見出し画像

褒めるよりも好きよりも、「嫌い」がデザインにとって大切である

デザイン事務所 広報担当の暴走』と称して『「自分の美的センスを他人に判断される」という体験は、高校の美術の授業が最後だった』『デザインは直感や主観と思われがちであるが、ある意味ではとても論理的』というnoteを書いてきました。
今回は、嫌いなデザインについて書いてみます。

自分が好きなデザイン、あるいはデザイナーやアーティストって思い浮かびますか?
私の場合は、なるべくシンプルなデザインが好きです。柳宗理や芹沢銈介だとか。
翻って、嫌いなデザインって思い浮かぶでしょうか?
・・・なかなか思い浮かべるのが難しい気がします。
前述のとおり、シンプルなデザインが好きなので、例えばフリルがたくさんついた洋服にトライすることはないのですが、だからと言ってフリルが嫌いなわけではありません。
ただ、嫌いとまではいかなくとも、無意識のうちに避けているデザインやテイストみたいなものはあるような気がします。

Balloon Inc.で依頼を受けてヒアリングをする際、最後にする質問があります。

「嫌いなデザインってありますか?」
「これだけは辞めてほしいっていうデザイン(やイメージ)はありますか?」

聞き方の違いこそありますが、好きの反対を聞いているという点は共通しています。
ヒアリングなので、まずクライアント側の依頼を詳しく聞きます。発注した経緯やデザインを必要としている理由、どのようなデザインをイメージしているか。これらの情報は、場合によってはこちらから聞かずともお話ししていただける情報です。
しかしながら、「イメージの対極にあるもの(避けたいデザイン)」というのは、こちらから質問しない限り、なかなか出てくるものはありません。

ここで巷でよく聞く事例を2つ。

ハンバーガーショップが客にアンケートをとったら、「野菜たっぷりのヘルシーバーガーが食べたい」という意見が多かった。早速、野菜たっぷりのハンバーガーを販売したところ全く売れず、お肉やチーズがたくさん入ったハイカロリーのハンバーガーの方が人気だった。

そしてもう1つの事例はこちら。

日本の携帯電話はユーザーが欲しい機能をどんどん増やしていってガラパゴス化してしまった。対して、スティーブジョブズはユーザーの意見を全く聞くことなく、iPhoneを生み出した。当然である。iPhoneという概念は消費者の中になかった。ジョブズが創造する他なかったのだ。

仕事としてデザインと関わる場合、どうにも難しいことに上の2つの事例の中庸をいかねばなりません。

理想と現実との乖離を埋めること、そして、想像を超えること。

この時の道しるべの1つが、嫌いなデザインを聞いておくことかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?