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Barbara Murata Tomomi
2023年7月31日 23:49
「わーわーわー!うるさい?うるさいでしょ、うるさいあたしがうるさくしに来たわよーとっちゃえとっちゃえー」母が元気よく声をかけたかと思うとおもむろに父のアームカバーを外し始めた。返す刀で蒸しタオル。父の頭ぐいぐいと拭く。「乱暴でしょ?乱暴で鳴らした由美子さんだからね!」父はされるがままになっている。由美子さんの夫歴半世紀超だからな。ガンバお父さん、私は足を拭くよ。「『乱暴だなあお前は。
2023年7月31日 08:46
7/10晴れ、暑い今日も目をぱっちり開けていた。「お父さんうちに居ないから、喋る相手居ないから、今までよく二人で喋ったなあと思ったわよ。うるさかったかしら〜?」母がいたずらっぽく父に話しかけた。「お手手拭こうかー?」父の手はいつも固く握りしめられている。「お父さんの右手。よく頑張ったね、たくさん作ったね。お疲れ様右手。」話しかけながら父の拳と腕を揉む。母が笑いながら繰り返す。「
2023年7月31日 04:19
晴れ時々雨。暑い。今日は母はお休み。「お父さーん。昨日ゆきおさん来てくれたでしょう?よかったねえ」蒸しタオルで頭、顔、手、足を拭いて揉む。「お父さーん、顔拭きますよー」ゴロゴロ「外は暑いよ〜」ゴロゴロ父はよく笑い、よく返事してくれた。何かを一生懸命言っていたが、聴き取れない。 「お父さん今日は沢山返事してくれてうれしいなー。でもゴロゴロがあるからよく聞き取れないんだー。痰吸引し
2023年7月31日 03:05
晴れ、暑い母と二人で病室に入ると看護師さんが痰吸引中だった。父は酸素をつけていた。「今朝ちょっと酸素濃度が下がってしまって、今念のため酸素をつけてます。なかなか痰吸引がうまくいかなかったりが続くと下がってしまうんですよね。村田さーんご家族見えましたよー。」痰吸引が終わった。「お父さん、よかったね、楽になったねー」「最近ね、いいですよね。『暑いですか?』『あつくない』とか『苦しい
2023年7月22日 02:43
晴れ、真夏のよう。今日は母はお休み。父の呼吸は今日もゴロゴロと鳴っていた。暖かいおしぼりでそっと父の顔を拭く。頬におしぼりを当てるとちょっと気持ちよさそうな顔になった、気がした。頭を拭くとちょっと顔を顰めた。耳を揉む。足がタオルケットの中で絡まっていたので直す。竹竿みたいな脚。足も暖かいおしぼりで拭いてマッサージした。首の付け根が凝っていた。揉む。少しゴロゴロが小さくなった気が
2023年7月21日 04:33
晴れ、暑い、暑い店が立て込んで時間ギリギリに病院に駆け込んだ。母はロビーで本を読んでいた。母の鞄にはいつも本と、新聞の切り抜きが入っている。スマホは持たない。今日の父は穏やかな顔をしていた。「金目鯛を上等な日本酒で煮たの。おいしく出来たから、きっとお父さんが好きな味だからともちゃん食べて。」母が保冷剤で包んだタッパーを差し出した。「お父さんには煮汁。舐められたらいいんだけど。」
2023年7月20日 03:00
晴れ、曇り、雨気圧が不安定で、湿度が高い母と二人で病室に入ると父は目を開けていた。今日はいい顔をしている。呼吸はずっとゼロゼロしている。主治医の先生から説明を受けた。「今は敗血症と肺炎の治療をしています。これが落ち着くまでは転院も保留となります」病状としてはある程度落ち着いて来てはいるものの、転院するには不安定だということ。良くはないが、この病院にまだもう少し居られるのはありが
2023年7月19日 03:16
晴れゆきおさんと。「アニキーゆきおだよ、わかる?アニキお肌きれいだね、ツヤツヤだね。髪の毛もなんだか黒くなったみたいだよ。頭使わないからかな?アニキー、頭使いなよ、アニキー。アニキー、見える?目、開かないの?」父は胸をゼロゼロ鳴らしながら眠っていた。反応はない。ふたりで父の顔や頭を拭いた。30分経った。「アニキ、また来るよー。ゆきおだよ、わかる?アニキ、わかる?」父が目を開
2023年7月19日 02:57
6/23天気は忘れた。福太(犬)が前夜から下痢と嘔吐を繰り返していた。数日前から胃腸の調子が悪そうだったのだ。いや、たぶん2週間くらい前から具合が悪かったのだ。でも食欲はあるので夏バテかな?くらいに思っていた。余裕がなかった。ごめん福太…。週末、病院が休みだったのでおかゆを炊いて小分けに食べさせてみたりしたが、嘔吐も下痢も酷くなるばかりで、朝イチでかかりつけの動物病院へ向かう。おそらく
2023年7月6日 03:23
晴れ。また薔薇が咲き始めた。春先の薔薇より小ぶりで数も少ない。今日から父は大部屋に入った。大部屋とはいえ、ベッドの周囲には充分なスペースがあり、カーテンでしっかりと仕切られていた。父のベッドは窓側だった。個室の時と同じく、大きな窓から空と緑が見える。今日も父の呼吸はゼロゼロだ。母とふたりで父の頭や顔や足を拭いた。母はなぜかベッドの手すりまで拭いていた。「お父さんの仕事でともち
2023年7月1日 01:28
晴れ、夏日。父の日である。母はお休みで、一人で面会に向かった。今日も父は眠っている。穏やかで、すっきりとした顔をしていた。「お父さん、おはよう。お父さん、きたよ、おはよう」何度か声をかけると父は微かに言葉にならない声を出した。「お父さん、聴こえてる?」と訊くと「ああ…うん…」と掠れた声で返事をしてくれた。「今日は父の日だからね、お父さんにお礼を言おうと思って。」カーテンを開
2023年6月30日 02:06
父記録 6/17晴れ、夏日今日も父はよく眠っている。穏やかな顔をしていた。鼻からの酸素と、右腕の点滴からの栄養と水分と薬が父の命を繋いでいる。「お母さんが保育園に勤め始めて、初めての夏休み、ともちゃん喜んでねえ。『なちゅやしゅみ、なちゅやしゅみ〜』って。お父さんはゴローズ行ってたけど、お母さんとともちゃんでのんびりゆったり過ごしてね。お母さん働き始めるまで、3歳くらいまではずっとお
2023年6月29日 04:27
晴れ、涼しい。父の呼吸は少しゴロゴロしていた。足はあたたかい。大きな窓から気持ちのよい日差しが差し込んでいた。テレビの音もなく、静かな病室に父の呼吸音が響く。「よく寝てるねー、気持ちいいねー。あたしたちのこと、夢にでも見ててね」母が優しく声をかけた。「顔色はいいね。」「なんだか昨日より顔が茶色くなったみたい。日に焼けたのかしら」父の顎ひげが日に当たってきらきらと光っていた。こ
2023年6月27日 04:46
雨。昼前、犬にハーネスを着けていると電話が鳴った。父の病院からだ。朝方から高熱が出て酸素濃度低下、肺炎も悪化しているという。「何時ごろ来られますか」「すぐ行きます。」ハーネスを着けたままの二匹が玄関まで見送ってくれた。納得いかない顔をしていた。——————————————レントゲン写真に写った父の肺には再び白いもやがかかっていた。「ここ数日は急な呼び出しがあるかもしれません。エクモ