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『ジャリおじさん』に寄せて

大竹伸朗さんの『ジャリおじさん』という絵本が僕は好きです。作品の、ただのファンです。あるときあるところで「好きな絵本は何か」と訊かれたときにそのタイトルを答えたら「たまにはシュール系を子供に読んであげるのも良いですね」的なことを言われ、ああそうかこの作品は「シュール系」とも評されうるのかと思ったことがありました。

絵本のあらすじは、ジャリおじさんがどこかへ行く道中おかしな連中と出会ってやがてどこかしらへと行き着くというものです。じぶんのあらすじ説明の非道さに泡を吹き出しそうですが、そこは目をつぶってください。目をつぶってもいいので、耳だけは貸してください。文字が読めないとおっしゃるのでしたら、もういっそどなたかに音読していただいてください。話がそれました。すみません。

ジャリおじさんが出会う連中の奇妙さも際立っていますが、ジャリおじさん自身もそうとう奇天烈です。語尾に「ジャリ」をつけてしゃべるのですから。だからなんなんだと言われても困ってしまうほど僕の伝達力には難があるので、実際に味わっていただくのが一番確実で早いと思うので、やってみるジャリ。どうジャリ? 伝わったジャリ?

幸運にも、僕はこの『ジャリおじさん』の原画を目の当たりにする機会を得ています。僕の妻は長野県出身なのですが、帰省を兼ねて安曇野ちひろ美術館へ遊びに行ったときに、その原画が展示されているのを発見したのです。そのときそこに『ジャリおじさん』の原画があることを僕は知らなかったので、想定外の嬉しい出来事でした。

原画は、絵本のそれと、発色がまるで違いました。展示環境、照明などの影響があって、他の環境で鑑賞したらまた違う色味を感じるのかもしれませんが、やはりたくさんの部数を印刷して製本したものと原画は別物だなと思いました。どちらが良いとかいうのではなく、絵本は絵本、原画は原画の役割があるとは思うのですが。それから、この作品にはコラージュが用いられているので、頭を斜めにして下から覗き込むように原画を見てみると、貼り付けられた素材の厚み・盛り上がりがわかります。これも、平面に印刷された絵本では決して味わえません。原画には画材のデコボコがあるのです。そのデコボコによって、微細な影もうまれます。印刷された絵本で影を味わうことはできないでしょう。原画は見るもんだと思いました。

東京にも、ちひろ美術館があります。安曇野での体験が動機となって、後日こちらにも行きました。瀟洒でシッポリとした、素敵な所だったと記憶しています。近々、また行きたいと案じているところです。

お読みいただき、ありがとうございました。

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