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根を張ることの難しさと離れることの不安

昨年以上に今日は雪が積もりました。車の上を見ると40センチはあります。
警報が出てこれからも降るようですので、明日の通院が大変そうです。

さて日本の作家の作品が続いたので、少し海外の翻訳物を読もうと借りてきています。今読み終えたのはこちらです。

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歩道で、仕事場で、トラットリアで、広場で、クリニックで、本屋で、美術館で、スーパーで、海で、レジで、文房具店で、バールで、母の家で、駅で…。生まれ育ったローマと思しき町に暮らす45歳の「わたし」。5年暮らした恋人ともとうに別れ、一人住まいの老母を気にかけながら、大学の講師をしている。誰といても、なじみのどんな場所にいても、親しい道連れのようについてくる孤独。けれどもある日、その孤独が、彼女の背中を押す―。エッセイ『べつの言葉で』につづいて、ジュンパ・ラヒリが自ら選んだイタリア語で書きあげた、初めての長篇小説。(「BOOK」データベースより)

著者のジュンパ・ラヒリさんは、1967年、ロンドン生まれで両親ともカルカッタ出身のベンガル人。2歳で渡米し、大学、大学院を経て、執筆活動を始めると多数の賞を受賞、2013年から家族とともにイタリアに移住し、15年、イタリア語により初の作品を発表しているという方です。

本作は著者がイタリア語で書いた初の長編小説と言われているようですが、読んでみると一つのストーリーがあるのではなく、46章によって日常生活での出来事を淡々と語る形式で描かれた掌篇小説集です。

主人公の「わたし」は未婚の40代後半女性大学教師で一人暮らし。一人っ子で父親は少女時代に急死、年取った母親は田舎の老人施設に暮らしています。
作中には多くの登場人物がいますが、年齢、性別、職業、全て幅広いのに、不思議なことに全ての人に名前がありません。

その理由は著者が雑誌のインタビューで語っているとあとがきに書かれていました。

「特殊性をできるだけ排除しようとした。名前がなければ、境界も成り立たない。取り除くことで、いろいろなものの意味が広がる」

私がこの作品に共感するところは、本作の「わたし」は生まれたとこから同じ地区に住み続け、強く結びついているのですが、心の中で、「孤独」を感じているところが一つ。

そして2つ目は、娘との関係性を年老いてもなお求める母親に

「懸命につなぎ止められている。いまのところ自分の役割を果たしてはいても、いつ屈してしまうかしれない」

という不安と感じているところです。

「根を張ることの難しさと、自分の家を離れることの不安」

私自身の生まれてから今までこの土地で成長、就職、家庭を持ち、今の持病を得たこととも重なって、さらに年老いた母のことを思う気持ちにも通じることもあり、自分の心に問いながら、深く読めた作品でした。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。今日という1日があなたにとってかけがえのない1日となりますように。

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