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【ブラスバンド】ビブラートの話
おはようございます、音楽家の河野一之です。
先日とあるバンズマンからご質問があったのでその回答がてらnoteに残しておこうと思います。
お知らせ
まずはお知らせをさせてください。
初見、初心者大歓迎、残席わずかです!
①9/18 9:30~15:00金管バンドのマスバンド、ホールで吹きませんか?
上手でなくて大丈夫。ただ有名な曲を音楽や金管バンド好きで集まってホールで楽しむ会。
プログラム
・Home of Legends / PLC
・Arsenal / J. Van der Roost
・Canterbury Choral / J. Van der Roost
・The Year of The Dragon / P. Sparke
・Punchinello / W. Rimmer
・I Vow to Thee, My Country / G. Holst, arr. Philip Sparke
・Pomp and Circumstance No. 1/ E. Elger
・Highland Cathedral / Korb & Roever, arr. H Lorrim
9/18(土)9:30~15:00
②河野企画ではオンラインレッスンor 対面レッスンも開講中!
無料での体験レッスンもありますのでぜひ以下のリンクまたはDMでお問い合わせください!
③12/19 18:30予定 河野企画5周年企画「The Tuba Recital」
場所:埼玉県南越谷駅、新越谷駅徒歩5分サンシティ小ホール
The Tuba Recital -Project Kouno 5th Anniversary-
出演
ソロチューバ、指揮
河野一之
ピアノ
清水初海
指揮
今井斐
ブラスバンド
Riverside British Brass
詳細は追って
【ブラスバンド】ビブラートの話
ビブラートとはルネッサンスやバロックの時代(15~18世紀半ば)に生まれた「演奏の際に音の高さ=音程をある程度保ちつつも揺らす奏法」のことを言います。
英語のVibrateも似たような言葉ですが、今回は振動というよりも音を揺らすことで音楽の表現の幅をより大きく見せる意味合いで使われます。
そして今回のご質問は
「英国式金管バンドでビブラートを多用する理由とはなんでしょうか?」
というご質問でした。
このご質問にお答えする前に、少し前提になる知識がありますので改めてご紹介しておきます。
用語解説
Brass Band=金管バンド、ブラスバンド
Wind Band, Wind Orchestra=吹奏楽、ブラバンまたはブラスバンド(日本限定)
なのでここでの金管楽器と打楽器のいわゆる英国式金管バンドはブラスバンドもしくは金管バンドと呼称します。
前提知識
日本人が日本で金管バンドを演奏する(打楽器は別の話)=つまり金管楽器を演奏する場合、90%の方は「中学校で吹奏楽を経験し、その後金管バンドもやり始めた」という方です。それ以外は小学校で経験済み、または社会人金管バンドで初めて金管楽器を手に取るなどです。
なので多くの金管楽器奏者は僕も例に漏れず、金管楽器を吹奏楽で始める方が多く、その金管楽器または音楽的基礎の土台が吹奏楽ベースとなっています。
ここで例えば金管バンドでいうコルネットという楽器を例に出します。主にソプラノ・アルト・テナー・ベースの4声の中のソプラノを担当する楽器なので主旋律を担当することが多いです。
しかし、多くの日本のコルネット奏者は吹奏楽での基礎知識+トランペットからの持ち替え奏者が多いわけです。
ここではっきりとした役割の違いが生まれます。
吹奏楽でのトランペットはもちろん主旋律やソロもあります。しかし、吹奏楽で最も多く主旋律を担当しているのはクラリネットやフルートなどの木管高音域楽器です。注:割合の話なので、もちろん曲や作編曲者次第です。
なのでトランペットもハーモニーの礎を担ったり、打ち込みを行ったりと伴奏的役割を木管高音楽器群に比べたら多く担うわけです。
