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【オリジナル小説】お気持ち


私は、東京で仕事をしている28歳のサラリーマンだ。

仕事は楽しいものではないが、28歳にもなって後輩もたくさん
増えてきたため、かっこ悪い所は見せたくないと
一生懸命仕事に取り組んでいる。

今日も満員電車に揺られ、会社までのいつもの道を歩いている。

いつもと変わらない町並み。

少し変わった所といえば、工事中だった商業用ビルがついに
オープンしたことぐらいだろうか。

会社が目の前に差し掛かった所でいつもと違う光景が
目に入った。

そこには、黒い帽子に黒いジャケットを着ている男が
小さな箱を持って突っ立っていた。

ぴくりとも動かずひたすら立っているだけ。

本能的に関わっちゃダメだと思い、見てみぬフリをした。

そのまま、すぐに会社を出て取引先に訪問した。
今日はクレームの対応だったため、あっという間に
夕方になっていた。

クタクタになって会社に戻ると
会社の前には朝もいた「あいつ」がまだ立っていた。

そのまま、会社で今日中にやらなきゃいけない仕事を
終わらせ、20時に会社を出た。

すると、「あいつ」が中年のサラリーマン風な男性と何やら話し込んでいた。
私は会社の前にある喫煙所でタバコを吸いながらその様子を見ていた。

しばらくすると男性は財布を取り出し、「あいつ」に1万円を渡した。

「え?」

遠かったため話し声は聞こえなかった。

その夜、同僚と飲み会があったため、その話をしてみた。
やはりみんな気になっており、私が見た1万円もらっていた話をすると
より謎は深まるばかりだった。


次の日、みんなで声をかけることにしたが朝出社した時には
既にその場所にはいなくなっていた。

「きっと、あのおっさんは話しかけたせいで絡まれて
1万円取られたんだろう。かわいそうに。。」そう思っていた。


数カ月後、普段と変わらず営業活動を行っていた。


訪問した取引先に向かう途中

再び「あいつ」をみつけた。
前と変わらぬ服装で箱を持って立っている。

気味が悪かったが、これは同僚との話のネタになるなと思い
私は「こんにちは〜」と話しかけてみた。


しかし一切表情を変えずに無視された。


やっぱヤバい人だと思い立ち去ろうとした時、
「あいつ」が話し始めた。


今叶えたい願いがありますか?

唐突な質問に戸惑ったが
この後、お客様に重要なプレゼンが控えていたため
「この後のプレゼンを成功させたいです。」と言ってみた。

すると「あいつ」は
その願い私がここから念じて叶えさせます。
もしその願いが叶ったらお気持ちで構いませんのでお金をください。

そうゆう手口か〜と思い
とりあえず、プレゼンの時間が迫っていたためその場を後にした。


プレゼンは大成功で終わった。これまでの社会人生活の中で一番大きい
契約を受注することに成功したのだ。

早く会社に言って上司に報告しようと取引先を出て歩きだした。

すると「あいつ」はまだ同じ場所にいた。


正直、今回の成功は自分の努力の結果だと思っていたが、
プレゼンが成功したことが、とにかく嬉しくて
私は、財布から1000円を取り出し持っていた箱に入れた。


それからしばらくして私は、一世一代の勝負をすることになった。

当時交際していた彼女へプロポーズすることを決めたのだ。

覚悟を決めた時、私はふと、「あいつ」の存在を思い出した。


別に信じている訳ではないが、前の成功もあったし
念には念だと思ってもう一度お願いすることにした。

そう思って、前「あいつ」がいた取引先の場所に行ってみたが既にいなかった。
私は仕事が終わっては毎日、都内を駆け回り
ようやく、小さな商店街の入り口付近であいつを再び見つけた。

前に頼んだものですが、今度プロポーズすることになって成功を願ってもらえますかとお願いした。

「あいつ」はサングラス越しに私を見てこう言った。

2回目からは依頼する時からお気持ちをお支払いください。
そして、成功したら依頼した時の倍の金額をお支払いください。
もし失敗したら支払いは不要です。
」と。


ますます怪しさが増したが、一生に一度の大勝負。
彼は財布に入っていた1万円を持っていた箱にいれた。


2日後の夜、プロポーズは見事成功し私は彼女と婚約した。
そのデートの帰り、私は寄りたいところがあると言って
「あいつ」の所に向かった。
そして「ありがとうございます」と2万円を支払った。

彼女は「何してるの」と止めたが
「過去もこの人のおかげで上手く行った、実は今回もこの人にお願いしていたんだよ」とこれまでの話をした。


彼女は呆れながら、「もう結婚したら絶対おこづかい制にするからね」
とつぶやいた。



数年後、結婚したはいいものの
最近は役職も上がり仕事が忙しくてイライラしていることが多く
ちょっとしたことですぐに嫁と喧嘩ばかりしていた。
関係は相当冷え切ってしまっていた。

私は結婚した当初の思い出にひたりながらまた昔のように仲良くなりたいと願っていた。

アルバムを見返していたその時、プロポーズした時の写真が出てきた。

私はその写真を見て思い出した。
「そうだ、「あいつ」にお願いすればいいんだ!!」
私はSNSなどを利用して数ヶ月かけてやっとの思いで「あいつ」を
見つけた。


「奥さんと仲直りしたい。」私はそうつぶやいた。
すると、
あなたは3回目ですのでまず先にお気持ちをお支払いください。」と。


「覚えてるのかよ」と思いながら彼は1ヶ月のおこづかいである
3万円を全ていれた。

そのまま、立ち去ろうとしたが、ちょっとした興味本位で
私は質問をしてみた。
「ちなみに、失敗することってあるんですか?」と。

すると、「気持ちの大きさ次第です。」と。


どんだけ金が欲しいんだよと思いながらも彼はこれで幸せな家庭が戻ると思い笑顔で家に帰った。


帰ると嫁がリビングの椅子に座っていた。そして私に座るよう言ってきた。
キタキタ。さっそく仲直りできるぞと思ったとこだった。

彼女が椅子の上に置いていた1枚の紙を手渡してきた。


なんと離婚届だった。


「おかしい。あいつに頼んだのに何故こんなことになるんだ。」


何度も考え直すように説得したものの、嫁の決意は固く
数ヶ月別居し協議した上、私は仕方なく離婚届に判を押した。


「あいつは詐欺師だ。次見つけたら警察に通報してやる。」
私はあいつを恨んだ。



「あいつ」は今日も立っていた。


そこに1人の女性が声をかける。


「無事に離婚できました。ありがとうございます。」
そういってボックスに10万円を入れた。



またのご利用お待ちしております。私は気持ちの大きい方の味方です。






世の中うまくいかないことがあるだろう。
今日もあいつにたくさんの人が依頼に来る。


1000円入れるからギャンブルで勝たせてくれ。
10万円いれるから私を社長にしてくれ。と。


しかし、彼らの願いは叶わない。


この世界には「あいつ」に大金を注ぎ込んで世界を動かしている連中がいる。
パチンコ団体や暴力団、会社のトップや国のトップまで。


世界は彼へ対する「気持ち」の大きさで動いている。




今日も「あいつ」はどこかに立っている。



Fin


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