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初出 読売新聞「風韻・潮声」2006年1月 

「茶髪にして下さい」とアフリカ系フランス人のA君がやってきた
「サッカーの大会で優勝したら茶髪にすると仲間と約束したんです」
とのことだった
2メートル近い長身と黒い肌に茶髪は良く似合い
祝勝会でも好評だったという😍
数日後
「黒髪に戻して下さい、フランス公使の通訳をしなければならないんです」とA君が来店
「その程度なら大丈夫だよ、あ、そうか、自国の文化を大切にするフランス人としては、日本文化にかぶれて茶髪にするのはマズイかもね」と
訳の分からない結論で元の黒髪に
「短い青春だったね」と私😅
タイガー・ウッズを思わせる誠実さのあふれる人柄は
セネガル出身の両親の厳しいしつけと、イスラムの信仰によるものだろうか束の間の茶髪は、彼にとって精一杯の青春の逸脱行為だったのかも知れない

かつて「青年」という言葉があった
これから社会を担う存在という思いが込められていたのだろう
それがいつの間にか「若者」という言葉に取って代わられた
(分水嶺は団塊の世代だろうか)
それには消費文化の担い手というイメージが込められているようだ
現代の日本では
茶髪もピアスもタトゥーも、個人の自由の名の下に社会に受容され
ファッションとして消費されるようになってしまった
青春の逸脱行為が
大人の壁にぶつかることなく商業主義に吸収されてしまう社会と
逸脱を許さない厳しい規範のある社会と
どちらが若者にとって幸せなのか
好青年そのもののA君を見て考えてしまった😕

追記 ジャケットのアメッド氏は現在
日本の漫画を翻訳して出版する会社の社長です😍
あの頃のタイガー・ウッズは誠実なイメージでした😮

明日に続きます😅

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