★【投手】けん制
けん制とは、投手がボールを走者のいるベースに向かって投げる行為のことです。もし、リードを取っている走者がベースに戻るよりも先にベース上の野手にタッチされれば走者はアウトになります。
けん制は、走者をアウトにすることを狙うだけでなく相手チームへプレッシャーを与える…等メンタル面への影響も与えます。投手と走者の ”(けん制をめぐる)駆け引き” が試合の結果に大きく影響することもよくあります。
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けん制球を投げる理由
「けん制」は、走者がいるときにリードしている走者に対し投げるもので、例えば走者が盗塁を試みるタイミングでけん制すると、走者はけん制に対応しなければならないため盗塁・進塁に集中できなくなります。
けん制は、「何のためにけん制するのか?」意味を理解し意図をもって行なうことがポイントになります。
◉ 走者のリードを小さくする
けん制は「走者をアウトにする」ために行なうこともありますが、なかなかアウトにできるものではありません。けん制をすることで走者に対し”けん制がある”ことを意識させ、盗塁をしにくくする・リードを小さくする効果があります。
走者は盗塁を試みる際、次の塁までの距離を少しでも短くしようと大きくリードをとる傾向があります。ただし、大きなリードは盗塁成功率UPと同時にけん制でアウトになる確率UPにもなります。
けん制球あることで走者に”けん制でアウトになりたくない…”という心理が生まれ、無意識に”先に進む”ことより”戻る”ことを優先させリードが小さくまります。これは、盗塁がしにくくなることにプラスしてその後の打球での進塁が遅れ間一髪でアウトにする可能性を広げること にもつながります。このようにけん制により相手走者の進塁を制限することができ、そのことが相手チームの攻撃力を抑えることができます。
≪けん制が効果を発揮した例≫
1塁走者にしつこくけん制。少しリードが小さくなり、バントをしてきたが二塁で走者をアウトにできた。
◉ 走者をアウトにする
アウトにするけん制は、試合の中で何回もあるプレーではないです。
例えばサインプレーを使いけん制をしても走者をアウトすることはなかなかなく、またサインプレーは一度使ってしまうと警戒されてしまうので以降使うことが難しくなってしまいます。
アウトを狙うけん制は、試合の中で”ここぞ!”というところでのみ となります。
≪ここぞ!のシーンの例≫ 接戦の終盤で失点を避けたい展開での2死満塁
アウトにできる確率が高い走者は、「意外と油断をしている2塁走者・1塁走者」です。
● 1塁走者 ⇒ 満塁でファーストが塁についていないとき等は、油断しリードが大きくなっているケースが多い。
● 2塁走者 ⇒ 基本的にショート・セカンドは塁にはついていないのでリードが大きくなりがち、うまく連携できればアウトにできる。
また、左投手の場合は上手なけん制で1塁走者のけん制死を狙うことができます。
◉ (打者・走者の動きから)相手の意図を探る
相手がどのような作戦を仕掛けてくるか?探るときに有効となるのがけん制です。
≪例 無死走者1塁≫ 攻撃側の作戦は、様々なものが考えられます。
● バント
● バスター
● 盗塁
● ヒットエンドラン
● セーフティバント
これらの作戦の中で相手がどの作戦をしてくるか?探るためにけん制をします。
けん制することで相手の作戦が見えてくる例としては…
● バント ⇒ 打者は最初バントに構えていないが、
けん制時に投球と勘違いし、バントの構えをする
(バントのサインが出ていることがバレてしまう)
● 盗塁 ⇒ けん制時に、逆を突かれる・ぎこちない動きになる
(盗塁のサインが出ていることがバレてしまう)
◉ 間をあける
単純に”間を置く”ためにけん制球を投げることも有効です。タイミング的に一度仕切り直したいときや、相手打者の集中力を削ぎたい場合に使います。
◉ 心理的な優位性を持つ・相手へプレッシャーを与える
