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【レポート】感染症と世界史

Photo:KONAN GAKUEN

自己評価:範囲が広すぎてレポートにふさわしくないテーマ

経済通産省の審議会で発表された資料では、リスキリング(reskilling)は以下のように定義されています。

「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」

下記の【参考記事①】では、リスキリングの本質は「変化する社会で、今後必要なスキルや技術を学ぶ」ことで、そこでは「独学力」が決定的に重要になるとの見解が示されています。

【参考記事①】
学歴より重要「独学力が高い人、低い人」決定的差 この先、生き残れるかの「大きな分かれ目」です
https://toyokeizai.net/articles/-/612938

日本社会で進む「3つの大転換」、仕事はどうなる? 「変化に強い人」になるには「独学力」こそ重要だ
https://toyokeizai.net/articles/-/613855

この先、「生き残れる人」に共通する超納得4大能力 人脈は「中身」が大切です!あなたは大丈夫?
https://toyokeizai.net/articles/-/615288

会社員を襲う「あまりに大きな2つの変化」の本質 「生き残る」には「独学」が必要!その深い訳は?
https://toyokeizai.net/articles/-/615772

リベラルアーツ「全然学ばない人、学ぶ人」の大差 「4大メリットを解説!」一流の人は深く学ぶ訳
https://toyokeizai.net/articles/-/618769

ビジネスの土台「リベラルアーツ」学ぶ簡単6秘訣 知的基盤にもなる!「効果的な学び方」は?
https://toyokeizai.net/articles/-/621924

将来、「ずっと食えるプロ人材」になる超納得4条件 企業がこぞって欲しがる「新しい能力」の中身は
https://toyokeizai.net/articles/-/618413

35歳過ぎて「全然学ばない人、独学する人」の大差 「独学で、人生が劇的に好転!」超納得の4大理由
https://toyokeizai.net/articles/-/622265

この先、食えるため「何を学ぶか」見つけ方5大秘訣 「自分が食えるテーマ」どう探し、どう学ぶ?
https://toyokeizai.net/articles/-/624595

学生時代より重要!「社会人の学び方」5大注意点 知らないと「成長しない!」あなたは大丈夫?
https://toyokeizai.net/articles/-/626989

永遠に仕事できない「応用力がない人」共通4大NG 「私、教わってないので」って…学歴より重要!
https://toyokeizai.net/articles/-/627887

10年後「キャリア築く人」「全然ダメな人」4つの差 成功する人ほど「3つの好循環」を回している!
https://toyokeizai.net/articles/-/629741

アルビン・トフラー氏の「21世紀の非識字者とは、読み書きができない人のことではない。学んだことを忘れて、新しく学び直すことができない人のことだ」という予言の通り、現在、私たちは識字(リテラシー)能力の再定義過程の真っただ中にいます。

その様な状況下、教育や労働の現場では将来的な職業スキルを若者に身に付けさせることに苦戦していたのに、テクノロジーの進歩についていけず、既存のスキル格差を拡大させたに過ぎずませんでした。

特に、社会から疎外された若者が、教育やスキルアップの機会を十分に得られない状況に置かれています。

デジタルな未来の仕事に必要とされるスキルを見極められないと、スキル格差が益々拡大傾向になることが懸念されます。

この点に関して、独学だけでは、金銭面等で難しい点もあり、従業員のリスキリングの機会を設ける、あるいは、自主的に学習に取り組むための時間と予算を提供するなど、学習欲求の高まりに対応できる企業は、この勢いに乗って前進することができるはずです。

【参考記事②】
リスキリングとは?意味や注目されている理由をわかりやすく解説
https://well-woking.com/reskilling-about/

アップスキリングとは?意味やリスキリングとの違いをわかりやすく解説
https://well-woking.com/upskilling-about/

クロススキリングとは?意味やリスキリングとの違いをわかりやすく解説
https://well-woking.com/cross-skilling-about/

アウトスキリングとは?注目されている理由やメリットをわかりやすく解説
https://well-woking.com/outskilling-about/

そこで、オンライン教育プラットフォームのリンクトイン・ラーニングは、第5回「ワークプレイス・ラーニングレポート」で、1,200人以上の学習・開発(L&D)担当者と約900人の学習者を対象に調査を行った結果、 2021年に必要とされる上位のスキルの内、調査対象となったすべての国で、L&D担当者が今年最も重要となるスキルとして挙げたのは、1位のレジリエンス(強靭性)と、2位のデジタル化が進む世界で効果的に活動するために必要なテクノロジースキルである「デジタルフルエンシー」だったそうです。

【参考記事③】
逆境に負けない心「レジリエンス」を高めるには?激動の時代に必須のスキル
https://mba.globis.ac.jp/careernote/1433.html

デジタルフルーエンシー(デジタルの流暢さ)とはどんなスキルなのか?
https://well-woking.com/digital-fluency-skill-meaning/

激しく社会が変化する危機の時代とは、要するに、その社会にとって何が善であるかをめぐっての考え方の揺らぎが大きくなっているということですよね^^;

揺らぎが大きくなると、善をめぐる異なる考え方の間の競り合いと言うか、せめぎ合いが強くなります。

そういうときに、無自覚に自分が善だと思い込んでいる尺度のなかで、いくら「これはいいものです!」と力んでも誰にも刺さりません^^;

