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BCS前田コーチが考える練習改革論【前編】

こんにちは、練習改革by Mzunoです。

今回は、練習の改革の仕方、あるべき姿をBCS BaseballPerformanceの前田健コーチにインタビューして、記事にまとめています。今回から連載になります。


はじめに

前田コーチの専門は身体の仕組みに基づく投打の動作改善です。スマホやタブレットで、フォームを撮影し、フォームを詳細にわかりやすく分析し、指導するスペシャリストです。そのため、各種SNS、各地の指導者講習会で投球動作、打撃動作について講演されていたり情報発信もされています。

また、それだけでなく指導で効果をだすために、どういう指導者が望ましいかなどの講演やyoutubeで発信もされていますし、過去プロ、社会人野球でトレーニングコーチとして、ご活躍もされていました。

今回は、一般的な高校野球のチームの監督として、前田コーチがどういう理念で、どう強化していくか?を切り口に、具体的な練習のあり方、分量、どういうことを選手に考えてもらうか?を語ってもらいました。

練習のあるべき姿・強化戦略

ミズノ:今日はインタビューよろしくお願いいたします。1日3,4時間の練習ができる環境で、1学年10~15人くらいの高校野球のチームで前田コーチはどうチームの課題をとらえ、強化していくか教えてください。

前田コーチ:一般的な公立高校で勝っていこうと思ったら、やはり個の力が互角にならないと勝負にならないので、個の力を上げることに力を注ぎます。そうすると単純に投げること、打つことですよね。そこをまずしっかり作り上げることがものすごく大事になってきます。その部分はすぐやって追いつくものではないので、二年半の高校野球の時間をかけて、強豪私学に追いついていくメソッドをきちんとチームの中に根付かせる必要があります。どんな選手が入ってきても一定の動作はできるようになり、また体力的にも、どこと対戦しても見劣りしないように作り上げる。そういう技術、体力面において、個の力を十分高められるような仕組みがとても必要だと思いますね。

ミズノ:個の力を上げていくときに一番課題になるポイントは何になりますか?

前田コーチ:一番の課題はフィジカルだと思います。ただ、そこの前提ができたとして技術的にどうなのかって言うと、技術的にも劣ります。それは元々フィジカルが劣っているので技術がそこに乗っかってきてないわけですよね。そのため、体も作りながら技術もやっていく必要がある。そういう必要なことをすべてやっていかないといけない。それを経て、個の力が互角になってやっと勝負ができるので、それで五分五分になりますけど、どこかが足りないと互角にならないですね。

イメージ図(インタビューから作成)

ミズノ:両方あげていくような工夫した練習などの具体的なプランとかはお持ちですか?

前田コーチ:フィジカルも技術も、毎日やらなければいけないわけでもなく、限られた時間の中で必要なことに配分していく必要があります。私なら体力は年間通してやり、体力と個人の技術はほぼ冬場でも同じくらいの感じで、戦術面と個の面が大会に向けて変わっていき、それが一ヶ月なり一週間なりの全体の枠の中でどういう配分でやっていくことだと思います。

ミズノ:年間通して体力と個人の技術はやっていくとして、具体的に、どれくらい時間かけれますか?個別性がありますが、練習時間として確保するために、どのように練習を工夫しますか?

前田コーチ :野球界ではフリーバッティングやシートノックに多くの時間を費やしていますが、これだけでは成果が上がりにくいです。打撃に関して言えば、日々の練習で慣れることは重要ですが、個々の選手の弱点を特定し修正しなければ、成果は出ません。
基本ができていない段階でフリーバッティングを繰り返しても、ただ調子の良し悪しを繰り返すだけで効果が薄いです。基本を確立してからでないと、効果的な練習にはならないのです。

ミズノ:課題を発見するならフリーバッティングも良いかもしれないですけど、フリーバッティングは時間もかかるので、そこまで重点的にやる必要はないということで良いでしょうか?

