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首下に留まる蝶

ボウタイ(蝶タイ)をして仕事に臨むようになったのはもう10年以上前。
最初はなんだか気恥ずかしいというかくすぐったいみたいな感覚でどうにも首下の収まりが悪かったけれど人はしっかり適応するもの。いつの間にか当たり前となりすっかり馴染んだ。
しかし、数年前に仕事用のシャツを誂えてからどうにもそのサイズ感というかフィット感に違和感を覚え、そろそろ「付ける」じゃなくて「締める」ボウタイ(一般的に売られているボウタイのほとんどはフックで着脱可能なもの。便利だけど画一的過ぎて個性がない)にしたいなあと思いつつ早数年。今なら時間は有り余っているから覚えることができると気づいて購入を決意。
せっかくなら少し良いものが欲しい。自らを挫折させないためにも。
ならばと銀座にある、ライオンがお客様をお迎えする百貨店へ。

まさか自分が百貨店の紳士服売り場で買い物をするなんて思いもしませんでしたね。
聞いてみると「ボウタイですか…」と奥の高そうなスーツが並ぶところへ案内される。
スタッフはそこそこの歳の方々ばかり、着こなしも皆堂に入っている。
そんな中へ思いっきりカジュアルな服装で行ったものだから「コイツ何しに来たんだ」って空気がありあり。こっちもそんなスペースで買う羽目になるとは思いもしなかったんで…申し訳ない。
何色かのストックから無難に黒をチョイス。
赤も魅力的だったけど、黒が様にもならない状態で色気出そうとすると坊ちゃんか芸人になりかねないですからね。
当然、締め方なんて知るはずもないので聞いてみたら「YouTubeにありますよ」と。
なるほど。今はそんなのもアップされる時代なのかといたく感心。ニッチなだけに興味ある人は観るんだろうな。教えてくれる人なんて身近にいないだろうし。

帰宅後、とりあえず締めてみようと観ながら練習するもまあ上手くいかないことこの上ない。15分くらいかかった。もともと不器用だからってのはあるにしても、楽につけられるならそれで良いやって殆どの人は思うだろうなあ。大多数の人はコレ締めて出席しなければならないようなシーン、人生において片手あれば足りる回数でしょう。
そういう意味では知らなくてもなんら困らない。
僕なんて仕事を除けば一つもないと思う。
知らずとも使えるモノがあるならそれで良いじゃないと考えるのが一般的だろう。
でも、知らなくても良いようなモノが人生を豊かにしてくれる。出来ないより出来た方がいいはずだ、と信じて不恰好な蝶を首下に留まらせている。

「自分で締めるモノはアンバランスが味になりますよ」と購入時にお言葉頂いたけど、それにしてもアンバランスが過ぎる。せめてもう少しだけバランスの取れた綺麗な蝶を留まらせたい。
色や柄でバリエーション持たせるのはまだ先の話になりそうです。

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