見出し画像

1年とその変化。

5/31で旧店舗の契約を解除して早1年。
時が経つのは早い。
営業を終えてからの荷造り1週間は死ぬ思いだった。今となっては笑い話だけどさ…。

さて1年後のいま。
移転に伴っての変化がどこまであったか?と問われると実はそんなになかったりする。
そりゃそうだ。
住所をどこにも載せていない店舗へ来られるゲストは限られているのだから(いちおう書いておくけど、会員制とか紹介制というカタチをとっているわけではない。ここらへんの話はまた別に書きます。近いうちに)。

そんな中で変わったかも知れない…いや、確実に変わったと実感したものが一つだけある。
それは紹介で来られる方々のオーダー。
スタンダード/クラシックが圧倒的多数を占めている。
はて、なぜだろう?と初めは首を捻ったものの、捻るまでもなかった。
なによりまずそれらが試金石になるからだ。
いきなりオリジナルを飲んだとて、単に美味しいかそうでないかくらいしか感想は出ない。
紹介されたからといって、おそらく情報は(ほぼ)無ければバーテンダー(僕のことです)に対する信用もない。
この場合、最初に知りたいのは自分の好みの味にどこまで近いのか/遠いのか?そもそもコイツはまともに作れるのか?といった事だろう。
こういう時、どこでも飲める/飲んだ経験のある−特に自分が好む−カクテルはモノを言う。
もちろんそれだけで全てを判断できるわけじゃないけれど、ある程度以上の要因にはなるはずだ。
だから「いろんなBARへ行ってみたい」とか「BARで何を頼んでいいかわからない」という方には「自分の基準となる1杯を持っておくと便利だ」と常々伝えている。
それにはあまり特殊だったりマイナー過ぎるものはオススメしない。
例えばジントニックやジンフィズ、モスコーミュールやスプモーニ。
オーダーしても「作ることができない」と言われることがほぼないカクテルがいい。
あ、話がズレそうだ。この流れはまた今度にしよう。閑話休題。

そういう理由から自分が飲み慣れたもの、という事で(おそらく)オーダーされる。
だから前述した類いのカクテルでまとまるかと思いきや、とんでもなくマイナーなものが紛れ込んでくる。「最後に作ったのっていつだったっけな?」とか、「あーありますね。作ったことないけど。」みたいな。
そんなわけで(そのせいで、と言ってもいい)趣味程度にしか作ってこなかったスタンダード/クラシックのメジャーからマイナーまでの見直しとブラッシュアップ+カクテルブックをひっくり返してのレパートリー拡充を図っている。
ここ最近のnoteを読んでくれていたり(先日も今回のと一部同じようなこと書いたな)、インスタのストーリーを見てくれている方はよくわかると思う。

これが予想以上に面白い。と同時に、歳を喰って指向−いや、「志向」とか「嗜好」とすべきかも−に変化があることを実感。
しかしカクテルブックをひっくり返していくと美味しいけどマイナー過ぎて知られていないカクテルのまあ多いこと。文字通り「星の数ほど」ある。
こんな真面目にレシピを追って読んでいるのは初めてだろうな、たぶん。改めて知の集積である本の偉大さを思い知らされております。そしてもちろん、レシピを残してくれた先達たちの偉大さも。
こういう行為は「このおかげで」と言うべき副産物だろう。

移転する前は「場所が変わるだけで作るものの方向性は変わらない」と思っていたけれどそんなことなかったですね。所変われば品変わる。
たかだか1年、しかも営業している日数で言えば半年にも満たないでこの変化。僕にとってはドラスティックだったし、予想していない方向だった。
この先、どう変わっていくんだろう。
「進めばそれが道になる」って言ってたのは誰だっけか。


もし、記事を読んでくれてお店の方が気になったら覗いてみてください。Instagram / FBもページがありますが、まずはオフィシャルHPを。 http://www.bar-tool.com/ サポートしていただけた場合はお店の運営に充てさせていただきます。