★月間まとめ:師走とともに過ぎ去った音楽を振り返る
今年も始まったなあと思ったらいつの間にか1月の1/3が経過していて、焦ったりなどしておりますが、年明けは主にアラビア・トルコ音楽を聴いていて、何だか正月なんだかどこにいるんだか良くわからない時間軸を過ごしていました。
・・というわけで、年末〜年明けに色々とあり、つい発表が遅れてしまいましたが、12月後半のキャッチアップ、おさらいをしようと思います。前回までの12月前半の部分については下記をご参照ください。
また、今回も例によってサブテキスト的にSpotifyのプレイリストを作ってみましたので参考にしていただければと思います。ちなみに、今回は趣向を変えて、12月に聴いていた曲、また本文に出てきたアーティストを含め12月リリース以外のものも入れています。(トータルで50曲ほどです。)
No.01〜No.09、Baxter DuryからSparksまで
左上からBaxter Dury、BadBadNotGood、Julianna Barwick、Cartalk、Stealing Sheep、Jägerborn、Sondre Lerche、Frances Quinlan、Sparks
01.Baxter Dury「Carla's Got A Boyfriend」
バクスター・デューリー。パブロックのイアン・デューリーのご子息とのこと。お父様と違いアプローチは例えば「Slumlord」なんかは顕著だと思うんですが、シンプルなリフレインを繰り返すメロディと、四つ打ちの(あるいはそれに近い)パーカッション、歌というよりはどちらかというとskitのように台詞的な歌詞を挟んでいく所作はヒップホップ的です。
「Miami」はダーティな雰囲気が最高にセクシーでヴァースのメロディの中毒性がある名曲ですが、「Carla's Got A Boyfriend」はレイドバックしたヒップホップという感じで、これも素晴らしいです。新しいアルバムが楽しみです。
02.BadBadNotGood ft. Jonah Yano「Key To Love」
トロント出身のバンドによるMajesticsのカヴァー。レイドバックした雰囲気はそのまま、ギターなどはサイケデリックに少し歪んでいて、ビートも踊りやすく少し強調されていますね。また、曲後半に入ってくるオーボエ?など管楽器のアンサンブルなどは原曲にはないアプローチですが、彼らのジャズに対するバックボーンが見えますね。演奏上手いなあ、って思います。
03.Julianna Barwick「night」
ブルックリンを拠点にする女性アーティスト。「Circumstance Synthesis」はMorning〜Nightまでの5曲を収録したコンセプチュアルなEPの中の一曲ですが、アンビエントに女性の声が入っていて幻想的な雰囲気があります。
また、タイムラプスを交えつつランドスケープを望遠で撮影されているJoel Knoernschildの映像も何やら示唆的で美しいです。
04.Cartalk「Sleep」
LAのSSWであるChuck Mooreのソロ・プロジェクト。Chuck Mooreが「tenderpunk」と呼んでいる自身の音楽スタイルは、シューゲイザー的な歪んだギターを含みつつも、明瞭なサウンド構成で聴きやすいです。
05.Stealing Sheep「True Colours」
発売は2018年ですが、ヴィデオが公開されたという意味で12月のラインナップに入れてしまいました・・このドットの感じと時折出てくる日本語表記、ほんのりとVaporwave的いかがわしさもありますが、何だか癖になります。
06.Jägerborn「Song Ghost」
ベルリンのアーティスト、Tobias Gnüchtelのソロ・プロジェクト。全ての演奏を自分で行うマルチプレイヤーとのことですが、アコースティック・ギターのストリングスにダウンテンポっぽいビートが合わさって、キーボードの作るサウンドスケープもなかなか聴き応えがあり面白いです。
彼が所属しているバンドmusiumの音もかっこいいですよね。
07.Sondre Lerche「I'm Not a Girl, Not Yet a Woman」
ノルウェー出身のSSW、ソンドレ・ラルケの新曲。これは聴いておかなければと思い聴いていましたが、良いですよね・・。
08.Frances Quinlan「Rare Thing」
Hop AlongのFrances Quinlanのソロ・プロジェクト。Hop Alongの頃と比べると雰囲気はそんなに変わっていないような気がしますが、打ち込みのドラムとクラップが軽やかで踊れるいい曲です。他の数曲も先行で公開されていますが、どれもボトムが明瞭でポップな雰囲気なので、アルバムが楽しみですね!