そんな善悪が乱れた状況の中で、自分の提供する善が、相手の善を包摂する必要があります。

そして、より広く新しい価値を持つものなんだよっていうメッセージを自覚的に打ち出す必要もあります。

ただ、それをすることは、かなり面倒だし、手間暇かかります^^;

でも、突き詰めて言い換えれば、より包摂的な新しい何か(例えば、社会とか組織等々。)をデザインする力が、社会にとって本質的に重要となる事実には変わりありません。

社会のなかの生きた善には、必ずそれなりの歴史が有るはずです。

また、新しい善の提起が説得力を持つためには、そうした歴史を踏まえなければなりません。

そこで必要となるのが、その歴史の背後にある価値観への感度です。

つまり、世界史のリテラシーにほかなりません。

歴史の背後にある異なる価値観への感度を上げていくことは、社会に某かの善を発信する力と本質的に連続しています。

特に、グローバル化が進んだ今日、異なる歴史を持つ人々との間で善悪をめぐる構想力を競うならば、世界史のリテラシーは必須といってもよい教養だといえるでしょう。

下記の参考記事にも書かれていますが、そこに、世界史を学ぶ理由のひとつがあると考えています。

【参考記事】
大人のための世界史の勉強法 詰め込み過ぎずに大きな流れをつかむことに徹する
https://blog.souichisouken.com/entry/2019/10/05/140541

大人も知っておきたい教養「世界史」の劇的変化 『独学大全』私はこう読んだ/世界史対談・読書猿×Dain
https://diamond.jp/articles/-/304980

世界史を学ぶ理由 あなたはどう考えますか?
https://sokosokoyy.hatenablog.com/entry/2018/10/20/215108

日本史・世界史の勉強は役立つの? 東大名誉教授が教える「歴史を学ぶ意味」
https://www.koukouseishinbun.jp/articles/-/7497

【東大名誉教授が教える】人類は同じ悲劇を繰り返す。それでも「世界史を学ぶ意味」とは?
https://diamond.jp/articles/-/300837

さて、今、巷で話題の感染症について、その歴史について、もう一度、振り返ってみたいと思います。

人類は、紀元前の昔から、さまざまな感染症と戦ってきました。

原因も治療も十分に確立されていなかった時代には、感染症のパンデミックは歴史を変えるほどの影響を及ぼしてきました。

感染症をもたらす病原体や対処方法がわかってきたのは、19世紀後半になってからで、その後、感染症による死亡者は激減しました。

しかし、1970年頃より、以前には知られてなかった新たな感染症である「新興感染症」や、過去に流行した感染症で一時は発生数が減少したものの再び出現した感染症「再興感染症」が問題となっています。

発展途上国ばかりでなく先進国においても、脅威となっていますよね。

そう、私達の世界には、まだまだ、はっきりしないことの方が遥かに多いのだという事実があります。

「はっきりしないこと」を表す言葉には、いろいろなものがあります。

「曖昧」「あやふや」「うやむや」の3語も、その一種ですね。

いずれも会話などではよく使われる言葉ですが、それぞれの違いについては、普段あまり意識することは少ないのではないでしょうか?

しかし、改めてこの3語を比べてみると、どこがどう異なるのかが気になってきます。

「曖昧」とは、「ものごとがはっきりしないこと」という意味の言葉です。

「あやふや」とは、「ものごとの確かでないさま」という意味の言葉です。

「うやむや」とは、「ものごとがどういう状態にあるのかはっきりしないこと」という意味の言葉です。

このはっきりしないことを理解するための手段として、「古きを訪ねて新しきを知る」があります。

論語の中で孔子が言った『温故知新』のことですね(^^)

昔のことをじっくりと調べていけば、新しいことを知ることができると言っています。

英語では、『He that would know what shall be must consider what has been.』と言います。

何をすべきか知っているであろう彼は、過ぎたことをじっくり考えると言った意味合いです。

これまでの常識とか、周りの目とかそんなものより、新しい日々をつなぐのは、新しい自分という人間。

「古きを訪ねて新しきを知る」ことは、まさに歴史学の真髄でもあります。

歴史を学ぶことは昔を知ることだけでなく、同時に未来を見据えることなのですが、たまには、自分の歩いて来た歴史に触れること、歴史から読み取ることを体得し、そんな歴史に親しみながら、これを大きなヒントとして、新しい発想や斬新な視点を引きだすことができればと考えています。

新しい日々をつなぐのは 新しい自分と思えれば、なんだかすごい勢いで勇気を送ってくれている気がしませんか?

何かと常識にとらわれて動けなくなる日本人だけど、常識は知っていて、その上で自分らしさを表現すればいいんじゃないかなぁ~

常識知らずで突っ走るのは怖いけど。

いろんなことにおいて、新しいものを作るのは新しい自分なのさ!