けん制を使い走者の動きに制約を与えることができると、その分打者への投球に意識を向けることができるようになり対打者・対走者ともに心理的に優位に立つことができます。
これは、逆に言うと相手打者・走者にプレッシャーを与える効果もあり、相手チームの戦術・攻撃プランにも影響を与えることができます。
(例 投手けん制上手い→盗塁・ヒットエンドランが仕掛けにくい)
けん制技術を高める
けん制は単なるテクニックだけではなく戦術的な要素と駆け引きが絡む投手の大きな武器であり、けん制技術を持つことは試合の勝敗に大きく影響を与えるものになります。
◉ 走者の動きを観察する
効果的なけん制を行なうには、相手走者の動きをしっかり観察することが重要です。
走者が出たら、どのような動きでリードを取るか?等行動パターンを把握できるよう観察し、盗塁の予兆がないか?(体の角度・重心移動・足の動き…)を注意を払います。
◉ 投球フォームを工夫する
けん制を投げる際の投球フォームは、セットポジションを取ってからけん制を投げるため目線や顔・首の動きを工夫して走者にけん制を投げることを悟られないよう(ギリギリまで打者に投げるか?けん制を投げるか?わからないようなフォーム)にしつつ、スピーディなフォームで投げることが重要です。
またコントロール良く投げるためには安定したフォーム(普段の練習からけん制のフォームを固めておく)が重要になってきます。当然、ボークにならないよう投げるベース(1塁・2塁・3塁とも)の方向にステップを踏むことで、コントロール良く投げることができます。
◉ タイミングを計る
けん制を投げるタイミングは、走者の意識が”投手に向いていないとき”・”先の塁に行こうとしているとき”・”体重が前にかかっているとき”にけん制できれば、走者の逆をつくタイミングになり走者がベースに戻るタイミングが遅れアウトに取る可能性が高くなります。
(例) 大きな歩幅でリードをとり始める走者に対し、
右足に重心が乗った瞬間に素早くけん制を投げる
また野手がけん制を捕球しスムーズに走者にタッチできるようタイミングを合わせる(例 2塁けん制の場合、野手は最初からベースについていない)ことも重要になります。
ただし、いつも一定のタイミング・同じ動作でけん制していると走者もわかってくるため、セットしてから長くボールを持つ…等工夫も必要になります。
◉ 速いモーションで投げる
けん制を投げるときはモーションを速くすることで、走者がベースに戻る時間を短くすることができます。
ただし速いモーションで投げると暴投になる確率も上がるため、モーションを速くするだけでなく無駄のないコンパクトな動きになるよう普段の練習から取り組んでおくことが重要です。
◉ タッチしやすい位置に投げる
けん制は送球を受けた野手が走者にタッチしてアウトが成立するため、野手がタッチしやすい位置に投げることが重要です。
イメージはベースの上に投げるより左側に投げる感じです。ただし、狙いすぎると暴投になってしまう可能性が上がるため注意が必要です。
◉ 偽投も入れる
2塁けん制は”投げるふり”である偽投が許されているので、有効に活用することでリスク(暴投等)なく走者を警戒することができ、また相手の作戦を見抜くことができる可能性もあります。
◉ 野手と連携する
けん制は投手の技術だけで行なうものではなく、野手と連携をして走者に大きなリードを取らせず常に注意を守備陣に引き付けておくことが重要になります。
守備陣全体の連携には、コミュニケーションを常にとり様々な状況でどのように動くか?普段の練習から繰り返すことで確認しておき、試合の中では守備陣全員が走者の動きに注意を払い、タイミングよくけん制への対応を行ないます。
投げなくてもできる”けん制”
けん制球を投げなくても、走者に対し盗塁等走りにくくするけん制をいれることは可能です。
● セットポジションから投球までの時間を一定にしない(変化をつける)。
● セットポジションから投球までの時間を長くする(走者をじらし、スタートを切りづらくする)。
左投手のけん制
左投手は右投手とは違い”セットポジションでの投球時に1塁方向を向いている”ため、走者から見ると
ホームへの投球なのか?
けん制なのか?
