Gori

ディジュリドゥ奏者。Earth Tube代表。2001年から毎年オーストラリアにおもむき現地のディジュリドゥ・マスターに師事してディジュリドゥの伝統奏法を学んでいます。

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ディジュリドゥ奏者。Earth Tube代表。2001年から毎年オーストラリアにおもむき現地のディジュリドゥ・マスターに師事してディジュリドゥの伝統奏法を学んでいます。

    マガジン

    • What is Didjeridu? - ディジュリドゥとは

      「ディジュリドゥとは?」このシンプルな問いに対するネット上の情報は思いの他あいまいです。みなさんが知っている当たり前な基本情報から、研究者の論文を翻訳することで見えてきたディジュリドゥの歴史、ジェンダー問題、科学的な見地など。今もう一度ディジュリドゥをメタ認知するコラムです。

    • ディジュリドゥの修理とメンテナンス

      ディジュリドゥのクラックはなぜ起こる?四季で変化する湿度とディジュリドゥの関係と日々のメンテナンス方法。クラックの種類やその対処法。ディジュリドゥを傷つけない修理方法から本格的なエポキシ樹脂での修理方法。アボリジナル・アートのレタッチの仕方。クロスハッチ用の筆の作り方など、ディジュリドゥの修理とメンテナンスについて網羅した内容です。

    • ディジュリドゥのペイントレタッチ

      ディジュリドゥを自分で修理して、はがしたペイント部分をレタッチしたら、そこだけ明らかに後からレタッチしたことが分かる仕上がりになってどこか満足できない。そういう体験をしたことはありませんか? このマガジンでは現地で使っているのと変わらない道具を用意することと、簡単なレタッチ方法を解説します。これを実践すれば、修理箇所がわからないくらいきれいにレタッチができるようになりますよ。

      • What is Didjeridu? - ディジュリドゥとは

      • ディジュリドゥの修理とメンテナンス

      • ディジュリドゥのペイントレタッチ

    最近の記事

    16. あとがき

    Wikipediaやネットの情報は正確なのか? 「WHAT IS DIDJERIDU?」、ディジュリドゥとは何か?この一連のコラムを書く動機は、Wikipediaなどインターネットに載っている情報や、ディジュリドゥを演奏するノン・アボリジナルの人たちから聞かれる言説と、自分が見聞きしてきたことや、アボリジナル研究をしてきた民俗学者の書籍にのっている情報とにかなりの違いがあったことでした。 その一番の例が、14-15章で書いた「ディジュリドゥのジェンダー問題」で、女性がディ

      • 15. ディジュリドゥのジェンダー問題 後編 - ディジュリドゥとジェンダーバイアスをどう見るのか

        性にもとづいたタブーは世俗の空間では存在しない 前編では「女性がディジュリドゥを演奏するのはタブーである」という考え方は、ディジュリドゥの中心地であるトップエンドでは一般的ではなく、ディジュリドゥは彼らの文化に深く関わっていることで、より日常的で距離感の近いものであることをいくつかの事例を挙げながら話しました。 松山利夫教授が言う、アーネム・ランドではディジュリドゥに関する「性にもとづいたタブーは世俗の空間では存在しない」という考えは、ぼく自身の体験と重なります。 なぜ

        • 14. ディジュリドゥのジェンダー問題 前編 - 女性はディジュリドゥを演奏してはいけない?

