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小説『琴線ノート』

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一人の若手作曲家とSNSで歌のカバー動画をアップしていた女の子が出会い、 音楽と人間性に触れて心動かし、共に歩んでいく物語を お互いの側面から語る小説『琴線ノート』のまとめです
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#小説

小説『琴線ノート』第28話「色」

ピコンとスマホに「着きました〜」と通知が届く ドアを開くと相変わらず赤々としたインナーカ…

新川万詩郎
1か月前
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小説『琴線ノート』第27話「白紙」

鉛筆を持ち白紙のノートの開いたまま もう何十分も地蔵と化した私は自分の作詞の 才能の無さを…

新川万詩郎
1か月前
1

小説『琴線ノート』第26話「遠のいて」

「恥ずかしながらお聞きするんですけど、 編曲ってそもそも何をするんですか?」 作編曲家の…

新川万詩郎
1か月前
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小説『琴線ノート』第25話「乞う」

父に自分の仮歌を聞いてもらった以降 SNSにカバー動画をアップする頻度が減っていた 更新しな…

新川万詩郎
1か月前
1

小説『琴線ノート』第24話「談義」

ヒナ太が仮歌を入れてくれた曲を聴き終わると 恩田さんは少し考えるようなそぶりを見せてから …

新川万詩郎
2か月前

小説『琴線ノート』第23話「半個室」

下北のいつもの居酒屋に着くと恩田さんは先に 奥の半個室でビールを片手にパソコンを開き イヤ…

新川万詩郎
2か月前

小説『琴線ノート』第22話「煮詰まる」

髪はボサボサで無精髭の姿のまま コンビニでホットコーヒーを買って帰ると パソコン前の定位置に腰を下ろし 一口飲んでから横に置いたミニテーブルに置く 音楽家はコーヒージャンカーが多く自分も それにもれずいつもコーヒーだ 自分で淹れた方がコスパがいいのだけど 自室に篭りがちの作曲家には何かと理由をつけて 部屋を出るようにしないと体も固まるし それなりに気分転換ができるので 年間通すとそれなりになるコーヒー代も必要経費だ と言っても気分転換が必要となるのは 大抵曲作りに根詰まっ

小説『琴線ノート』第21話「ピッチ」

「甘いのと辛いのどっちにする?」という父の言葉に 普段の私なら甘口を要求して できるだけ無…

新川万詩郎
2か月前

小説『琴線ノート』第20話「辛いので」

「ちょっと聞いてほしい音源があるんだけど」 そういうと父はなんだなんだと興味ありげな表情…

新川万詩郎
2か月前
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小説『琴線ノート』第19話「はじめの一歩」

バイトの帰りに寄った楽器屋さんの書籍コーナー いつもは通り過ぎる棚の前に私はいた “作曲…

新川万詩郎
2か月前
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小説『琴線ノート』第18話「共有」

目が覚めると昼の12時を回っていて 久しぶりにすっきりとした目覚めだった 昨夜0時が締め切り…

新川万詩郎
2か月前
1

小説『琴線ノート』第17話「下列車」

仮歌の録音後に小川さんに駅まで送ってもらい 大きい体の割に小さく手を振るその姿に 「今日は…

新川万詩郎
2か月前
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小説『琴線ノート』第16話「事後」

ヒナ太を駅まで送り届け自室に帰ってきたのは 午後8時を回っていた 本当は気を遣ったのと喋り…

新川万詩郎
2か月前

小説『琴線ノート』第15話「大人で子供」

私の歌は小川さんにどう聞こえたのだろう SNSのカバー動画では褒めてくれたけど カバーは“オリジナル”と言う完璧なお手本があって それを真似れば良いだけだけど この仮歌は小川さんが作った曲でまだ 誰も歌っておらずお手本がないから正解がわからない 「私の歌どうでした?」 と聴いてみたいけれどなかなか言い出せない すると小川さんの方から振ってくれた 「マイクでレコーディングするのって ごまかしが効かないから最初は難しいのだけど 全然そんな気がしないのはなぜ? しかもまだ誰も