そんな伴奏を演奏する際にビブラートなどの装飾的表現を多用してしまうと伴奏の上で奏でられる主旋律の邪魔をしてしまいます。なので多くの場合、吹奏楽でソロ演奏以外ではビブラートを推奨されることがなくストレート(ビブラートをせずまっすぐ音を演奏する)場合が多いのです。
これが前提条件です。
なので多くの場合吹奏楽でトランペットを演奏されていた方がコルネットを演奏される機会が多い=吹奏楽のトランペットのパートや奏法と金管バンドでのコルネットの奏法を比べたり、他のフリューゲルやユーフォニアウム、トロンボーンなどの吹奏楽で使われる金管楽器と金管バンドで使われるこれら楽器と比べて
「英国式金管バンドでビブラートを多用する理由とはなんでしょうか?」
という質問に至ったと想定し、それを踏まえ歴史的背景を踏まえた事実と河野の見解を通してお答えしていきたいと思います。
歴史的事実
ブラスバンドが生まれて約200年ほど経ちましたが、初期からブラスバンド・コンテストが開催されて間もない頃までは、ブラスバンドのためのオリジナル作品はまだありませんでした。
ではどんな音楽が奏でられていたかというと多くの場合、賛美歌、民謡、そしてオーケストラやオペラなどから編曲やそのまま読み替えをして演奏をされていました。
その後Percy Fletcherが「労働と愛」をNational Finalsという大会のために作曲されたものが"コンテストのための"ブラスバンド初オリジナル作品となっています。
この事からブラスバンドでの演奏創成期というのは
賛美歌、民謡=歌
オーケストラ、オペラ=弦楽器
を主体としたアンサンブルから模倣をして演奏されていたという事実があります。
そこで誰しもがイメージをしやすいと思いますが、歌&弦楽器というのはビブラートを行う事が基本となっています。というわけでそのルーツを模倣しているブラスバンドでもビブラートをかける伝統がそのまま残っているというわけです。
現代ではブラスバンドのオリジナル作品が増大+管楽器演奏法が当時よりも進化したために歌や弦楽器のビブラート法ばかりではなく、管楽器独自の演奏の良さを表現するために①ビブラートをあえてかけない②ビブラートを歌や弦の奏法とは違う管楽器独自のかけ方をするという方法が取り入れられ様々な種類のビブラートが生まれています。
河野の見解
ここからは河野の見解です。そもそもなぜビブラートは使われるのでしょうか?
これは僕たち人間の習性から来ていると思います。それが
「1/fのゆらぎ」という方程式です。
人は予測できない不規則なゆらぎにリラックス効果や心地よさを感じる生き物です。例えば木々のさざめきや川の流れ、海での波の満ち引きの音、焚き火の火、ロウソクの炎などが代表的です。
なので反対に時報や電子音の音程的にも音量的にも全く揺れが感じない音を僕たちは不快に感じ意識を向けさせられたりするわけです。
しかし、ビブラート=揺らぎを加えた歌唱や楽器の音色はどうでしょうか?またピアノなどのビブラートをつけられない楽器も曲のテンポ=速さを揺らしたり、音量を変えたり、鍵盤を弾くタッチを変えることにより音色を変えたりし揺らぎ、つまりあえてPCで作った音源のような完璧なテンポや音量、音程感ではなく、不規則性を生み出すことで聞き手に心地よさを提供することができるのです。
その音楽を表現する方法の1つがビブラートです。
ましてオケや吹奏楽といったたくさんの種類の楽器を要するアンサンブルに比べ、金管バンドというとても限られたアンサンブル、つまり金管楽器と打楽器、さらにミュート(消音器 )を使って音色を変えるという選択肢しかないアンサンブルにおいて、少しでも音楽表現の幅を広く取り様々な音楽を聴衆に楽しんでもらうためにはビブラートは(吹奏楽での演奏と比べて)多用されますし、必須になってくるのです。
まとめ
自分も感覚としてしては分かっていましたが、質問をされることで新たな学びとなりました。ご質問いただきましたI様、誠にありがとうございました。
また皆様の中で何かご質問ありましたら音楽にかかわらず、英国、個人事業主、留学、英語など何でもご質問ください。答えられるものには誠心誠意お答えさせていただきたいと思います。
Thank you
Kazz
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