の判断が難しく、左投手のけん制は大きな武器と言えます。(ただし、走者にとっても投手のモーションを確認しやすくなる とも言える)
このメリットを活かすことでピンチを防ぎ自分の投球を楽にすることができますが、そのためには必要な準備があります。
けん制のタイミング
「走者が出たから…」といって何回もけん制すると、相手に警戒をされたりけん制のタイミングを掴まれ盗塁を許す可能性が上がってきます。
走者をアウトにするけん制をするタイミングは、
● 走者に無関心だと思わせている時
● 相手が盗塁を仕掛けてくる時
が良いタイミングです。
(例1 走者の意識を探るためにけん制する)
走者が出たら、その走者のリードが
どのように構えているか? どれくらいのリードの幅か?
を確認します。
その上で相手の動きを探るために一回けん制を入れ、その後の走者の動きを観察します。
● どのくらいのタイミングで帰塁したか?
● リードの幅・構えは変わったか?
⇒ 意識が進塁・帰塁のどちらにあるのか?変化したのか?
この観察から、”速いけん制でアウトにできそう…” ”盗塁の可能性がありそう…” と判断します。
(例2 盗塁の可能性があるカウントでけん制する)
2アウトで打者を2ストライクに追い込んだとき等、走者が盗塁を仕掛けてくる可能性が高いカウントでけん制を入れると効果的です。
けん制のパターン
けん制のパターンは1パターンだと相手に「投球か?けん制か?」「どのタイミングで投球を開始するのか?」見抜かれてしまうため、パターンを増やしておくことが重要です。
試合の中でいきなりけん制のパターンを変えることは難しいので(特にピンチのとき等 状況把握・判断をする余裕がない時は、その場で対応…はほぼできない)、普段の練習の中でけん制のパターンを数パターン準備し練習しておくことでいざという時に出来るようになります。
具体的には、以下3種類のパターンがあるとけん制が非常にしやすくなります。(もっと種類があっても良い。最低限このくらいあれば…のイメージ)
● 走者を見ながら、ノーフェイクでけん制。
⇒ 一番簡単なけん制で、アウトを取りに行くけん制ではないです。
● 顔は捕手方向に向けておき、投げる直前に走者を見るけん制
⇒ アウトを取りに行くときのけん制です。
上記2パターンが基本的なけん制のパターンで、試合が進み相手がけん制を何回か見て慣れてくるとこの2パターンにのみ警戒をするようになります。
● 走者を見ながら足を上げ、一回捕手方向をみて「投球する」という
フェイクをいれてからもう一度走者を見てけん制
⇒ 試合終盤のピンチの場面で、アウトを取りに行く
”ここ一番の”けん制です。
ボーク
けん制には厳しいルールがあり、ルール違反のときは反則投球となる”ボーク”を宣告され走者が塁を1つ進塁することができます。
ボークを取られることで、試合の流れや結果を大きく左右することがあります。ボークをしっかり理解し事前に対策を取ることは、投手個人ごとに任せるのではなくチーム全体で取り組む必要があります。
ボークの定義
ボークは、投手が投球動作中にルールに違反した行為を指します。
ボークのルールは非常に細かく、投手が普段の練習の段階でしっかり理解しておく必要があります。
≪主なルール違反例≫
● セットポジションに入った後、投球以外で肩とグローブを動かす。
● 投球動作中に投手板を踏み外す。
● 投球動作をしているときに、途中で止める。
● けん制する方向に足を踏み出さずに、けん制球を投げる。
● プレートに足を置いたまま、1塁へけん制の偽投(フリ)をする。
(2塁・3塁は偽投OK)
試合では、ボークの判定は審判が行ないます。
ボークが宣告されると、走者は1つ進塁する権利を得ます。また、ボークが宣告された時点でプレイは止まりもし本塁に投球されたとしてもその投球は無効となります。
ボークを出さない対策
投手がボークを出さないためには、まず基本的なルールを理解することが前提になります。
また、けん制は走者のアウトにするための技術はときに”ボークすれすれ”となるような動きになることもあるため、普段の練習で
ボークを出さずに走者をアウトにするようなけん制技術
を磨いておくことも重要になります。
(主なけん制技術)
● 右投手が目線で走者をけん制する際は、
左肩が一塁側に入り過ぎないようにする
● 右投手は、右足をプレートから外さないでけん制動作を中断しない
当然、正確な投球フォームを体得し投球動作の中でボークを出さないようにすることも重要です。
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