前田コーチ: そうですね。選手にとって重要なのは、動作の基本を理解し、プレーや日々の練習を通じて課題を明確にし、それを改善することです。これを大命題として、個人の時間でチェックし、フォームを変えるためのドリルを取り入れた練習が必要になります。

バッティングだとABC、ピッチングだったらDEFのドリルというのがあったとます。その中でどこに重点を置くべきか明確になった状態だと個別の課題がはっきりしているので個人でも取り組めます。それぞれ動作作りなので時間がかかることではないですよね。多くの選手は基本ができていない状態で、自分の課題を明確に理解せずに漠然としたまま打ったり投げたりしているのが現状です

前田コーチが考える動作の基本は、下記のリンクから確認ください。
ピッチングのメカニズム|BCS野球教室 (bcs-bp.com)
バッティングのメカニズム|BCS野球教室 (bcs-bp.com)

課題の発見

ミズノ:課題の発見について、深堀させてください。課題を自分で見つけられない選手へのアプローチの仕方を教えていただきますか?

前田コーチ :僕はまず基礎的なことを教えます。野球の動作の基本を最初に教えていきます。それから、選手にまずは意識してやってもらって、その状態をビデオで取ります。

それで、下にあるような説明の仕方で選手に理解してもらいます。
そこでできていない事実に気づき、課題として認識されます。
じゃあ、なんでできてないんだろうという原因のところに、今度目が向くわけですよ。
それで、目が向いていったときに、ここが硬くて動かないからできてないんだ。ところに気づいていけると、そこの原因である体の改善にも目が向いていって、そこも課題になるわけですよね。

指導者はスタートで理論的なことのベースの部分をちゃんと話して、選手がまず理解した状態にしてあげることが不可欠です。それで、改善や新しい動作を身につけようと思って取り組んでいる前提があれば、その動作ができてるできてない評価に基づき、課題が明確に出てきます。何も情報がないとか、何が本当に必要なことかという前提がわからないと課題も見つけられないです。例えば指導者が、チームでは何も言ってくれないとして、ネット情報だけで野球の動作の情報を仕入れているとします。その中で、あまりにも情報が多すぎて何が正しいのかわからない状態になると、課題はぼんやりとしたままやるべきことが分からない。それで、その課題かどうかもわからないけど、ネットで、この方法で球が速くなるには良いとあるからやってみよう。という感じになります。基本として何が本当に必要なのかという、最初のレクチャーがチームで必要ですね。

ミズノ:現場を見ていてもyoutubeなどでいろんな情報が勝手に入ってきます。その選手にとって合っていない練習方法をやってしまう選手もいるとよく指導者から聞きます。やはり、判断基準がぶれないために事前のインプットは本当に大事だと改めて思いました。

指導者目線でいうと、成長の兆しがありそうな選手に成長するようなアドバイスしてあげて、成功体験みたいなものをポンと見える形にしてあげて、他に波及していくことも大事ですか?

前田コーチ :そういうのも手かもしれないですね。やっぱり、良くなる子は元のベースが吸収できる状態、つまり体が動く状態になっているので、言ったことをどんどん吸収してくれて、どんどん良くなっていきます。だから、その選手に特別に重点を置かなくても、良くなりやすい選手はいます。体は動くが誤解してて完全に間違ってたとか言うと面白いですよね。大学生には多いです。大学ぐらいまでプレイしていると大抵思い通り体は動くけれど、野球界には曖昧な情報が多いから、明確に分かってないというところで、間違った意識を持っていますね。

ミズノ:確かに周りで明確に伸びた選手がいたら、普通興味持ちますよね。

前田コーチ:ある学校に指導に行った時はドリルができていく選手から活躍する流れができていました。できた順にどんどん上手になっていくことができたので、みんな競い合ってドリルを上達しようとしていましたよね。監督がそういうふうに仕向けたところもあるんですよね。ドリルをきちんと正しくできるように、ドリルに原因をきちんと紐付けたんですかね。

「ここの動きが出きてないよね。」
「Aのドリルの股関節の締めがまだできてないじゃないか?だからこういう動作になるんだよ。」

という選手同士での会話が日常茶飯事であるそうです。

ミズノ:すごい理解度ですね。
それを実現するには、指導者と選手双方が理解があるからですね。
BCS前田コーチが考える効果的な練習のありかたと課題の発見方法まで聞かせていただきました。
次回の記事は、今回の記事をベースとして、理解度、データ活用、興味関心について話していただきます。

引き続きよろしくお願いいたします。

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