そして、相手に正しく伝わることも大切なことだから、例えば、この動画のように論理学を学ぶのも良いですね(^^)

【参考動画】
【論理学】正論ぽいのに説得力のない人が議論に使う最強の詭弁術4選

そこで、感染症と世界史について学んでみようと思い立って、例えば、以下に示す【参照図書】等の関連する書物を物色してみたんですが・・・・・・

【参照図書】
「疫病の世界史〈上〉―黒死病・ナポレオン戦争・顕微鏡」スノーデン,フランク・M.【著】桃井緑美子/塩原通緒【訳】

「疫病の世界史〈下〉―消耗病・植民地・グローバリゼーション」スノーデン,フランク・M.【著】桃井緑美子/塩原通緒【訳】

「人類と感染症の歴史―未知なる恐怖を超えて―」加藤茂孝【著】

「続・人類と感染症の歴史―新たな恐怖に備える」加藤茂孝【著】

「人口と健康の世界史」秋田茂/脇村孝平【責任編集】(MINERVA世界史叢書)

「疫病と世界史〈上〉」マクニール,ウィリアム・H.【著】佐々木昭夫【訳】(中公文庫)

「疫病と世界史〈下〉」マクニール,ウィリアム・H.【著】佐々木昭夫【訳】(中公文庫)

「感染症の近代史」内海孝【著】(日本史リブレット)


「感染症と私たちの歴史・これから」飯島渉【著】(歴史総合パートナーズ)


「疫病と人類―新しい感染症の時代をどう生きるか」山本太郎【著】(朝日新書)

「感染症は世界史を動かす」岡田晴恵(著)(ちくま新書)

「人類vs感染症」岡田晴恵【著】(岩波ジュニア新書)

「感染症の日本史」磯田道史【著】(文春新書)

「世界史を変えたパンデミック」小長谷正明【著】(幻冬舎新書)

「感染症と文明―共生への道」山本太郎【著】(岩波新書)

「図解 感染症の世界史」石弘之【著】

「日本古典と感染症」キャンベル,ロバート【編著】(角川ソフィア文庫)


「感染症の世界史」石弘之【著】(角川ソフィア文庫)

「10の「感染症」からよむ世界史」脇村孝平【監修】造事務所【編著】(日経ビジネス人文庫)

これらの図書を斜め読み(小見出しや重要な点にだけ着目)して、簡潔に要約すると、感染症は、世界史を動かしてきた事実があった。

「微小な細菌やウイルスなどの病原体が、そのときの政治や社会に与えた影響について、私たちの認識はどこかあやふやである。

たとえば中世ヨーロッパに壊滅的な打撃を与えたペストについても、なぜ始まり、どのように終わったかについて、はっきりした結論が得られているわけではない。

では、人類はその見えない恐怖にどう対処して来たのだろうか。

そして、目の前の最大の脅威=新型インフルエンザとは何か。

ハンセン病、ペスト、梅毒、結核、スペインかぜなど、人類史を大きく動かした感染症の歴史から、新型インフルエンザの脅威とその対策を考える。」(「感染症は世界史を動かす」より引用)

感染症は世界史を、どんなふうに動かしてきたのか?について、自分なりの[ 問題提起 ]、[ 教訓 ]、[ 発見(気づき) ]、[ 結論 ]や[ コメント ]は、以下のとおりです。

[ 問題提起 ]
こんな出来事があるそうだ。

ミクロネシアの小島に滞在した人の話では、二ヶ月に一度の連絡船がつくと、その後、しばらくは島の人々には咳が続いた。

滞在者は、そうした目にはあわなかった。

島社会は、他の世界からの隔離度が高く、コンタクトがあるたびに、何らかのウィルスあるいは細菌が持ち込まれていたのではないか。

外の世界からやってきた滞在者には、すでに免疫があって何の反応も引き起こさなかったことは、そのことを実証していたように思われる。

病原に対して免疫があるということは、かつて感染した記録が身体に残されていたということである。

一方、持ち込まれたものに対して免疫機能が働かずに感染するということは、その感染源に対して感染歴がなかったということである。

「感染症は世界史を動かす」では、パンデミック(世界感染)であるインフルエンザに最終的に焦点が当てられ、我々に警告している。

インフルエンザはありきたりの病気で、毎年のように流行する。

さらに、鶏インフルエンザは鶏に感染するだけで人間とは無関係。

そうした考えは、きわめて危険であることを「感染症は世界史を動かす」は警告する。

インフルエンザ・ウィルスの遺伝情報はRNAによって次世代に伝えられるが、人類を含む哺乳類はDNAによって伝達され、さらに、DNAによる遺伝システムには突然変異を補修するメカニズムが知られている。

しかし、RNAはそれとは異なる。

変異の多様性によって、環境の変化に対応しようとするのである。

DNAとRNAの構成単位はいずれもヌクレオチドであるが、 DNAとRNAの役割は、以下のように大きく異なる。

DNA:遺伝情報を長期間保存するために使われる

RNA:遺伝情報を一時的に利用するために使われる

遺伝情報を保存するDNAは、安定的な性質が必要と考えられる。

一方、RNAは必要なときにすばやく合成することができ、不要になったらただちに分解できるような反応性に富んだ性質が都合がよいと言える。

したがって、DNAとRNAはそれぞれの役割に適するように,化学的な構造が異なっているのである。

さて、インフルエンザ・ウィルスは、容易に突然変異を遂げ、多くの生物が持っている免疫反応のバリアを超えて感染症を引き起こす。

しかも、特定の種に感染するのみではなく、種を超えて感染するのである。

そして、このことは、その突然変異のバリエーションを拡張し、ひとたび感染が起こると、爆発的なパンデミック感染症を引き起こすというのである。

人間に限らずこうした感染症との抗争は非常に長く続いてきたが、人口密度や人口の移動速度が非常に大きくなった現在、その危険性は大いに増しているのである。

世界人口20億の1910年代のスペイン風邪(インフルエンザの一種である)の流行は、世界の少なくとも5億人が感染し、1億人が死亡した。

感染期は第一次大戦のさなかであり、その戦死者の1千万人に比べても10倍。

インフルエンザの猛威により戦力を喪失したドイツ軍は崩壊(連合国側も、無関係ではなかった。)、戦争は終結したのである。

当時に比べて少なくとも人口においては3倍(人口密度は、特定地域にあっては、当時に比べて、格段に大きくなっている。)、また、人口移動は、当時、航空機の普及以前であったものが、現在は高速大量輸送の時代である。

