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コロナと命とトロッコと。#2

死に区別はあるのでしょうか?

1 不景気で落とす命って?

さて、前回のnote「経済を再開させないと落とす命がある。」ということを書きました。

失業率

こちららはニューズウィーク日本版において 2019 年 1 月 9 日に掲載された「失業率とシンクロする自殺率の推移」という記事から引用させていただきました。

こちらの記事によると、失業率と自殺率、両方の数値には「強い相関関係」があり、

(日本の) 2017 年の労働力人口は約 6,720 万人なので、このうちの 1 %、つまり 67 万人の雇用がなくなると 2,339 人の自殺者が出る恐れがあるということになる。
(Newsweek日本版「失業率とシンクロする自殺率の推移」著者:舞田敏彦(教育社会学者) 2019 年 1 月 9 日より引用)

としています。

 2  日本はどのくらい不景気になるんだろう?

そもそも、国の「儲け」はどのように見るのでしょうか?

「儲け」を 1 年間合計した数字、これを「国内総生産」(GDP)といって、経済の規模を表すモノサシとなり、更にこのGDPが前年度の比べてどの程度上昇したのかを%で表したものを「経済成長率」といいます。

GDPには名目GDPと実質GDPがあって…という難しい話は置いておいて、このGDP、どのくらい下がると予測されているでしょうか。

本年 4 月 30 日、京都⼤学レジリエンス実践ユニット(ユニット⻑:藤井聡)が、新型コロナウイルス感染症への対策に伴い、どの程度 GDPが下がり、失業率、⾃殺者数が増えるか試算しました。

同実践ユニットは、今回のコロナ終息までを楽観的に見る 1 年と、悲観的に見る 2 年の 2 種類のシナリオをだしており、それによると

 1 年で収束すると、「2020 年度の実質成⻑率はマイナス 14.2%
 2 年で収束すると、 「2020 年度はマイナス14.2%
          2021 年度はマイナス 5.2%
(京都⼤学レジリエンス実践ユニット「新型コロナウイルス感染症に伴う経済不況による「自殺者数」増加推計シミュレーション」より引用)

と試算しています。

 3  自殺者はどのくらい増えるの?

同ユニットは失業率と失業者を予測した結果、

・収束が 1 年後だと 「2020 年度末にピークを迎え 、失業率は最大 6.1 %」
・収束が 2 年後だと「 2021 年度末がピークを迎え、失業率は 8 %を超える。」
(京都⼤学レジリエンス実践ユニット「新型コロナウイルス感染症に伴う経済不況による「自殺者数」増加推計シミュレーション」より引用)

としています。

新型コロナウイルス感染症に伴う経済不況により

更に年間自殺者は、一度ピークを付けた後、経済が回復するに従って徐々に下がっていくことになると思われますが、 2019 年の水準まで戻るまでには

 それぞれ 19 年間27 年間の時間を要する
(京都⼤学レジリエンス実践ユニット「新型コロナウイルス感染症に伴う経済不況による「自殺者数」増加推計シミュレーション」より引用)

と試算した上で、

・ 1 年で収束だと「累積自殺者数増加数は 140,720 人」 
・ 2 年で収束だと「累積自殺者数増加数は 272,058 人
(京都⼤学レジリエンス実践ユニット「新型コロナウイルス感染症に伴う経済不況による「自殺者数」増加推計シミュレーション」より引用)

としています。

なお、新型コロナウィルスによる感染者および死亡者数は 2020 年 5 月 11 日公表分で

感染者数 15,630 名
死亡者 621 名
(参照:厚生労働省ホームページ

です。

この新型コロナウィルスによる死亡者数と想定された自殺者数の数字を比べて延長を早期に切り上げ、経済を立て直すという案が叫ばれているのです。

4 死に区別はあるの?

今回のシミュレーションでは「追加補正等については今後⾏われないと想定しつつ以下の⼆つのシナリオを想定した」としています。

ということは自粛をやめ、追加補正などして経済を活発化すれば、この自殺者は想定より減るかもしれません。

自粛をやめた時、貴方自身が、あるいは貴方の大事な人がコロナに感染して死亡するかもしれません。
しかし自粛を続けた時、貴方自身が、あるいは貴方の大事な人が自殺するかもしれません。
人は死にます。人間の死亡率は100%です。
死はすべての生物に区別なく降りてきます。


その上で、あなたはどちらを選択するでしょうか?


さて、この状況、かの有名な「トロッコ問題」にちょっと似ていると思いませんか?ということで、また次回!


最後まで読んでいただきありがとうございました。


※ 2020 . 5 . 13 追記

 5 月 12 日、こんな報道がありました。

 4 月の自殺者数、前年比約 20 %減
厚労省などによりますと、先月の全国の自殺者数は前の年の同じ月に比べ 359 人少ない 1455 人で、 19.8 %減ったことがわかりました。少なくとも最近 5 年間では最も大きな減少幅だということです。
( TBS NEWS 「 4 月の自殺者数、前年比約 20 %減」 2020 年 5 月 12 日より引用)

この報道では悩む機会が無かったことなどが要因だと論じています。

だとすれば、このあと現実と向き合った時、彼らはどのような対応を取るのでしょうか?

この減少傾向が今後も続くことを望んでなりません。

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