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BASE ART CAMP diary vol.01 久しぶりに生徒となりました

はじめに
 
 もうすぐ1歳になる息子を抱きながら、dot architectsの北加賀屋にある事務所で建築家の家成さんと石田さんに原寸大の模型を作ってもらった、私が基準寸法のキッチンテーブルでPCに向かったり、夜中におしゃべりしながら、眠った娘の横でスマートフォンのメモ機能に綴った文章などをつなぎ合わせたBASE ART CAMP diary。建築と芸術が好きな「BASE ART CAMP」1期生、八木のとても私的な感情や妄想が折り混ざってできています。正直に告白すると、この記録や体験が、どこかで私の役に立てば嬉しいと思いながら、いつか、あなたの別の視点も共有してみたいです。

作家のワークショップを体感したい


 3月初旬、美術作家の谷澤紗和子さんのSNSで「BASE ART CAMP」の告知を目にしました。同時に発起人で美術作家の矢津吉隆さんや、劇作家、演出家のあごうさとしさん、舞台芸術の蔭山陽太さん、お会いしたことないけれど、ずっと気になっていた両足院の副住職、伊藤東凌さんなどなど、 関係者を見てみると、なんて豪華なプログラムなんだろうと感じました。

ACACにて夫と

 私は、本当にたまたま、高校の同級生が美術作家となり、夫となりました。外側から眺めることで満たされていたアート界隈の出来事を内側から見守ることが日常となってもうすぐ9年になります。私たちの新婚旅行のような旅は、安藤忠雄氏が設計したACAC -国際芸術センター青森への1ヶ月間、アーティスト・イン・レジデンスでした。「日常にアートが染み込んできた」八甲田山の麓にある酸ヶ湯温泉に浸かりながら思ったことが今は、懐かしいです。

  それから時を経て、ポストコロナの現代、オンラインで大学業務を行う夫を横目に、「夫たち美術作家が制作につながる、大学講師以外の収入源はないだろうか」と自然と考えるようになりました。
 職場で、私の上司が「これから社内研修で美術館へ行くけれど、アートは、わからないよ。感想を何て言えばいいのか」と話しているのを耳にしました。上司は、昇級するための研修を通常業務と並行して行っていました。私は、「これは、作家の制作に繋がるかな。大人のためのアートワークショップ企画。それも企業内研修に組み込んでもらうこと」と考えました。いつか知り合いの作家さんたちのワークショップをアーカイブ化して、業種や役職ごとの企業内研修に提案したいと思っています。 

 そこでまずは私自身が「BASE ART CAMP」で、ワークショップを体感したいと、参加を決意しました。
 最近、「はいけい ちえこ さま」でグッと心を掴まれている谷澤さんのワークショップを強く受講したいという個人的なトドメの一撃もありました。
 これから半年、矢津さんたちに誘導されながら、「BASE ART CAMP」での山登りを楽しんでいきたいと思っています。
 
#きっかけ 


かくしてBASE ART CAMPは始まった


 昔、市場のせり落とした伝票を清書する事務をしたことがあります。せり台ごとのせりの違いや字のくせを知って、値段を正確に書く仕事。朝5時の眠い時間にふらふらと自転車を漕ぎながら、丹波口の市場へ行きます。その懐かしの市場のそばに、初回の会場である河岸ホテルはありました。そしてなんと、そのホテルは美術作家さんが日常生活を送るアトリエも併用しているとのこと。初回にふさわしい場所だなと思いました。

 なんだか素敵な音楽がBGMがかかり、入り口には「BASE ART CAMP」の旗。入っていくと、大きな壁がけのタペストリーにふんわりと香るいい香り。アートの鑑賞と、オシャンティーを体感できるような場所で期待値があがります。

 関係者の方々や、講師の皆さんのご紹介を伺ったのち、受付で受け取ったA4の80色カラーチャート表で他己紹介をするという経験を初めてしました。2人1組になって、お隣のはじめましての人を、はじめましての人たちの前で紹介しました。当日は、私を含めて女性16名、男性10名の受講生がいました。お隣の人に「色」をつけて紹介することは、自己紹介よりも印象に残りました。緊張したけれど、お隣の笑顔が可愛い人の紹介をすることは楽しかったです。紹介も人それぞれでした。宝塚が好きな方や、エレキギター歴50年の方がいらっしゃるなど、他者の目から見た自分を各々が体験されていて、会場全体がなんだか和やかな雰囲気に包まれていました。私自身も肯定的な他己紹介をしていただき、気分が高揚しました。


エリアと建物を読解されて誕生した河岸ホテル

 
 続いて、「空いている場所に脚本をつける不動産脚本家」とおっしゃる、扇沢友樹さんから、河岸ホテルの紹介がありました。矢津さんがオーナーのkumagusukuがアートホステルとしての役割を終えてアート複合施設となった今、河岸ホテルはとっておきの宿泊型アート施設だと思いました。
 扇沢さんのお話で「アートは読みものだ。という作家さんがいたけれど、付け加えて、エリアとか敷地や建物は読みものだ=その場所が使われなくなった原因や今後、使用していくオーナーや使い手の物語を再編集することだ」という言葉が、心に残っています。

 

記念すべき初回講師の小崎哲哉さん

飾りじゃないのよアートは


 「現代アートとは何か」の著者であり、「Realkyoto Forum」編集長である小崎哲哉さんの90分の座学が初の学びの場でした。「モダンアートとコンテンポラリーアートは違う」という解釈から始まりました。今の解釈では、モダンは「近代」、コンテンポラリーは「現代」。そしてやはりでてきた、マルセル・デュシャン。小崎さんは、「100年前のデュシャンの影響を受けて作っているアーティストは、現代アーティストだと言いたい」とのこと。確かにこの9年、デュシャンというワードをどのくらい聞いた事か!

 それから、ゴシップとセオリーがクロスする、お金!!世界アート市場のお話。アートのお値段。スーパーコレクター8人衆や、ヴェネツィア・ビエンナーレをはじめとする、アートの祭典などなど。大好物なお話をもりもりテンポよく、実際のお写真と共に語ってくださいました。

 とりわけ、心に残った言葉は、「アートワールドがアートを決める。“Artworld”should.何かをアートとして見るためには、目が非難することのできない何かが必要とされるー芸術理論の状況や、アート史の知識、すなわちアートワールドが。Arthur Danto The Artworld(1964)」の紹介。
 そして、最後に「飾りじゃないのよアートは」と往年の歌手へのオマージュで幕を閉じたのでした。

 余韻は続き、KYOTOGRAPHIE2022の会場へと誘う4月9日の開講記念日となりました。

書き手

八木 千恵(Yagi Chie)
 1981年 愛媛県出身。
 公園の遊具設計、広告代理店の編集、コールセンター、歌手ピの沼で韓国ワーホリ、不動産営業、建築雑誌社で企画営業など職を転々としながら、結婚を機に京都へ移住。建築家と他の生業の方の対談と懇親会を企画したり、美術作家さんの周辺をうろうろしたりしています。

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