そうした背景は感染症の流行に対して、非常に危険な状況にあるといえる。

[ 教訓 ]
ハンセン病、黒死病(ペスト)、梅毒、結核、新型インフルエンザ。

聖書の時代から感染症は、億単位の数の人間の命を奪ってきた。

それは、戦争や核爆弾を遥かに超える影響を及ぼす。

中世のペストの大流行は、世界で7000万人の犠牲者を出した。

人口が元に戻るには、2世紀を必要としたという。

全盛期初頭のスペイン風邪では、4000万人から8000万人の犠牲者を出した。

そして、新型インフルエンザの大流行が起これば、例えば、2006年だと、最悪のシナリオでは1億8000万人から3億6000万人が死亡すると専門家に推定されていた。

感染症の大流行(パンデミック)は、特に、都市化と交通の発達が進んだ中世以降に起きるようになった。

医学が確立される前の中世では、原因不明の疫病は悪魔の仕業であり、患者は汚れた者と不当に差別されて悲惨な最期を迎えていた。

ハンセン病やペストの死者は、教会に埋葬されないことも多かった。

医学のない時代の治療は神頼み。

無意味に血を抜いたり、水銀を吸い込んだり、自らの身体を鞭打って行進したりすることで病気が治るわけもなかった。

患者を不衛生な場所に閉じ込めることで、死亡率はさらに高まった。

この本では中世以降のヨーロッパ、日本の感染症の実態が語られる。

病気は自然が生み出すものだが、それを広めるのは人間である。

ルネッサンスのヨーロッパでは、売春行為や娼婦は合法で公営のものまであった。

ローマのシスティーナ礼拝堂は、娼家の税で建ったといわれるそうだ。

職人社会のマイスター制度では、若者は一人前になるまで結婚してはならないとされて晩婚化が目立った。

若い男性は売春宿を利用した。

梅毒の大流行の原因にあげられている。

産業革命のイギリスでは都市部の工場で、劣悪な環境下に労働者がおかれた。

栄養不足や疲労、非衛生的な部屋に、集団で暮らすことで結核の温床になった。

1840年のリバプールの労働者階級の平均死亡年齢は15歳だったそうだ。

日本でも炭鉱労働者は、次々に、結核で倒れていた。

世界大戦ではスペイン風邪の菌が兵士の大移動で世界中に広まった。

SARSや鳥型インフルエンザは飛行機で国境を飛び越える。

状況が中世と異なるのは、治療と予防の技術が進み、ある程度のコントロールが可能になっていること。

近年、多くの専門家が近い将来のパンデミックを予言している。

新型インフルエンザも怖いが、今日の世界においても結核は、世界の死亡原因トップ10のひとつであり、単一の感染症としてはHIV/エイズを超え最大の死亡原因となっており、世界人口の23%にあたる約17億人が結核に感染し、そのうち年間1,000万人が新たに発病し、160万人が死亡していると推定されている事実に驚かされた。

感染症の問題は、人類最大の文字通り致命的問題かもしれない。

中世と近代のヨーロッパや日本の歴史を、感染症という視点で切り取った社会史、文化史として、勉強し直すことは重要である。

世界を動かしてきたのは政治でも経済でもなくて、病気と考えることもできるからである。

[ 発見(気づき) ]
チャールス・ヘストン主演の映画「ベン・ハー」には、ハンセン(ライ)病にとりつかれた母と妹が、周囲から忌み嫌われ、また自ら望んで同病者と隔離生活を送る様子が活写されている。