          女性がディジュリドゥを演奏するのはタブー? 「女性がディジュリドゥを演奏するのはタブーである」とか「ディジュリドゥの音を聞く(演奏する)と妊娠しやすくなる/不妊になる」といった風説を聞いたことがあるかもしれません。 実際にぼくが訪れるトップエンドのアボリジナルの人々から上記のような言説を直接聞いたことがあるかと言えば、20数年の個人的な経験にはなりますが一度もありません。彼らがそういったことを女性に向かって話していることも、ぼくたちノン・アボリジナルに指導することも一度も

          • ディジュリドゥ・インナーケースの作り方

            ディジュリドゥを持ち運ぶ時、布製のバッグを使っている方は結構多いんじゃないかと見受けられます。1本が数万円~数十万円という高価なものですし、無垢の木製の楽器で空洞内部はコーティングがされてないので、外気の影響を受けやすい楽器でもあります。 ディジュリドゥ・バッグに求められる保護性能 落下や物がぶつかることによる衝撃をおさえるクッション性 雨に濡れない防水性 気温や湿度に左右されにくい断熱性 できるだけ重くない軽量性 布製のバッグはこれら4つ全てにおいて、軽量性とい

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            ディジュリドゥ・バッグ選びのポイント

            「1. ディジュリドゥの管理方法」では主に室内での管理方法について述べてきましたが、楽器を持って移動することをふまえて、ディジュリドゥ・バッグについても触れたいと思います。 移動中におきたクラック体験 今まで自分のディジュリドゥに起きた最大のクラックのお話をします。冬場に布製のディジュリドゥ・バッグをタスキがけにしてバイクを運転した時のことです。急なカーブにさしかかった時、バイクは傾いていってバッグの一番下の所がアスファルトに触れました。 コンっと軽く当たった音の後にパ

            13. アボリジナルの人々が共通してディジュリドゥを表す言葉「Bambu」

            インドネシア語の「Bambu」と英語の「Bamboo」 アボリジナルの間では共通してディジュリドゥを意味する言葉として「Bambu」が使われ、トップエンドのいろんな地域でディジュリドゥを「Bambu」と表現するのを耳にしたことがあります。 この「Bambu」という言葉がなぜトップエンドのアボリジナルの人たちの間で共通してディジュリドゥを意味する言葉として使われるようになったのか。1900年代初頭までディジュリドゥの素材の中心は竹だったと考えられていることから、2つの可能性

            12. 特別な名前のついたイダキ

            北東アーネム・ランドのイダキには、特別な名前がついた楽器があります。それってどういう事なのか、ややこしく感じるかもしれません。例えるなら梅干、たくあん、いぶりがっこ、奈良漬などは、それぞれ特定の素材を使って特有の製法で作られる食品ですが、大枠として「漬物」に内包されている、という関係性に少し似ています。 Galpuクランの二つの特別なイダキ 北東アーネム・ランドのイダキ・マスターD. Gurruwiwiは自らの氏族が所有する2種類の特別なイダキ「Baywara(稲妻)」と

            11. 音色で特定されるディジュリドゥ

            前章ではアボリジナルの言語ごとにディジュリドゥの名称がちがっている点について触れました。各言語ごとに存在する名称とは別に、特定の音色や音程によって特定されるディジュリドゥが存在します。 彼らの言葉に注意深く耳を傾けていると、自分達の特定の楽器に対する音程やサイズや形状というわかりやすい特徴から、彼らの世界に属さない人からは理解できないような音の特性から楽器を峻別していることがわかります。 Wadeyeコミュニティの2種類のディジュリドゥ WadeyeコミュニティのWil

            10. アボリジナルの言語におけるディジュリドゥの名称

            オーストラリアのアボリジナルは多言語集団 アボリジナルの人々は自分たちの言語でディジュリドゥをどう呼んでいるんでしょう?まずアボリジナルの人々の使う言語は単一ではないことを理解した上で、彼らはある領域ごとに住み独自の言語を持つ多言語集団であることを知っておきたい。 現在の言語マップとは異なる部分もありますが、特に内陸中央あたりの砂漠エリアの言語集団の領域が大きく、沿岸部の言語集団ごとの領域が狭く数が多いのがわかります。 アボリジナルは多言語でディジュリドゥの名称も多様

