしれないが、私の不安を煽ることせず、静かに結論が出るのを待っていた。  だからこそ、どんな気持ちでラ

          両側乳がんラプソディ #8 家族に伝える

          両側乳がんラプソディ #7 再建という選択肢

           乳房再建には、人工物を入れるインプラント再建と自分の背中や腹などの組織を移植する自家再建があり、ともに保険が適応される。  インプラントは身体への負担や手術回数、入院期間が抑えられるのに対し、自家再建はあたたかみや加齢に伴う下垂が生じるという強みがあるそうだ。  さらに、摘出手術と同時に再建にも取り掛かる乳房再建は、一次一期再建と一次二期再建に分けられるという。  一次一期とは、乳腺の摘出と同時に再建まで一回の手術で終えることを指し、一次二期は、乳腺の摘出手術時にティッシ

          両側乳がんラプソディ #7 再建という選択肢

          両側乳がんラプソディ #6 乳管がん

           こうやって当時のことをまとめてみると、なぜ乳がんだと覚悟をしなかったのだろうと思うけれど、その状況になっても、私はあまり深刻に捉えてはおらず、乳腺線維腺腫の治療や手術になるだろうと勝手に予想していた。  だって、まさかね。  でもやはり、がんだったのである。  それも両側が。  診察室に入るや否や、医師は、モニターに映る検査結果を見せながら、柔らかボイスで乳管がんでしたと私に告げた。  右胸は針生検がうまくいかなかったため、がんと判定されていないが、自分のこれまでの経験

          両側乳がんラプソディ #6 乳管がん

          両側乳がんラプソディ #5 針生検

           1週間後、昼食を職場で食べてから、私は歩いて病院へ向かった。  10分もかからずに病院の入り口に到着する。  予約表や診察券を持っていないので、とりあえず総合窓口に寄って初診用の書類を受け取り、記入を済ませる。  ついでに乳腺科の場所も教えてもらい、書き終わった書類を出してそちらに移動した。  午後の総合病院は静かだ。  午前中の喧騒が嘘のように、人影もまばらである。  指定された診察室前の長椅子にかろうじて一人座っているだけで、幾つも並ぶその他の診察室からは物音もせず、

          両側乳がんラプソディ #5 針生検

          両側乳がんラプソディ#4 カテゴリー

           検査翌日からゴールデンウィークの長期休暇が始まった。  配偶者のYと二匹の愛犬との家族旅行、友人との食事会や飲み会、研究会、たまった仕事など、ボチボチこなすうちに九日間の楽しい休暇は過ぎた。  休み気分も抜け切らない月曜日、検査結果を聞きに病院へ行った。  二度目の顔合わせとなる医師は、検査結果をパソコンの画面に映しながら、両胸ともに疑い(がんとはあえて口にしなかったと思う)があるので詳しく調べたほうが良いと話し、 「左側はおそらく大丈夫だと思いますが、右側はカテゴリーが

          両側乳がんラプソディ#4 カテゴリー