ユル・ブリンナー主演の「隊長ブーリバ」では、コサックが包囲する城内に悪疫(多分ペスト)が流行し、多数の死者を荷車に積んで城外に不浄門から運び出すシーンがあった。

題名は忘れたが、イタリアを舞台とした時代劇映画でも、黒死病流行で次々と人が死ぬ都会の風景を見た。

チェコの世界遺産の町チェスキークルムロフのスヴォルノスティ広場にはペスト記念碑がある。

人口の半分ぐらいが死んだ大事件だった。

ハンセン病はもともとは熱帯の病気であった。

アレキサンダー大王遠征軍が紀元前4世紀に中近東や東欧に持ち帰る。

ハンセン病はライ菌が引き起こす慢性の感染症である。

ライ菌はじわじわと拡散して、中世初には既に全ヨーロッパで知られていた。

ライ菌は感染力が弱いために長時間の密な接触がないと伝染しないし、菌を体外に出すのは一部の患者に限られる。

また、たとえ体内にライ菌が入ったとしても、たいていの場合は死滅して増えることはない。

潜伏期が数年から20年と長いために、感染経路が同定しにくい。

ハンセン病は聖書に出てくる病で、イエスが一言「呪文」を唱えると、あら不思議や患者はたちまち快癒したと、そこだけなら祈祷師の功徳書のようなことが書かれている。

兎も角イエスは治療に当たった。

しかし中世の教会はだんだん支配者、施政者側に変貌していった。

ハンセン病者を差別し隔離追放する施策を擁護するようになる。

ヨーロッパ全土で実に2万カ所もの隔離施設ラザレットが設けられた。

ラザレットは治療施設ではなく死を迎えさせるための施設であった。

患者は地獄門から強制追放されるのである。

近世になると、キリスト教会は救済に尽くすようになり、多くのハンセン病療養施設を運営している。

今では化学療法が開発され、日本ではほとんど患者を見かけなくなった。

その日本でもついこの間までハンセン病は恐怖の対象で、それに伴う偏見差別は日本映画の傑作「砂の器」の中で加藤嘉が生々しく演じている。

但し、WHOの5つの地域事務局にある121か国から公表された数値では、2014年末の時点で17万5,554人のハンセン病患者の罹患が世界で登録されていることが示されました。

ペストの大流行は梅毒の上陸よりほぼ1世紀以前である。

ヨーロッパ全体で3000~3500万人が死んだという時期6年間のペストを特に黒死病というのだそうだ。

都会では3人に1人は死んだという記載があるから、当時の人口は1億ぐらいだったのだろうか。

ちなみに2017年1月1日現在の欧州連合(EU)の総人口は、5億1,180万人と推定されいる。

腸ペストから肺ペストの時期に達し、空気感染が始まるともう爆発的に広まる。

ペスト菌は小動物特にクマネズミに寄生するノミに媒介されるという。

このクマネズミはヨーロッパの在来種ではなく、イェルサレム奪還を目指した十字軍に中途から「従軍」してヨーロッパに「凱旋」してきた。

ペスト菌はずっと遅れて後期十字軍時代に到達する。

ペスト菌は十字軍が運搬してきたのではない。

地中海海運の船乗りに船客からであった。

そのルートが特定されている。

震源地は中央アジアのカジキスタンであった。

そこのモンゴル系遊牧民が東西にペスト菌をばらまいた。

西進のペストロードは、1345年のバイカル湖イリ川のほとりから'47年コンスタンチノープル、'48年ローマと伝わり、後はあっという間に全ヨーロッパに広がった。

海岸沿いほど早かった。

黒海のカッファはイタリアのジェノヴァの植民地であったが、城壁を取り囲むタタール人と武力抗争中だった。

タタール人は恐るべき生物兵器を使った。

黒死病による同胞の死体を城内へ投げ込んだのである。

「隊長ブーリバ」は、ずっと後世のポーランド対コサックの戦闘物語であるが、映画で見た城内の惨状はカッファでも同じであったのだろう。

ジェノヴァは東方からのガレー船の寄港を禁止する。

しかし、その甲斐もなくやがて蔓延し、市は人口の大半を失う。

いつの場合も初めての病原菌は大災害を与える。

アメリカ・インディアンの激減もそうだし、豪州タスマニア島の原住民絶滅原因も白人のやり放題の殺戮もさることながら、かなりが未経験の病原菌による病死だと考えられている。

マルセイユは人口の8割を失ったという。

黒死病流行以前の中世ヨーロッパの生活が栄養状態、衛生状態中心に記述してある。

農家とはわら屋根の叩き土間、小窓一つの薄暗い粘土壁に囲まれた一間だけの家と聞くと、宮古島の博物館にあった農家模型の展示の写真を思い出す。

そっくりのイメージなのである。

都会の生活も劣悪だった。

何しろ3倍の収穫倍率(だから食えるのは種籾の2倍量だけ)しかない低生産力の農業で、今の1/4.6の人口を(ローマ時代のような輸入はなしで)養うのだから、飢餓すれすれであったことは間違いない。