            9. Didjeriduという名称の由来 2 - オノマトペ説

            ディジュリドゥの音そのものを表現したオノマトペ説 「Didjeridu」という名称がどのようにして付けられたのか?諸説ありますが、中でも有力視されているのが、オーストラリア初期入植者のヨーロッパ人たちがディジュリドゥの音を聞いて、その音色から名前を付けたというオトマトペ説です。 ノーザンテリトリー州で最初に開発されたのは州都であるダーウィン港で(1869年)、その後ダーウィン南部のパーマストンとパインクリークを結ぶ鉄道が敷設されます(1883-1889年)。北東アーネム・

            8. Didjeriduという名称の由来 1 - 文献由来説

            Collet Bakerの手記に書かれた「didoggery whoan」 「Didjeridu/Didgeridoo(以下Didjeriduで統一)」という名称が使われるようになった理由については諸説ありますが、「Didjeridu」という名称を検証することができる歴史的資料はあまり存在しません。その数少ない一つがイギリス軍人Collet Bakerの残した手記です。 Collet Bakerは1784年生まれのイギリス軍大佐です。ノーザンテリトリー州の最北端にあるCo

            7. ディジュリドゥのスペル

            書籍やアカデミックな場ではDidjeridu、店舗やCDはDidgeridooが使われる傾向に ディジュリドゥは一般的に英語で「Didjeridu」、あるいは「Didgeridoo」と表記されることが多いですが、それ以外のいくつかのバリエーションで表記されることもあり、ディジュリドゥのスペルは定まっていません。 アボリジナル研究を行う政府組織AIAS(現AIATSIS)で、はじめてディジュリドゥという言葉がのった書籍が出版されたのは1963年でした。その時に使われたスペル

            6. ディジュリドゥの歴史2 - ディジュリドゥとシロアリ 後編

            クイーンズランド州北部のディジュリドゥの伝播 クイーンズランド州のケープヨークもこのシロアリのVery Highに入っているものの、このエリアはパプアニューギニアに続くTorres海峡諸島の文化の影響が強く、オーストラリア本土のアボリジナルとしては珍しい「Poi」と呼ばれる片面ドラム、「Urlur」と呼ばれる植物の種をガチャガチャと鳴らす楽器が使われます。他の地域にはない打楽器が存在することでディジュリドゥが淘汰されたとも言われています(歴史的資料がないため正確性がありませ

            5. ディジュリドゥの歴史2 - ディジュリドゥとシロアリ 中編

            アボリジナル音楽の録音の歴史 実際にオーストラリアでディジュリドゥが演奏される地域を特定するために、ヨーロッパ人入植以降の録音資料に目を向けました。ワックスシリンダー(蝋管)を使った録音が1900年代初頭にはじまり、トップエンドのアボリジナル音楽の収集は1948年に「American-Australian Scientific Expedition to Arnhem Land」によってスタートし、1950年代に登場した磁気テープ技術により1950年代~1960年代に数多く

            4. ディジュリドゥの歴史2 - ディジュリドゥとシロアリ 前編

            1900年代初頭まではディジュリドゥの素材として竹が中心的に使われてきたことは前章で述べました。では一体なぜ現在では竹で作ったディジュリドゥが使われなくなったのか?竹に代わってシロアリが食べて空洞になったユーカリの木が素材として好まれるようになったのか?その理由を研究した論文が見つからなかったので、主に個人的な推論を中心に考察してみたいと思います。 スラウェシ島の漁民マカッサンとの交流がアボリジナルにもたらしたものは? 1600-1700年代頃になると当時催淫効果があると

            3. ディジュリドゥの歴史1 - ディジュリドゥの起源と竹 後編

            トップエンドの竹は1種類、しかも北西部の限られたエリアに自生 オーストラリアの竹には3つの固有種があり、内二つはトップエンドには生えておらず、「Bambusa Arnhemica」だけが自生してます。この「Bambusa Arnhemica」がディジュリドゥの素材として使われていました。 まとめると、Thompson、Berndt、Moyleら民俗学者たちのフィールドワークにより、1800年代まではディジュリドゥを作る素材として竹が中心的に使われていたと考えられます。そし