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両側乳がんラプソディ #15 G施設での一日

 G施設での長かった1日についても書かずにいられない。

 明るくて活気があることに驚いた、というのは前回お伝えしたとおりである。

 さらには、システマティックだったということも。

 スタッフの対応も統一されている。
 忙しそうではあるが、どのスタッフもセカセカ慌てておらず、口調は優しく穏やかである(マニュアルでもあってそのように指導されているのだろうか)。

 ここを訪れると、大きな施設でたくさんの患者を効率的にトラブル少なく治療、対応することを突き詰めるとこうなるのだろうな、と想像する5倍ぐらいの驚きがあるはずだ。

 私がその日に回った窓口は、10は下らなかったと思う(たぶん。体感的にはそれくらいあった)。

 コロナ感染対策の受付、初診の受付を通った後、まず、自分の症例を研究に使用しても良いか、確認をとる受付に案内される。
 そこでは丁寧な説明と承諾書のサインが求められるのだが、到着したばかりで治療も始まっておらず、右も左も分からない時に研究協力にイエスと即答できる方はすごい。

 私は拒否してしまった。
 あとで家族から、自分だって職業柄、いろんな方に調査協力をお願いしているのに拒否するなんて、と嫌味を言われた。
 確かに。 

 もう少し患者が病院に慣れてから確認をとったほうが承諾率の向上につながるのではないかと思うがどうであろう。

 さらには、現在の気分や不安なこと、家庭環境や仕事内容など、患者が置かれている状況を知るためのアンケートを記入し提出するエリアもあった。

「お辛いことがあればなんでも記入してください。」

と声をかけられる。

 正直、今の自分の不安が何かも明確ではないが、とりあえず項目を埋める。

 病院でもらい持参していたCD―ROMを読みこんでもらう窓口、採血室、治療が終わった後に始まる地域連携プログラムや治療費が高額になることを見越した限度額適用認定書の説明、各種検査や乳がんについて学ぶ動画視聴室、術後ブラジャーの紹介、手術時に必要なもの、入院手続き!まで、その日一日で、診察を含めて、ありとあらゆる窓口や部屋を回りいろいろなスタッフから話を伺い、すべてが終わったのは夕方であった。

 初診だからそれほど時間はかからないだろうと昼前で終わる気でいたが、全然終わらないので、病院内の食堂で昼食をとった。
 メニューはもちろんラーメンである(なんで普通の素朴な醤油ラーメンってあんなに美味しいのだろうね)。

 院内のコンビニでコーヒーも買って飲む。
 天井が高く、日の光が差し込む開放的なスペースで中休憩をとる。
 病院にいることを忘れそうになる。

 それにしても、治療も始まらず手術日も決まっていないのに、入院、手術だけではなく、退院後のことまで決めるのにはびっくりした。

 スタートラインに立つまでは紆余曲折があって長い時間がかかったのに、始まったら1日であっという間に進んでしまい、頭は混乱し体は疲れて果てた。
 何はともあれ、実感はなくとも私は歩き出すしかなかった。

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