現在の小麦の収穫倍率はヨーロッパでは15~16倍、アメリカでは20~25倍、日本では50倍以上という。

ちなみに米の収穫倍率は高く、奈良時代で7倍、現代で140倍という数字が上げられていた。

奈良時代は総人口が451万(鬼頭宏:「人口から読む日本の歴史」)だったという。

奈良時代と同じ生活水準で生活するなら、耕地面積が当時と同じでも、日本は1億ぐらいは養える勘定である。

中世ヨーロッパの都市には上下水道の整備など無く、生ゴミも自らの排泄物も街路に投げ捨て、運河に垂れ流した。

入浴の習慣はゲルマン系にはなく、さらに黒死病が毛穴から入るとしてローマ系の習慣も廃れたとある。

人々はとてつもなく不潔な生活環境でかつかつに生きていた。

なんだかローマ帝国時代からぐんと退歩した生活である。

聖職者の権威は地に墜ちた。

これが後世の宗教改革の大きな布石の一つになった。

いくら祈っても黒死病から逃れるすべがない。

看病に当たった修道士が全員死亡した修道院も出たが、やがて教区の司教が逃げ出すに及び民衆は終末思想にとりつかれる。

絶望が狂気を招き集団ヒステリーとなって、日頃の憎しみの対象を襲う。

ユダヤ人虐殺である。

キリスト教国にはそれまでになかった病気である。

異教徒がばらまくのに違いない。

異教徒と言ったらユダヤ教徒である。

ユダヤが毒を撒いているのだ。

ユダヤ人は優秀な民族で、知識階級に属する人が多かった。

薬剤師とか医師を職業とするユダヤ人も多かった。

それが災いした。

毒とその職業が結びついたのである。

ヨーロッパの至る所でユダヤ人の部落は壊滅した。

特にひどかったのはドイツだという。

ヒットラーはこの第2回目の虐殺を行ったことになる。

いつも一方的にキリスト教徒に迫害されたユダヤ教徒を考えるとき、彼らの居住区ゲットーに思いが行き着かざるを得ない。

そしてユダヤ民族が、ローマ時代から自らの都市を造らずに他民族の世界に寄生虫のように入り込み、強烈に活動したこともである。

同じヨーロッパ大陸において同化吸収されたガリア民族、今正にそうなろうとしているジプシーたちとも比較して、なんと困難な道を2000年の長期に亘って迷うことなく選んだものだと感嘆する。

