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メトロ・フィルム

先日誕生日を迎えて、26歳になった。
ついに20代も後半、立派なアラサーの仲間入りである。
20代後半と言えば結婚して家庭を築く人もいればキャリアを積む人もいて、いよいよ人生の本番に突入、というイメージだが・・・

私は、現在人生で最大のモラトリアムに突入している。

そもそも今までの人生、「この大学に行く」「この仕事をする」「何年目で転職する」といった目標を設定して、そこに向けて努力をするというルーティンの繰り返しだった。それが自分にとっての当たり前で、努力は一生続くものだと思っていたのだ。

運良く挫折や失敗はいつの時代も小さなもので済み、ある程度のやりたいことは達成してしまった。そしてその先にあったものが、「この先どうする?」というモラトリアムだった。
燃え尽き症候群とまではいかないが、学生の頃のテストや受験勉強・就職活動などのように全力で頑張るイベントが無くなり、拍子抜けしてしまっている。

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受験勉強と言えば、高校生の頃、東京の中のド郊外の学校から水道橋の予備校まで1時間半くらいかけて通っていた。電車に乗っている時間が長すぎるので、単語帳などを見ていても大体途中で飽きていた。飽きた時にiPodで音楽を聴きながら、電車の窓の外の景色を眺めるのが好きだった。

電車のルート的には、まず初めに西武線の上り電車に乗り、高田馬場で東京メトロに乗り換え、さらに飯田橋で総武線に乗り換えて目的地に向かった。
郊外の景色から途中地下鉄を挟み、再び総武線で地上に出た時に景色が急に都会になっていて面白かった。

当時、高校生にしては渋めだが秦基博の曲をよく聴いていて、「Documentary」というアルバムが気に入っていた。その中の「メトロ・フィルム」という曲の歌詞で、

電車は長い東京の地下をくぐり抜け
川沿いの景色が顔を見せる 夕映に燃える景色があらわれるんだ

というフレーズがあり、その部分に合わせて地下鉄から総武線に乗り換えると、歌詞と目の前の風景が重なってなんだかエモかったのを覚えている。

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(もしかしたら違う駅かも・・・)

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最近は、世の中を脅かすウイルスの件もあり電車の中は人がまばらだ。
Spotifyで秦基博の曲が配信されているのを見つけたので、同じ曲を久しぶりに通勤電車の中で聞いてみた。

勉強の合間に好きな音楽を聞いていた高校生の頃とは違って、今は仕事はそれなりに頑張ってはいるけど、他のことを犠牲にしてまで全力を注いでいることがない。                                                                                                                      大きな不安はなくても、人生の中間地点でなんとなく手持ち無沙汰になっている状況は、この曲の主人公と同じ状況のような気がしている。

こんな今の自分に焦りを感じる時もあるけれど、やっと何にも追われることなく自由に毎日を送れて安心しているのも正直なところ。
もうちょっとこのモラトリアムを楽しませてもらおうと思っている。


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