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ペアリングイベント2のはなし ⑤

今回はスピンオフもなし、これで最後。
モクテルNo.2。
手間になると分かってはいたけど、これほどの難産になるとは思いもしなかった。

原因はわかりきっている。
茶やコーヒーを使いたくないと最後まで足掻いたからだ。結果的には使ったのだけども。
とにかくこの2種を使えば大して考えなくともまとめ込めるし、それなりになってしまう故、僕は使わないというルートをまず探すところから始める。モクテルNo.1もそうした。そうしたらこれがまあ納得いくものが出来上がらない。
こうなると次は「意味のある茶やコーヒーの使い方」を模索。安易でおざなりなものだけは絶対に作りたくなかった。
それで出来上がったのが下記のモクテル。

モクテルNo.2
<shake / cocktail glass>
エスプレッソ 13g / 1.5shot
レデュクショントニックウォーター 35ml
生クリーム 20ml
胡椒水 (自家製 シェイク後にドロップ)2tsp
ガーニッシュ:ブラックペッパー

エスプレッソトニックのツイスト。
カクテルNo.2同様にフェルネットブランカの余韻を引きたかった。となると苦味はどうしても欲しい。
そこでまず苦味を持ち、塩気のあるサブレに合わせられるのは何だろう?というところから思考を始める。

トニックウォーターじゃないか?

でも炭酸要らない

レデュクション(凝縮)すれば良い

テイスティング

もっと苦味が欲しい

エスプレッソか

ならエスプレッソトニックを捻ろう

という流れで組み立てることにした。
ちなみにこれがイベント7日前くらい。
この時点でもコーヒーを使うことに抵抗はあった。しかし、意味のある使用であるのは間違いなく、加えてリミットは目前。別案を出して詰めきれるのか、あまりにリスクが高い状況だったのでこのまま一気に詰めることに。
正直、エスプレッソは現場で落とさなきゃならず、工数的にも避けたい選択肢ではあったが仕方なし。
まさか2杯目を「アドリブでいきます」なんてあるまじき状態と天秤にかけたら…いや、かけるまでもなく。そんなわけでエスプレッソとリダクションを合わせた。
案の定、これだけではいろいろ抜け落ちていたので補正すべき部分を洗い出して生クリーム、胡椒水をプラス。
胡椒水はあり/なしを比較しても微妙なラインの隠し味。無くても成立はし得る。なので少しのアクセント+ビジュアル面も考慮して挽いたブラックペッパーを散らした。

思考錯誤の過程はだいぶ割愛したけどおおまかにはこんな感じ。
前述の通り、本当にこのモクテルNo.2は難産で、「ごめんなさい」も視野に入れるくらい追い詰められました。
それもこれも自分の意地とのせめぎ合いだったので文句は己れにしか言えないのだけども。
でもこういう状況というのは限界値を押し拡げられるいい経験。
マゾヒスティックと言われればそれまでだけど、拡げられるということはまだ自分に余白が残っているということでもある。
これからも積極的に開催したいし禁則はまず作るべきだな、と思うのでありました。

そして次回、7月を以て洋菓子ペアリングはいったん終了。9月は和菓子作家、まきのあや さんとのペアリングを行う予定でございます。


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