黒死病流行の結果人口が激減し、農村の労働力不足が深刻な問題になった。

領主はやむなく農奴制から小作制へと転換し、やがて農業労働に賃金が支払われるようになる。

荘園制度、封建制度の瓦解が始まる。

イギリスでは14世紀中頃に既に労働者規制法、労働者勅令が出た。

耕作に人手が掛からないブドウ栽培が広がり、牧畜が増える。

労働者不足が契機で修道院に付属して捨児養育院が多数建設される。

NHKテレビの探検ロマン世界遺産のクロアチア・ドウブロブニクの中で、こんな話がでていた。

修道院の中に700年から続く薬局があり、病院は1347年設立であった。

1347年はこのアドリア海に面した貿易港に黒死病がやってきたときである。

孤児引き取り窓口が残っていた。

オープンがいつだったかは云わなかった。

6才まで市行政府が育てた。

パリでは新生児の3割が捨て子にされ、その5~6割が院内で死んだ。

捨て子は女児が圧倒的に多かったという。

人類は悪戦苦闘の結果なんとか梅毒は押さえ込んだ。

だが、突如新しい性感染病エイズの問題が起こり、エイズによって壊滅的打撃を受ける民族が出るのではないかと言われた。

哲学者のニーチェが梅毒患者で最後が精神病院だったことは「アンチクリスト」で知っていた。

冬の旅を作曲した頃にはシューベルトはもう梅毒末期にあり、絶望的な状態に陥っていたと知った。

未完成交響曲を書いていた頃、既に症状が現れていたという。

第三楽章以下のない未完成で終わった理由は、梅毒の進行のためとはさらに恐れ入った。

私は往年のドイツ名画「未完成交響曲」の筋書き通りに、貴族令嬢との悲劇的な別れを何となく未完成の理由と思っていたからである。

梅毒がコロンブスご一行のおみやげであったことは古病理解析からも証明できるそうだ。

アメリカ大陸15世紀以前、原住民人骨から梅毒の痕跡が見付かるのに対し、欧州からは発見できないそうだ。

征服者は天然痘や麻疹を持ち込み、インディアン狩りをやり、金と香辛料を強奪した。

だがインディアンの女性はこっそり別のおみやげをも船乗りや戦士たちに持たせたのである。

梅毒はたったの25年で世界一周を実現した。

1512年京都に記録が現れるのである。

私など世界一周クルーズが生涯の望みなのにいっこうに実現しそうにない。

何と間のよい細菌であるか。

花柳病と呼ばれ色町を媒介に日本中に広まったと思われる。

だが不思議なことに、ヨーロッパとは違って梅毒は日本の歴史を変えるほどには猛威を振るわなかったと、私は思う。

地理的にも行政的にも往来が不自由で伝搬にブレーキが掛かり、上下身分の制度は最上層部への感染を防いだ。

イギリス王室のような悲劇は我が国には起こらなかった。

中世からルネッサンスまでのヨーロッパは性に大らかな社会であった。

買売春行為も娼婦も違法ではなく、それどころか娼家は市営のものから教会経営のものまであったと云うから驚きである。

王宮や貴族のためには、高級な娼婦がいて高い教養を持ち、優美な姿態と共に彼らを癒した。

なんだか吉川英治の、宮本武蔵をもてなした吉野大夫を彷彿とさせる話である。

彼女らの中には、国政に影響を与えるようなものまでいたという。

売春産業からの収益税収が高貴な方々の大切な財源だった。

なぜ娼婦が多かったかについては、職人のマイスター制度。

一人前になるまでは結婚が許されないのである。

傭兵、乞食、巡礼など危険分子の欲望のはけ口。

聖職者すら認められた買春。

彼女らの商売仇は何と修道女だ。

性的無償奉仕が行われていて、尼さんとは娼婦をも意味していた。

それから浴場の湯女。

お江戸そっくりと思われる記述で楽しくなってしまう。

が、梅毒の罹患が娼婦に多いことが分かると、娼婦の追放が始まる。

娼家が閉鎖され、娼婦を水に沈める。

城壁の外に追い出し、鼻を削いで奴隷として植民地に売り飛ばす。

浴場も閉鎖。

性がタブー視されるようになる。

ルターは、一夫一婦制の励行と売春反対をうたった。

清教徒は、さらに厳しく性行動を慎んだ。

売春を抑制し、夫婦制度を強化して、純潔教育を施すことが必要とされた。

こうしてみると大陸のプロテスタント、イギリスのピューリタンとも勢力拡大に梅毒蔓延が大きく貢献したこととなる。

中世のキリスト教、すなわちカトリックは、何しろ上述のようなザマであったから。

蔓延を始めた頃の梅毒は、急性で骨が冒され始めると怖ろしい苦痛を伴い、地獄の責め苦となる。

流行半世紀ほどの間に病原体側が変化して病原性が弱くなり、急性が慢性になり、病状も緩慢になったという。

ヨーロッパの都市住民の2割が感染したらしい。

正統な医師は梅毒患者を拒んだ。

治せぬと評判を落とすからだという。

だから患者はインチキ医師にかからざるを得ない。

床屋医者とか湯屋医者と書いてある。

彼らが用いるもっとも有名な治療法は水銀療法であった。

患者はむしろ水銀中毒で苦しみながら死んだそうだ。

日本人研究者・秦佐八郎がエールリッヒとともにネオサルバルサンを発明するまで梅毒の真の治療薬はなかったのである。

この治療薬開発に至る道のりが近代医学確立のルートでもあった。

日本に結核が持ち込まれた時期は、渡来人によって3世紀頃に持ち込まれた。

大陸における結核には古い歴史があり、また洋の東から西まで広く分布している。

牧畜によって牛型結核菌が人型に変化したと考えられている。

結核菌の感染力は弱く、感染しても発症する割合は2割と低い。

免疫機構が発症を押さえ込むのである。

だが体力の疲弊と工場寮あるいは軍隊などの密集生活は結核を国民病にしてしまった。

病原性は弱く死に至るまでの闘病生活は長いのが普通だ。

日本に特効薬スプレプトマイシンがもたらされたのは戦後である。

それまではBCGワクチンによる予防、療養所で安静に暮らすサナトリウム療法ぐらいしかなかった。

BCGワクチンの成人肺結核予防率は50%ぐらいで、この国民病を根治することは出来なかった。

結核が公衆衛生問題になったのは産業革命の結果である。

蔓延時代の平均年齢が示されている。

ロンドンにおける1840年データでジェントルマンの家族は45歳、職人商売人の家族では26歳、職工労働者召使いの家族で16歳とある。

戦慄させられる数字だ。

農村ではそれぞれ52歳、41歳、38歳であった。

都市と農村の差は生活環境の差である。

ロンドンでは1日14~5時間の労働、川べりの湿地帯の長屋では1部屋に数家族が1ベッドに4人寝ると云った生活だった。

人々は当時の慣習に従ってゴミや排泄物を屋外に投棄した。

長屋の真ん中の共用トイレは年中溢れて悪臭を放つ。

ちょっと裕福な人はおまる(可搬便器)を部屋に持ち込む。

朝になるとそれをドブや川にぶちまける。

2階に住む人がおまるの中の排出物を、屋根に投げ捨てている銅板画が掲示してある。

死因の第1位は結核だった。

日本は150年遅れで産業革命に入った。

工場法は半世紀遅れだった。

最初の世界大流行インフルエンザ・スペイン風邪による死者数は、そのとき闘われていた第一次世界大戦の全戦死者の5倍になるという。

スペイン風邪と云うが最初の発生はアメリカ・カンザス州の陸軍キャンプだという。

症状が似ているのでかぜと云うが、インフルエンザは、かぜとは別物である。

インフルエンザも歴史が古く日本では平安時代に流行した記録がある。

インフルエンザの怖さはRNAワールドの生命体だと云う点にある。

DNA遺伝子だと簡単には変異が次世代に伝わらないが、RNAだと変異したまま次の増殖に入ろうとするから、いわば忍者ウィルスで、特効薬を発明しても、ワクチンを製造しても、その網をスルリとくぐり抜けてしまう天性を備えていることだ。

エイズ・ウィルス対策が至難であるのと同じなのだ。

おまけに飛沫感染空気感染するから性的接触だけが感染手段のエイズとは比べものにならないスピードで広がる。

現在のように交通手段が発達し、往来の激しくなった時代では世界同時発生すると可能性が高い。

毎年冬季に向かう頃になるとインフルエンザの予防ワクチンを接種して貰う人も多い。

有効期間は半年だと聞いている。

でも鳥インフルエンザには効かないとのこと。

その年に流行するであろうインフルエンザ株は、WHOその他の機関が協力しあってほぼ推測できる段階に達しているので、ワクチン(3種ほどの混合物)をあらかじめ製造しておき、それを接種するのである。

あたらずとも遠からずの、抗原性が少々変身したぐらいのウィルスまでならこの手の免疫で撃退できる。

だが大変身したウィルスにはワクチンを製造できない。

製造にいたるまでに発生後半年は必要だという。

株(A型)の種類は、Hに16種Nに9種計144種。

例えば、世界で流行する人インフルエンザは、30年前のソ連かぜH1N1とその9年前の香港かぜH3N2の小異変系統ではないかと推定する感じである。

[ 結論 ]
感染症が世界史を、どう動かしてきたのかを学ぶ時には、例えば、危機迫るインフルエンザのパンデミック感染にたいする警報も重要ではあるが、同時に、人類の歴史が感染症の影響を強く受けてきたこと、すなわち、インフルエンザだけではなく、チフスや梅毒などの感染症が歴史を作ってきた点に気づくことである。

