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それで「僕の」音楽はどこにあるんだ? ~「カルチャー」と「文化」

先日、渋谷へ探し物で行ったついでにタワレコに寄った。
欲しいなーと思っていたアーティストの新譜リリースがあったから買って帰ろ、くらいの軽い気持ちで立ち寄ったのだけども。

…え、マジで?

思わず口を突いて出てしまった。
まずこのフロアマップを見て欲しい。

洋楽は雑にひとまとめで7F。加えて中古販売の棚まであった。
クラシックフロアの8Fはエスカレーター使えずエレベーターのみ。しかもフロアの総面積1/3以下の手狭なスペースで他は仮設(?)の壁で目隠し。2Fがカフェなのはもう慣れたが(納得はしていない)、3Fに邦モノ「関連」が全てひとまとめ、4Fはゲーム音楽やボカロにアイドル、ボーイズポップ(ってなに?)。5FはなんとK-POPでワンフロア、6Fはレコードとアクセサリーその他。ちなみに7FにもPIED PIPER HOUSEが一角を占めていて、邦楽含めてここにもレコードがある(このコーナー、いつから常設になったんだ)。
1Fについてはもう何も言うまい。エントランスというだけで立ち止まることもなくなってしまった。

開いた口が塞がらない…というか悲しさと絶望感でいっぱいになりました。
僕が青春時代に憧れて働きたいとさえ思った"TOWER RECORDS"はやっぱりとうの昔に「亡」くなっていたんだな、と。

年に一、二度ふらりと立ち寄って「ああ酷くなっているな」と確認してはいたのですが、それでも洋楽が雑にワンフロアにまとめられ、クラシックがフロアの1/3以下への縮小という事態-というより往年のユーザーからしてみれば「仕打ち」と言ってもいい現状-はこれもう来る価値ないじゃないかと。

しかし一方ではわかる。わかりますよ。
CD売るだけじゃ成り立たないこの時代、それでも場所を維持するためには売れるものをメインに据えて集客と売上を図らねばならないってことくらい。

それでもね。
タイトな品揃えで遊び・余裕のない売り場ってつまらんのですよ。消費者の身勝手な言い分だけど。
デカい実店舗は他じゃ置いてなさそうなものがあることこそ存在意義なわけで。
この現状じゃ「あそこに行けばなんかある」とか「POPに釣られて目当てのもの買い忘れた」なんてマジックはもう起こらないだろうなって思うわけです。
だってレコメンドのコーナーはなんかお座なりに見えるし、書かれているPOPに愛も体温も感じることができない。昔は毎号欠かさず貰いに行ってたフリーペーパーも今じゃ手に取る気にすらなれない。
学生時分、10万持ってタワレコ行って気になったCDを片っ端から買いたいっていう小市民的欲望を持っていたんですけど、そんな魅力は僕にとってもう無いですね。
今は「少し大きくて少し品揃えが良いだけのCD屋」。或いは「メインストリーム音楽カルチャー」に特化したビレバン。いや、サブカル臭しないからビレバンと呼ぶのは違うな。でもビレバンにサブカル臭を感じたこともほぼないからいいのか。

でもまあこんなのは「昔は良かった」ってジジイの戯言でしかないのもまた自覚はしている。
おそらく当時の自分だってこの手の話をするジジイには同じことを思ったはずで、自分がそういうことを言ってしまう、そういう歳のジジイになったというだけの話。
結局、いろいろ萎えてしまって何も買わずにタワレコ渋谷を後にした。
Old boys never die。

「自分が若かりし頃のカルチャーはこんなに薄っぺらいもんじゃなかった」ってのは「近頃の若いモンは」というのと全く同じ、みんなが通る道。たぶん。
「んなこと思うわけねぇじゃん、みっともねえ」って笑っていた当時の自分に見られたら確実に軽蔑されるだろう。

そう考えると興味を持たないどころか失笑混じえて小馬鹿にしていた「文化」的なモノが魅力的に見え、それに面白味を覚えるのもまた然もありなんと感じる。

「カルチャー」は若者のモノ。
「文化」は年寄りのモノ。

見上げたタワレコ渋谷に言われた気がした雨上がり。春の夜。

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