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忙しい金管楽器吹きのためのウォームアップの話

子供の頃、体育の授業が始まり最初にするのはストレッチや準備体操でした。

大人になって卓球やストラックアウトなんていうお気軽にできるスポーツやゲームをする事になり、準備体操やストレッチをせずにやってしまい身体を痛める人を多く見ます。

というわけで吹奏楽部なんていうのは文化部の中の体育会系と呼ばれるのと同じように、管楽器の演奏はスポーツを行うのと何ら変わりありません。

・理想のタイムや重量を目指す=理想の音楽を表現する
←そのためにフォームの改良や筋トレを行う=姿勢や身体の動きを確認、基礎練習を行う
←様々な身体についての文献や走法などの映像を見て研究する=教則本や奏者の映像や実際の演奏を聞いて研究する

と大変似た工程を持っています。

しかし、学生でもない限り多くの金管楽器奏者や金管楽器愛好家は日々の仕事やご家族の行事、他の趣味に追われ、より少ない時間で最高の演奏を出す事を求められます。

そこで今日はより短時間で運動でいう、ウォームアップを行い週に1度のリハーサルや短時間で集中的に行う個人練習の効率を十二分にあげるためのブログです。

1、顔のストレッチ

最初に答えを載せてしまうのが早いと思いますが、これを見たら全部わかります。
具体例は10:41~

素晴らしいトランペット奏者のEric Miyashiroさんのインタビュー動画です。
比較的わかりやすい英語でお話してくださっていますので是非ご覧ください。

さて、多くの奏者が自動車や電車に乗ってリハーサル会場へ向かうと思うます。
長くて1.5時間、短くて2~30分ぐらいかけて大体の奏者がその場所に着くと思いますが、その間にもし一人になる時間があったら顔の筋肉のストレッチをお勧めします。

我々、多くの日本人は金管楽器を発明した西欧諸国の人間に比べ表情を顔に出しません。そのため仕事を終え合奏に向かう頃には顔の筋肉は固まっています

そのため合奏に向かう道中で顔の筋肉、特に演奏するのに使う口の周りの筋肉をほぐしておきましょう。声は出さず、あ行を本気で叫ぶつもりで口を動かすとその周辺の筋肉が大きく動きほぐせます=血流をよくできます。

またBuzzingではなく、子供がふざけてするように唇を震わせ唇の周りの筋肉をほぐすこともできます。

これらは人に見られたら恥ずかしいですが、車の中や路地を歩いている最中、練習場所に着いて化粧室にいる間にでも十分にできます。

100m走の世界記録を持っていたウサイン・ボルトさんや平泳ぎの金メダリスト北島康介さんが練習に入る前、いきなり本気で走り出したり泳ぎだしたりするというのはなかなか想像できません

それと同じでスポーツ選手が競技にかかわらず練習の前に必ず準備体操やストレッチを必ず行なっているのと同じで、我々も移動の最中や練習室に着いてからの数分、演奏に特に使う首から上のストレッチはその後の練習の効果を高めてくれます。

2、呼吸のウォーム・アップ

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これも移動中や楽器の準備中、つまり楽器を使わないで行えるウォーム・アップとなります。

日本語を話している時にすこし意識をしてみるとわかるのですが、僕たちの母国語は慣れているせいもあると思いますが本当に少量の息のみで話すことができます。

それに比べて金管楽器はどのようなイメージがでてくるでしょうか?
少なくとも普段話している時よりもより

多くの息
少ない息
早い息
遅い息
様々な方向への息

を使っていそうです。そのため吸ったり吐いたりする息を縦横無尽に操作する必要がでてきます。
(僕の理想は〇〇な演奏をしたいと思ったらそのような息の操作に”なった”という自然な動きが理想です。そのような息の操作を”行ったから”〇〇な演奏になるは違います。便宜上、上のような説明を行っています。)

そんな息の操作を行うには横隔膜付近にある様々な筋肉の連動が必要ですが、普段日本語を話しているぐらいだとそこまでその筋肉は使っていなさそうです。

なので移動中や楽器を持っていない時、楽器を吹く前に息の操作をより効率的に行えるようにウォームアップを行います。

・自律神経の安定

動画を見るのでもいいですが、忙しい人のために

4秒間鼻からゆっくり息を吸い、4秒かけて口からゆっくり息を吐く、その後4秒間リラックスし、また吸い始める。これの繰り返しです。

この動画でも紹介していますが、お仕事あがりや学校の後、つまり普段の生活と音楽を表現するというのは職業音楽家でもない限り別世界です。

その演奏という特殊な場で自分の理想に近づくために自律神経を安定させ、いつでも心穏やかな状態でウォームアップを始めることはとても大切です。

自律神経が安定=リラックスしている事により自分の身体や考えを冷静に客観視することができより可動部を増やしたり、今まで気づかなかった自分自身のことについて気付いたりすることができます。

・呼吸筋の準備体操

歩いている時や楽器の準備中にできる呼吸筋の準備体操です。
(できるだけ演奏時と同じ姿勢が好ましいですが、時間や余裕があれば行います)

・息を吸いきったり、吐ききったりする
・息を吐ききった後にさらに吐こうとする
・息を吸った後できるだけ長く伸ばす
・息を吐ききったり吸いきったりする時に無駄な筋肉に力みが発生していないか認識する
・さ行&は行の音が息を吸う時になっている場合は気管から口内のどこかに抵抗がある可能性が高い(人による)、深呼吸やあくび(=沢山吸う場合)をする時にはあまり鳴らない

今軽く考えただけでもこれだけでました。

呼吸筋の準備体操→横隔膜の伸び縮みをし易くする=肺の増幅や収縮をし易くする→呼吸による空気の操作をし易くする→唇の振動を補佐する

こんな感じでしょうか、さらに舌による口腔内の面積を変化させる事によりさらに空気の速さや量を変え唇の振動の仕方を変化させることができます。

ベルリン・フィルのSarah Willisさんの動画です。
演奏時の口腔内をMRI撮影されています。

という風に普段の会話で使う呼吸筋の可動域と金管楽器を演奏する際に使う呼吸筋の可動域は確実に変わってきます。

そのため練習に入る前のわずかな時間でウォームアップを行う事によりその後の楽器演奏をし易くすることができます。

3、その他のウォーム・アップ

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上記2つのウォーム・アップの他にもしできることがあるとすれば、スポーツ選手と同じように演奏に使う指や手、腕、肩、首、また座奏を続ける際に使うお尻から腰の筋肉のストレッチは有効です。腰痛予防にも効果的です。

また実際にマウスピースだけでバジングや息の通りを確認する作業も使えます。(:マウスピースだけでバジングをしている最中に楽器にマッピを挿した時の音と、実際にマッピを挿してから演奏するのでは音色や鳴りは異なります。なのでマウスピースでの演奏はあくまでマッピを挿した状態での通常の楽器演奏をより良くするためのヒントを知るためのものと考えるべきです。)

まとめ

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仕事を詰め込みすぎたり、他の趣味を詰め込みすぎたがための時間的余裕のなさは抜本的な解決=量を減らすことが必要になってきますが、生きていく中でどうしても避けられない繁忙期には上記のようなウォームアップは効果を現すことと思います。

またそうでなくても、楽器の練習やリハーサルの前に一呼吸置くのにウォームアップは効果的ですし、自分の中の音楽家スイッチを入れるいいトリガーになるかもしれません。

せっかく作った楽しい音楽の時間です、短い時間でもより効果的に使えるように料理やスポーツ同様”下準備”もしてみてはいかがでしょうか?

ご読了ありがとうございました。


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