09.Sparks「Please Don't Fuck Up My World」
「I Married Myself」のようにメロウな鍵盤のナンバーですね。中盤から展開するコーラスパートも面白いですが、この(良い意味で)適当な感じのヴィデオ・クリップも彼ららしいです。
No.10〜No.18、FloogからScullyまで
左上からLauv&LANY、Geowulf、Bonus、Lisel、Patio、Salt Cathedral、Moses Sumney、The Rentals、Scully
10.Lauv & LANY「Mean It」
実はめちゃくちゃ人気だけど避けていたジャンルではありました・・ただ、ニューヨーク大学出身でインターンでレコーディング・スタジオに在籍していたり、音楽出版社に就職したりと、なかなか手堅くクレヴァーな方だなと思いますし、そういう意味では興味深いです。
11.Geowulf「He's 31」
ロンドン在住、オーストラリア出身のデュオ。アルバムリリースは2019年10月ですが、12月にヴィデオが発表されたのでこちらにランクインさせてしまいました・・
フォークが入ったコクトー・ツインズっぽい?という雑な感想を抱いてしまいましたが、ブリリアントな美しいメロディを奏でるギターと、グロッケン?のキュートな音、バンドサウンドが明瞭な正統派ポップスですね。そしてやっぱりこの8mmフィルム風のフィルターは現在のVCのトレンドなのでしょうね、あらゆるところで拝見します。
12.Bonus「Bathlight」
曲調はまったく違いますがShackの「Comedy」やThe Coralの「Not So Lonely」のように、あるいは毒気を抜いたエディターズのような・・メランコリックなメロディとそれを紡ぐギターの重なりが美しい名曲ですね。インフォメーションがあまり掴めなかったんですけど2/14にアルバムがリリースされるとのことでしたので、とても楽しみです。
13.Lisel「Mirage」
毎月のようにドリーム・ポップの新曲を耳にしますが、フロウティングな多幸感が逓減しつつ、バッド・トリップ感が出てきているか、それとも更なるユーフォリアを目指しサイケデリックに触れるか、そのどちらかになってきているような気がしなくもないです。
14.Patio「Reality State」
Stereogumの「Best New Bands Of 2019」に選ばれていました。ニューヨークのガールズ・トリオ・バンド。何曲か耳にした感じだと、ギターのコード進行やノイジーな感じ、あと曲に朗読のような非・メロディの歌詞が入る辺りがソニック・ユースっぽくて良いなと思いました。「Boy Scout」なんかは特にそれっぽい気がします。良いバンドですね〜!
15.Salt Cathedral「CAVIAR」
なんだか昔懐かしいレゲトンの香りをそこはかとなく感じ、筆者はTriniの「Turn Me On」をぼんやりと思い出しました。「Tus Ojos」なんかもスペイン語の歌詞ですし、現代的に再構築されてレイドバックしたレゲトンという印象を受けました。トロピカルとエキゾチックの間のゆるいメロディと、拍子が強調されたビートが気持ち良いですね。
16.Moses Sumney「Polly」
Moses Sumneyの音作りって独特というか、かなりボトムで複雑なトラックが鳴っていてハープなどの楽器を用いたり、エクスペリメンタル寄りなものもありつつ、このようにギター・ストリングスの美しいものもあり、不思議な方ですよね。
17.The Rentals「Breaking and Breaking and Breaking」
マット・シャープのバンド。ミックスをマーキュリー・レヴのデイヴ・フリッドマンが行なっているとのことで、新しいアルバムが楽しみです。
18.Scully「Habit」
ニューヨーク出身の4人組バンド。ザラッとしたギターの音はガレージロックっぽいですが、サウンドレイヤーの感じや楽曲にかき消されてしまいそうなヴォーカルの入り方がシューゲイザーっぽいなと筆者は感じました。
◎まとめ:12月を振り返って
12月末はホリデーが近くので必然的に各レーベルともにリリースが減るため、例によって師走後半はニューリリースのアナウンスががくっと減った分、筆者はウードの巨匠を中心にアラビア音楽などを聴いていました。
12月のリリース分をまとめてみると、やはり2019年は久しぶり(数年ぶり)のリリースや再結成、再復活など、なかなか昔馴染んでいたアーティストの新作を見られたり、あるいはドリーム・ポップの俄かな勃興なんかを見るにつけ、「真新しさ」よりも何か回帰的なムーヴメントがあるのかな、と感じつつ・・
また、SSWの方やバンド在籍メンバーのソロ・プロジェクトなど、宅録DIY系のアーティストもよく見かけたなーという印象です。これは、まあ、どの瀬にもいらっしゃると思うのですが。
存外にオーセンティックなバンド・サウンドをあまり耳にしていなくって、シンセ・ポップに食傷気味になりながら、The Voidzの新曲良かったなあ〜と思ったんですが、ラインナップに入れ忘れていました。
Galcher Lustwerk「Fathomless Irie」
Floog「Nancy」
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