たとえば、梅毒感染によって、性的に寛容な社会を回避し、一夫一婦の厳格な性関係を維持することを求めて、一夫一婦の家族システムを生み出した歴史があるといった事実を正しく認識することが大切です。

また、カトリックからプロテスタントを生んだとか。

疾病治療のための医学の革新のみならず、疾病予防の観点から公衆衛生の思想が生まれ、その結果として、都市計画や行政の思想を生み出した等々。

つまり、医学的な知見以外にも、国際関係論等の他学問への寛容な受け入れと、解釈が必要だということ。

そのことは、感染症対策に関する課題が、医学が単に自然科学の課題にとどまらず、文理をこえた広範な問題意識と歴史的経緯に関する総合的な知識を要し、同時に、その理解のためには、妄信的な医学信仰にとどまらず、広く関心を持ち続けることの重要性をも示しているものと思われる。

どうしても、西欧医学や近代社会システムとしての観点から感染症と世界史の関係を捉えがちではあるが、敢えて、ないものねだりとして、イスラム、インド、中国などの文明において、疾病がどのようにみなされてきたのか、また、西欧自然科学による疾病観、衛生観の限界も、また、検証していく必要があるのではないかと考える。

[ コメント ]
人にはさらにB型C型インフルエンザ(あまり重要ではないらしい)がある。

鶏や家禽を大量死させた高病原性のA型インフルエンザ・ウィルスH5N1が、もしも、人間感染能を獲得したなら、目も当てられぬ惨事に発展する。

医者看護師は寝込み、救急車の運転手がいない。

輸送機関が止まって食糧さえ手に入らないかも知れない。

ブッシュ元大統領は、夏の休暇中に新型インフルエンザの脅威を読書で感じ取ったと云わっている。

米国は対策を国家戦略と位置づけた。

その行動力は世界を動かし、各国とも一大政治問題として対策を取り上げていたことを思い出される。

ブッシュさんは理系ではないが敏感に危機を感じ取ったのだろう。

理系ではない点は同じでも、小泉元首相と比べて新事態への危機感に雲泥の差があった。

国家戦略に取り上げられるほどの重大性は、新型インフルエンザ・ウィルスの強毒性に理由があった。

今までのインフルエンザが弱毒性で、人には呼吸器消化器疾患に留まったのに対し、今度のウィルスは全身疾患を招く。

HA蛋白の解裂活性化部位の加水分解が感染の引き金であるが、その分解酵素プロテアーゼは宿主細胞から提供される。

在来ウィルスは部位が唯一のアミノ酸からなるが、鳥インフルエンザ・ウィルスはそのほかのアミノ酸を含む7~8個の鎖から成り立っている。

前者用のプロテアーゼは呼吸器あるいは消化器だけでしか貰えないが、後者の構造なら全身至る所で分解できるのだそうだ。

一旦、流行が始まったなら世界には何億もの死者を出すと想定されている。

トルコの鳥インフルエンザ・ウィルスは、鳥よりも人細胞に強く結合する遺伝子変化を生じており、さらに、人体内で効率よく増殖するような遺伝子変化も起こっていたという。

そこから何を学ぶかは、その人の考えに大きく依存するので、可能な限り、フラットな立場で、物事を俯瞰できればと、強く思う。

【参考記事】
繰り返される病との戦いで得たもの 数千年の歴史から学ぶ、感染症パンデミック後の世界と人類はどう変化してきたか
https://president.jp/articles/-/40089

感染症と歴史 - 長崎大学熱帯医学研究所
http://www.tm.nagasaki-u.ac.jp/newrect/japanese/pdf/2020chireko.pdf

<歴史から考えるコ○ナ危機>第1回「明治のコレラ~令和のコ○ナ」
https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3557

<歴史から考えるコ○ナ危機>第2回「台湾のコ○ナ対策から学ぶ――中国情報のリテラシーを問う」
https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3558

<歴史から考えるコ○ナ危機>第3回「グローバル化時代の感染症にいかに対処するか?――歴史に学ぶ対応のヒント」
https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3559

<歴史から考えるコ○ナ危機>第4回「文献紹介 ―「歴史」のなかの感染症、新型コ○ナ問題」
https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3567

<歴史から考えるコ○ナ危機>第5回「疫病史観からコ○ナ危機を考える」
https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3602

福沢諭吉の感染症コミュニケーション<前編>多様性を含んだ思想のエネルギー
https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3741

福沢諭吉の感染症コミュニケーション<後編>「全員を守るため」―明治時代のレトリックを越えるとき―
https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3743

コ○ナとはいったいなんだったのか、反省会をやってみた。
https://blog.tinect.jp/?p=77814

それでもコ○ナは施設や病院を麻痺させ、弱い人を殺してしまう。それをわかったうえで議論していますか。
https://blog.tinect.jp/?p=79055

ポストコ○ナを俯瞰する その1:日本の行政は「想定外」においてどうすれば納得感ある政策が打てるのか? 意思決定プロセスの透明性こそが鍵
https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20201130_1.html

ポストコ○ナを俯瞰する その2:次の感染症パンデミックの被害をどのように最小限に抑えるか? デジタル技術を駆使した先進感染症対策を構築し、パンデミックになる前に抑え込む
https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20201130_2.html

ポストコ○ナを俯瞰する その3:コ○ナ危機を契機とした地方創生推進のポイントは?
https://www.mri.co.jp/knowledge/column/20201130_3.html

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