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【感想】下関国際野球部の奮闘記『貫道』を読んで【レビュー】

昨年夏の甲子園大会では、仙台育英が東北勢初の優勝を果たして幕を終えました。あの夏の主役は仙台育英となりましたが、山口出身の私にとっての主人公は間違いなく下関国際でした。相変わらず最強の大阪桐蔭に逆転勝利を納め、ドラフト候補のスター 近江の山田陽翔投手を攻略するなど、下関国際は多くの野球ファンに多大なインパクトを与えました。

2018年もそうでしたが、下関国際が甲子園を勝ち上がると毎回耳に入ってくるのが、坂原秀尚さかはらひでなお監督のエピソード。当時荒れていた野球部を立て直し、厳しい練習を経て甲子園への出場を果たす、そのストーリーは『リアルROOKIES』と言われていたりもしました。しかし、坂原監督が下関国際の門を叩いたのは2005年で、2017年に甲子園に初出場するまで12年の月日が流れています。多くのネットニュースではその12年の詳細は記されていませんでした。

そんな中、待ち望んでいた一冊が、2023年3月8日に東京ニュース通信社より出版されました。タイトルは貫道かんどう、サブタイトルは『甲子園優勝を目指す下関国際野球部・坂原秀尚監督とナインの奮闘』でした。昨夏以来、下関国際の情報に飢えていた私は発売前からこの本を予約し、3月9日に届きました。一度読み始めたら読む手が止まらず、その日のうちに読み終えました。

いい表紙です

本noteでは、この本の感想をネタバレしない程度に記述したいと思います。買おうかどうか悩んでいる方がいましたら、ぜひ参考にしてください。

感想1.甲子園に出場するまでの12年

ネットニュースでもよく書かれていたのが、坂原監督が就任前の下関国際野球部は荒れていたというエピソードでした。この一冊の前半部分では、坂原監督がどのような経緯で下関国際の門を叩き、どのように下関国際野球部を立て直していくかについて、詳細に書かれていました。

ネット記事で見ると坂原監督一人のストーリーに見えますが、その時々に部員達がいて、彼らの努力もあって今の下関国際がある、ということがこの本から読み取れます。元々ゆるく行われていた部活が突如現れた教員によって真剣になるわけですから、そんな状況で続けていくのは大変だったはずです。そんな状況下での部員達の心境や行動、そして部員達に坂原監督がどのように向き合ったかが、詳しく綴られていました。読んで熱くならないわけありません。

ちなみにこの辺りの章では、他校との練習試合のエピソードや山口大会予選など、テレビには映らない部分もよく描かれていたのも面白かったです。私自身が山口出身の人間なので、ここ10年の山口の高校野球情勢の変遷史としても楽しむことができました。オリックスにドラフト1位で指名された椋木蓮投手など、山口高校野球出身の選手名がちょくちょく出てくるのも、読む楽しさを増してくれました。


感想2.名試合の繊密な描写

下関国際といえば印象的なのは甲子園の逆転劇。下関国際が残してきた数多くの名試合について、監督や選手達の当時の心境と共に詳しく綴られています。野球は筋書きのないドラマとよく言いますが、下関国際の試合は本当にドラマ的な展開が多いと改めて知れました。この辺に関しては、高校野球ファンに限らず、野球ファンなら読んで間違いなく面白い部分だと思います。

下関国際のファンからすれば、鶴田克樹くんや濱松晴天くん、仲井慎くんや山下世虎くんなど、よく知っているスター達が次々と出てくるので、脳内で映像を回想しながら楽しむこともできます。

鶴田くん、社会人でも頑張れ!

もちろん、甲子園だけでなく、地方予選部分の描写も面白いです。坂原監督の戦略的な部分も語られていたり、実はあの時あの選手が怪我していた、みたいな今だから語れる秘話も多くあります。この辺は本当に映像化を望みます。


感想3.下関国際のこれから

本作の最後の方では、昨年の夏以降、国体についてや進路なども詳しく書かれています。この辺りは、正直かなり衝撃の内容でした。割りと順風満帆に進むストーリーではあるのですが、最後の最後に下関国際らしい事件が起きてます。ここら辺はネット記事では全く表に出て来ないところだったので、読み終えた後はしばらく眠れませんでした。著者の井上氏の取材力にはアッパレです。

また、これからの下関国際についても詳しく書かれていたので、来年度以降の下関国際を見る楽しみはより増えました。ドラフト好きな方にとっても、面白い情報がちょこちょこありましたので、ぜひ買って読んでほしいです。

古賀くんに対するスカウトのコメントも

まとめ

下関国際野球部の坂原監督の指導はスパルタな面もフィーチャーされがちなので、人によっては本当に好き嫌いが分かれるところだと思います。ただ、この道を貫き通す坂原監督に最上限のカッコよさを感じる人もいると思います。私もその一人です。下関国際が甲子園準決勝まで上り詰めたストーリーを記したこの本は、球界最高のノンフィクションと言っても過言じゃないと思います。もし面接で印象に残っている本を聞かれたら、この本の題目を応えます。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。




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